タイガー800XCx 長期インプレ vol.03【オフロード走行編】
- 掲載日/2015年04月08日
- 取材・文/西野 鉄兵(『アウトライダー』編集部)
フラットダートをまるで舗装路のように走る!
市街地、高速道路、ワインディングロードでの走行性能をチェックし、このマシンの完成度の高さに感動すら覚えた。そこで今回は、オフロード性能をチェックしてみよう。
まずはオンロードバイクでも走れるレベルのフラットダートを走ってみた。フラットとはいえ、新しいバイクでダートに入る瞬間はちょっとした覚悟や緊張がともなう。しかし、このマシンはそんなことをちっとも気にしないかのように、オンロードみたいに軽快に走った。しかも走行モードは、オンロードで推奨されている『ロード』設定のままだ。
前後のサスペンションが優秀すぎる!
砂利や小石のちょっとした段差をいともたやすく舗装路のように走る秘密は、フロント21インチ&リア17インチの大径ホイールと、サスペンション性能だと、すぐに気づいた。とくにサスペンションは秀逸で、路面のショックをライダーに与えずうまく吸収し、大きめの石の上に乗り上げても、飛びにくく、地面に吸着するかのように、しなやかに伸び縮みする感覚だった。
兄弟モデルでオンロード寄りの『タイガー800XRx』にはショーワ製のサスペンションが採用されているのに対し、この『タイガー800XCx』はオーストリアに本社を置くWP社製のものを装備。オフロードのレーシングマシンなどでも馴染み深い本格仕様なわけだ。タイガー800XRxではオフロードを走行していないので、はっきりとはわからないが、この違いはかなり大きそうだ。
フロントは、伸び側&縮み側の両調整式43mm倒立フォーク。ストローク量が220mmだ。
リアはオイルタンク別体型モノショック。フレーム下にオイルタンクが装備されている。プリロード油圧調整とリバウンド側ダンピング調整が可能。リアホイール移動量は215mm。
オンロードモデルでは走りたくないレベルの林道へ
よりオフロード性能を体感するため、さっきよりもちょいとハードな林道へ入った。上り坂、下り坂、そして狭いコーナーもあり、オンロードバイクでは走りたくないと思ってしまう程度の未舗装路だ。
ここでは走行モード設定を『オフロード』に変更。すると、サスペンション性能に加え、このマシンのもうひとつの武器『トラクションコントロール』が力を発揮した。
大きめの石を乗り越えるとき、メーターに付いているトラクションコントロールインジケーターが小刻みに点灯し始めた。ググッググッ、とより的確に力強く地面を噛み出し、スピードを落とすことなく、露出した岩や木の根っこを次から次へと越えていく。
それは「あれ、こんなにオフロードを速く走れたんだ、俺!」と思ってしまうほどで、林道走行の魅力を存分に体感できた。
ただ、少し残念なことに、今回走った林道は相手として少々不足だったようで、限界点がまるで見えてこなかった。長期インプレはまだまだ続くので、100kmほどの距離を続けて走れる林道へ出向き、しっかりとその性能を堪能してみたいと思う。
走行モード『オフロード』のトラクションコントロールは、砂地やぬかるみでも力を発揮した。一度、水溜りの深さもわからないところがあり、飛び込んだら予想していたよりも深く、脱出する際にぬかるみに乗り上げた感触があり、「まずい!」と思ったのだが、そこでも後輪は滑ることなく、ググッと泥を的確につかみ、何ごともなくパスできた。トラクションコントロールがなければ、リアタイヤが空転し、転倒していたかもしれない。
車体の大きさがやっぱりちょうどいい
排気量が1,000ccを超えるアドベンチャーモデルでは正直なところ「未舗装路には入りたくないな」と思ってしまう。ただ、このマシンは充分に余裕を持って入れるサイズだと実感した。僕は身長175cm、体重63kg。僕にとっては、どこでも心配なく操れるサイズの限界の“少し手前”という感覚だ。
スタンディング姿勢で走っていくときも身体のどこにも無理はなく、軽快に楽しめた。
オフロード走行時にうれしい装備
いくらサイズに安心感があるといっても、倒してしまうときは来るかもしれない。だからエンジンガードが標準装備されているのはうれしい。これは兄弟車のタイガー800XRxには搭載されていない。
同じくタイガー800XCxだけに標準搭載のアルミサンプガード。段差を乗り越えたときにエキパイに岩が直撃するのを防ぎ、このように泥が付いたときも洗車が楽で助かる。
タイガー800XCxには泥除けのフロントフェンダーも装備している。個人的にはデザインもこの“クチバシ”が付いているほうが好みだ。
ハンドガードはタイガー800XCx、タイガー800XRxともに標準装備。飛び石が手に直接当たらないのと、防寒性の面で、おおいに貢献している。
次回は、キャンプツーリングでタイガー800XCxを試してみよう。