トライアンフ ロケットⅢロードスター
- 掲載日/2014年10月20日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文/佐川 健太郎 写真/山家健一 動画/倉田昌幸 衣装協力/HYOD
6年ぶりに再上陸した
トライアンフの旗艦
トライアンフが誇るクルーザーレンジのフラッグシップモデル『ロケットⅢロードスター』が6年ぶりに国内導入されることになった。ロケットⅢシリーズは2004年から日本でも販売されていたが、世界一厳しいとされる日本の環境基準に適合できず、2009年を最後に一時販売を中止していた経緯がある。今回、再上陸を果たしたのは、シリーズ最新作となる『ロケットⅢロードスター』。持ち前のビッグトルクを生かした強烈な加速に加え、ABSも新たに装備された最新モデルの実力を確かめてみたい。
トライアンフ ロケットⅢロードスター 特徴
ライディングポジション変更やABS装備で
よりスポーティかつ安全に
トライアンフ・クルーザーレンジの最高峰であるロケットⅢロードスターは、縦置き水冷3気筒2,294ccエンジンを搭載した世界最大排気量の量産車でもある。特徴はなんといっても規格外のサイズとパワーだろう。最高出力148PSもさることながら、最大トルク221Nmは四輪車並み。ちなみにデイトナ675に比べると、およそ3倍の値である。この巨大なトルクを生かした圧倒的な加速が持ち味になっている。トライアンフのデータによれば、374kgの巨体を0-100km/h=2.8秒で引っ張る。四輪の世界では4秒を切ればスーパーカーと呼ばれるが、ロケットⅢロードスターはなんと2秒台なのだ。また、最大トルクの90%を1,800rpmの低回転域で発生させるパワーバンドの広さは、余裕綽々のクルーズ性能にもつながっている。
今回、国内に導入される『ロケットⅢロードスター』はその名のとおり、ストリートファイター的なテイストを押し出したモデルとなっている。トライアンフのスポーツモデルの象徴であるツインヘッドランプやブラックアウトされたコンポーネンツに加え、ライディングポジションもステップを従来よりも手前に引いた位置にセットするなど、よりスポーティな走りを全面に打ち出しているのが特徴だ。
排気系の改良により日本の環境基準を満たしていることはもちろん、マフラーも左右2本出しのすっきりとしたデザインに変更。足まわりも前後にカヤバ製の倒立フォークとツインショックを装備。ブレーキもフロントにニッシン製ダブルディスク&4ポットキャリパー、リアはブレンボを採用。従来の設定にはなかったABSが今回から標準装備となるなど、安全性能の向上も図られている。
トライアンフ ロケットⅢロードスター 試乗インプレッション
カタパルトで打ち出される加速感
クルーズはもちろんコーナリングも楽しめる
よりタフにワイルドになって帰ってきたロケットⅢロードスター。その黒く引き締まったボディは、再び王座を狙うためにカムバックしたヘビー級ボクサーを連想させる。マット調の渋いカラーリングのせいもあると思うが、以前のクルーザー然としたスタイルから、よりアグレッシブな走りを予感させるマッスル・ファイターへと変身した。
エンジンを始動させると、多少重めのクランキングから巨体を身震いさせるように目覚める。アクセルを煽ること数回。縦置きクランク特有のトルクリアクションにより、車体がわずかに右に傾ぐ。この時点ですでに、ライダーは巨大なトルクの存在に気付くことになる。サウンドがまず変わった。従来のややこもった音質から、野獣が吼えるがごとく猛々しい排気音へとリミックスされている。
さて、自慢の加速力を試してみようではないか。安全な場所で1速からフル加速してみたが、これは相当ヤバい。スーパースポーツのように高回転で振り絞る上昇感ではなく、スロットルを開けた途端、次の場所に瞬間移動しているような感じ。意識を置き去りにして体だけが持っていかれるような感覚は、およそ日常では体験できないものだ。それもそのはず、その最大加速度はなんと地球の重力を超える1.2Gだとか。カタパルトで打ち出される戦闘機乗りの気分に近いかもしれない。
それでいて安心感もある。400kg近い重量とこれを受け止める超極太240サイズのリアタイヤが作り出す、どっしりとした接地感はバツグンのものがある。車体の骨格と足まわりもパフォーマンスに見合ったレベルでしっかりと作り込まれているため、加速中でもビシッと安定しているのだ。また、シートのホールド感もいいので、どっしりと腰を据えておけば、あとはスロットルに集中するだけでいい。
走りも俊敏になった。スペック的には従来とほとんど変わっていないはずだが、ライディングポジションの見直しが効いている。ステップ位置が以前と比べて10cmくらい手前にリセットされたため、ステップワークが使いやすくなっている。ただし、足を前に投げ出した従来型のクルーザースタイルが好きな人には、やや窮屈に感じるかも。体格にもよるので、ライディングポジションというのは難しいものだ。
今回新たな発見もあった。ロケットⅢロードスターの醍醐味は、実はコーナリングにあるかもしれない。車重もトルクも規格外なのだが、その巨体とは裏腹によく曲り、よく止まるのだ。エンジンを剛性メンバーとして利用したフレーム、そしてサスペンションも高荷重設定でがっちりしっかり作られていて、クルーザーらしからぬスポーティさでコーナーを駆け抜ける。バンク角も余裕があって、常識的な走りでステップを擦ることもない。そう、ロケットⅢロードスターはクルーザーではなく、『メガ・ファイター』なのだ。もちろん、巨大な運動エネルギーを宿しているので、無理な走りは控えなくてはならないが、積極的に走りを楽しむことができるマシンだ。加えて、ABSも装備されて安全性が高まり、万が一の場合への心の余裕が広がったことも大きい。
巨大トルクはクルーズ性能にも寄与する。2,000rpmちょっと回しておけば、5速トップギアで悠々と高速クルーズも楽しめてしまう。これぞメガ級排気量の真骨頂だ。野性味のある3気筒サウンドを楽しみつつ、優越感に浸りながら街中をゆったりと流すのもいいだろう。
万能バイクではないし、万人向けでもない。取り回しも辛い。それでも、ロケットⅢロードスターが持つ圧倒的な存在感と2,300ccがもたらす特別な走りの世界には、他のモデルでは決して味わうことができない魅力があることは断言しよう。
トライアンフ ロケットⅢロードスター の詳細写真
SPECIFICATIONS –TRIUMPH ROCKET Ⅲ ROADSTER
価格(消費税込み) = 248万4000円
※表示価格は2014年10月現在
量産市販車で世界最大排気量の2,300cc水冷3気筒エンジンを搭載するパフォーマンスクルーザー。四輪車並みのトルクを生かした圧倒的な加速力が魅力だ。
- ■エンジン型式 = 4ストローク水冷並列3気筒DOHC4バルブ
- ■総排気量 = 2,294cc
- ■ボア×ストローク = 101.6×94.3mm
- ■最高出力 = 148ps/5,750rpm
- ■最大トルク = 221Nm/2,750rpm
- ■トランスミッション = 5速
- ■サイズ = 全長2,500×全幅970×全高1,165mm
- ■車両重量 = 374kg
- ■シート高 = 750mm
- ■ホイールベース = 1,695mm
- ■タンク容量 = 23.5リットル
- ■Fタイヤサイズ = 150/80R17
- ■Rタイヤサイズ = 240/50R16
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