2014年2月、東京に記録的な大雪が降ったその頃、アメリカ・サンディエゴに世界各国の二輪ジャーナリストが集っていた。目的は新発表されたトライアンフのクルーザーモデル試乗会。1699ccのエンジンを積んだ、2機種「サンダーバード コマンダー」と「サンダーバード LT」は、まぎれもなくライバルメーカーを意識した大陸仕様で、島国英国ブランドの同社による、クルーザー大国への挑戦状だった。
試乗は1機種1日ずつ、実際にサンディエゴの周辺を200~250kmほどツーリングするというものだった。サンディエゴはアメリカの南西に位置した、メキシコとの国境にほど近い西海岸のビーチリゾート。筆者もそんな印象を持っていたのだが、実際に走ってみると、美しいロングビーチだけでなく、内陸に入るとほどなく荒野や砂漠といった「アメリカならでは」と思える大陸らしい光景が広がっていた。また、どこまでも続く直線とともに高低差の激しいワインディングもある道も風景にもバリエーションに富んだエリアだった。この凝縮感を日本の道でたとえると、まるで賑わう湘南の海岸線を走っていたら、いつのまにか信州の峠道に入り、抜けると北海道の直線が延びていた、というような感覚。日帰りツーリングのなかにあらゆる魅力がつめこまれているわけだ。筆者は以前、グランドキャニオンやモニュメントバレーなどでも有名なアリゾナ州を走ったこともあるが、短時間で風景と道のバリエーションを楽しむ、という点においてはこのサンディエゴ発でのプランにはかなわないだろうと思う。
サンディエゴは温暖な気候が特徴で2月でさえ、一日の最高気温が20度にとどくこともある。冬場のツーリングでも適度な軽装感を保てるので、わずらわしさもない。また人口はカリフォルニア州の中ではロサンゼルスに次いで2番目の都市だ。現地でレンタルバイクを借りるのも難しくないだろう。
今回はそんなサンディエゴの風景をサンダーバードコマンダーとLTの魅力とともにお伝えしよう。
西野鉄兵(にしのてっぺい)
1986年神奈川県生まれ。ツーリングマガジン「アウトライダー」の編集部員。2012年にはじめてアメリカツーリングを体験し、以後アメリカにぞっこん。一番好きな食べ物はビッグマック。
2014年3月12日掲載
サンダーバードコマンダーで走ったサンディエゴの初日は西海岸のビーチや、街並み、峠道などおよそ200kmを走行した。
2014年3月18日掲載
ツーリング性能の高いサンダーバードLTでは荒野や砂漠など、大陸らしい風景のなか250kmを走破。トライアンフのセレモニーもご紹介。