DAYTONAレースダイアリー vol.10
- 掲載日/2015年07月17日
- 文/江本 陸(ライター)
サーフィン専門誌の取材で、数人のプロサーファーに普段の練習方法やボディメンテナンスについてインタビューをする機会があった。
プロサーファーである以上、常に勝ちを意識している彼等故、その練習方法も20分間の試合時間を想定した、合理的かつ課題をきっちりと見極めて取り組んでいる。我々サンデーレーサーにとってのレースはあくまでも趣味的な要素が高いが、それでもレースに出る以上は気持ちのどこかで”勝ち”を意識している。
その分練習への取り組み方も先のプロサーファーの練習に負けず劣らず、きっちりと課題を決めて、自分に課した目標をクリアする事に邁進している。
では、自分はどうだろうか? ハッキリ言って練習しないタイプ。目標タイムがあり、レースでは勝ちたいのは当然だが、せいぜいレース間際になって「ヤバイ、練習に行かなきゃ」と大慌てに慌てる始末。しかも毎回である。計画性ゼロ、学習能力もそんなもの。自分でも「よくこんな状態でやってられるな」と、思う次第だ。
6月20日に開催されたMFJ公認レース『筑波ツーリスト・トロフィ(筑波TT)』のNMクラス(600ccを対象としたノーマルミドルクラス)に参戦したのだが、アマチュアレースとは言えST600への登竜門的なレースだけあって、いつものサンデーレースとはムードもレーサー達のレースへの取り組み方にも一段と熱が篭っている様子だった。
そういうレースだけあって、今回ばかりは練習への思いもいつもとは違っていた。がしかし、その内容はけっして順調とは言えなかった。まず1回目の練習は、出がけにハプニングに見舞われ、一枠しか取れなかった練習も半分程度しか走れず、課題をクリアするにはほど遠い結果に。2回目はレインタイヤの準備も乏しく雨の筑波で固唾を呑むばかりだった。3回目の練習は前日の半徹状態の仕事がたたり、時計に目をやると「オーマイゴッド!」練習時間は遙か遠くへと走り去っていた。
レース当日には僕が格別の信頼を置いているNAPS幸浦店のチーフ兼レーシングメカニックの中村氏や、同じDAYTONA使いの土屋市と屈強な仲間達が助っ人に来てくれる手はずだが、これではいい結果を残せる筈も無い。こちらのメンタリティに構う事なく時は流れ、レース本番がやって来た。
奇しくもレース本番では、日頃お世話になっているSUNSTARの菊池氏と、雨の練習日に知り合ったばかりのチー厶F-BEARの飯沼氏と、僕を交え3台ものDAYTONAが揃った。もう、ここまできたら全力でぶつかるしかない! 勇んでグリッドにつく。
レーススタート1分前。レーサー達の心理を代弁するかの様に、高まるエンジン音が周囲に響き渡る。シグナルに一点集中。いざスタート。シールド越しに見定めた2台のDAYTONAは猛烈に攻めまくる、国産車の渦と共にグングンと視界から遠ざかっていく。ラップ数が増す分それに比例するかの様に先を行く軍団との差が「もう勘弁してよ」と言いたくなるほど開いていく。彼等との練習量、そしてレースにかける意気込みと自分自身の差が歴然となった。結果はノックアウトだった。
しかし、レースへの取り組み方という課題をいただき、この日は何ものにも増して“解らされた”レースデイとなった。最終戦となる10月17日の筑波TT、リベンジなるか…。
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