Moto2直系のトライアンフ新型「ストリートトリプルRS」海外試乗インプレッション
- 掲載日/2019年11月06日
- 取材・文/鈴木 大五郎 写真/トライアンフ モーターサイクルズ 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
Moto2譲りのトリプルエンジンを搭載
速くて軽くて楽しい万能ネイキッド
MotoGP Moto2クラスにおいて、今年よりオフィシャルエンジンサプライヤーとなっているトライアンフ。それらが用いるエンジンと基本的に同じものを搭載していのがストリートトリプルである。675cc時代を経て、765ccの並列3気筒エンジンを搭載するマシンは現在、最もスタンダードなS、よりスポーティなR、そして最上級のRSと存在するが、今回はRSのみモデルチェンジが行われ、スペイン・カルタヘナ周辺で試乗会が開催された。
もともとトルクフルなトリプルエンジンではあるが、今回のモデルチェンジではより常用回転域でのトルクアップを図ったという。これにはMoto2のエンジン開発チームが関わったとのことで、そのフィーリングは全てがほどほどでちょうど良いもの。トルキーながら、それがギクシャクしてしまうような唐突さがなく、ふんわりと湧き上がるかのようなフィーリング。それでいて高回転域にはしっかりパンチがあり、レーシングマシン直系のパワフルさが味わえる。
マシンのデザインはフロント周り、リア周りともに各部刷新されているが、メインフレームやサスペンションは基本的に従来モデルを踏襲。これは2020年に限定で販売されるデイトナに関しても、675時代から車体周りは踏襲していることからもわかるように、もともとのバランスがとても良いことの証明であろう。
走り出したフィーリングは従来型と大きく変わるのものではないものの、軽くてコンパクトで何でも出来てしまいそうなフィット感がある。これは車体自体の軽さはもちろんのこと、エンジンのリニアでトルクフルなキャラクターがそう感じさせていると思われる。どこにも引っ掛かりがなく、低回転からモリモリと力強くきれいにつながっていく。
それを後押しするのが標準装備となっているクイックシフターだ。これはアップ方向だけでなく、ダウン側にも対応。現在は装着車が増えている機能であるが、一度使うとなかなか元には戻りにくくなってしまうという禁断のパーツである。
2速か3速かを迷うようなコーナーでは、ワイドなパワーバンドとフレキシブルさでどちらでも対応可能といった雰囲気。ワインディングであれば1速、あるいは2速上のギアであっても、失速してしまうようなことがないほどにトルクフルであるし、そのトルクがまた扱いやすい。
最高出力は従来型と変更なしとのことだが、低中回転域のトルクアップにより、スムーズさに磨きがかかった印象だ。サーキット走行では決してびっくりするような出力ではないものの、必要にして十分。パワーに怖れることなくワイドオープンしていける快感を得られる。そしてワインディングでは、もう十分すぎるほどのパワフルさがあり、ストレスを感じさせることがない。
このエンジンに組み合わされる車体もあたりの柔らかいフィードバックを与えてくれる。これは装着されるピレリ製ディアブロスーパーコルサSP V3の効果も大きいと思われるが、サスペンションの動きもしなやかで接地感が高く、安心して身体を預けていける。アップハンドルをこじるようにして、ちょっと乱暴な操作をしてしまったとしても、いやなウォブルや挙動は生じることがなく、自信を持ってマシンを操作していくことが可能だ。
また、電子制御の介入も自然なもので違和感がない。もともとトラクション性能が高く、しかもエンジンの出力特性がスムーズなため、乱暴な操作をしない限り予想外にマシンが滑るといったこともないのであるが、介入時の作動具合も非常にスムーズである。 ライディングモードはレイン、ロード、スポーツ、トラック、ライダー設定の5種類であるが、キャラクターの違いもハッキリしており、シチュエーションに応じたマシンを簡単に呼び出し、楽しむことが出来る。
ストリートファイター然としたスタイリングであるが、そのキャラクターはその名の通り、ストリート全般での万能的走りからサーキット走行まで、場所を選ばない懐の深さを持っていたのだ。
トライアンフ ストリートトリプルRS 詳細写真
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