トライアンフのボンネビルT120を試乗インプレ!本物だけが持つ質感で乗る者を満足させる
- 掲載日/2021年12月23日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文・写真/小松 男
多くのライダーに愛されるトライアンフの名機、ボニーは姿を変えずに進化を続けてきた
最初のボンネビルT120が誕生したのは1959年のこと。当時のトライアンフは第一次黄金期と言えるほどレースで強く、それに合わせるように販売台数も右肩上がりだった。そもそもボンネビルという名称は毎年アメリカのソルトレイクで開催される最高速度記録会においてワールドレコードをたたき出したことに由来しており、最高峰のスポーツバイクとして生み出された。その後に力をつけて世界を席巻した日本メーカーの台頭により、ボンネビルT120はその名が一度途絶えたこともあったが、2000年代に入りボンネビルの名称が復活。現在もクラシックスポーツの代名詞として幅広い層に支持されている。そのボンネビルT120が今年モデルチェンジが行われた。今回は実際に現車に触れ、詳細をお伝えする。
ボンネビルT120 特徴
持ち前の”アジ”をしっかりと残し、厳しいユーロ5に対応する
2000年代に入ってから復活したボンネビルシリーズだったが、世の中は排出ガスをはじめとした環境問題対策のための厳しい規制が始まっていた。特に欧州からはじまり世界基準となったユーロ規制は厳しく、ボンネビルはそれに対応するために、2008年にはフューエルインジェクションに、2016年には水冷エンジンとなって、ここまで来た。そして今期はボンネビルを含むトライアンフのモダンクラシックラインがユーロ5に対応させる形でモデルチェンジが図られT120もその内の一台となっている。
このボンネビルシリーズのモデルチェンジが行われる際にいつも感心させられることなのだが、見た目をほとんど変更させずに、新しい基準に揃えてくるのには驚く。キャブレターに見えるデザインとされたインジェクションボディや、フレームで挟み込むようにレイアウトをすることで、ほぼ存在を感じさせないことに成功したラジエーターなど、旧き良き時代のボンネビルの持ち味がしっかりと活かされたスタイリングを楽しむことができるのだ。
今回のモデルチェンジではエンジン内部に手が加えられているほか、バイワイヤ式のスロットルに変更していたり、7キロも車重を低く抑えている。クルーズコントロールが標準装備となったのもポイントだろう。そんな新型ボンネビルT120を試乗してみたい。
ボンネビルT120 試乗インプレッション
軽い操作感でイマドキ化、根っこの部分は変わらずボニー
以前Clubmanというバイク雑誌の編集部に在籍していた頃に、トライアンフ番を担当していたことがあるのだが、その頃からボンネビル系は好んで借用し、良く乗り回していた。国産4気筒エンジンの天井を突き抜けるようなフィーリングは無いものの、低回転での鼓動感に味わいを得られるバーチカルツインエンジンは、とても心地良いものであり、クルージングでは癒しを生み出し、スポーツライディングでは程よいエキサイティング感を楽しめるものだ。
今回の新型ボンネビルT120は、見た目ではほぼ旧型との違いを見つけることができない。その中で私が気づいたのは左側のスイッチボックスにオートクルーズボタンが備わったことだ。それと合わせて、スイッチボックスそのものがクラシカルなデザインとされていることにも注目した。
エンジンを始動し発進する。まずクラッチの作動が指一本でも行えるほど軽い。さらにスロットルの作動やシフトの入りも軽いタッチなので、イージーライドを楽しめるものになっていることが乗ったとたんに伝わってきた。最高出力は80馬力でそれは6550回転のレッドゾーンギリギリでの数値なのだが、105Nmという太い最大トルクは3500回転で発生させる。つまり低回転域でとても力強く、3000回転程度でポンポンとシフトアップダウンをするような走らせ方が楽しいものとなっている。一方でシフトチェンジが面倒な時にはギアを固定しオートマ的に乗ることもできるのはこのバーチカルツインエンジンの懐の深さならではのものである。
市街地、ワインディング、高速道路と一通り走らせてきた。個人的な話で言えば、フロント19インチ、リア17インチというタイヤセットのハンドリングが好みなのだが、ボンネビルT120は前18インチ(幅100)、後17インチ(幅150)のセットだ。これは程よいスポーツ感を得られるうえに小回りも効くので、狭い路地でもどんどん進んでいける高い機動性を楽しめた。7キロもの軽量化による恩恵、シート高も790mmと抑えられているおかげで、ビギナーや女性ライダーにもお薦めできる。エントリーモデルとしてはボンネビルT100が用意されているが、T120の方が排気量が大きい分力強い。ただ一点、強いて挙げるとすれば、新型で変更されたフロントブレーキシステムの効きが思ったよりも低く感じられたことがあった。他の操作が非常に軽いということもあってか、ブレーキタッチは良いものの制動距離が長く感じられたのだ。
ユーロ5規制に対応することが難しく、ボンネビルのようなクラシックでオーソドックスなモデルが次々と廃盤となった。その中にあって高い質感で所有欲を満たし、毎日乗って楽しく、いつまでもそばに置いていたいと思えるモデルをしっかりと残してくれるトライアンフは、とても素晴らしいブランドだと思う。
ボンネビルT120 詳細写真
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