4-1 趣味や道楽を突き詰めると…
- 掲載日/2016年01月15日
- 写真・文/立花 啓毅(商品開発コンサルタント)
「英国」と聞いて何を思い浮かべるだろうか? 私の周りには趣味や道楽に嵌(はま)り込んだ輩(やから)多いが、その道楽を掘り下げていくと、なぜか英国製や英国発祥のものへとたどり着く。
明治生まれの父は一家言持っていて、背広と言うと英国製と決まっていた。英国製の生地と芯を使わないと背広でないと言うのだ。
ご存知のように「背広」の語源は、ロンドンの中心部に高級紳士服の仕立屋が並ぶ「サビルロウ」(Savile Row)という通りの名にあるらしい。
背広はもちろんのこと、靴も傘もいいモノを探すと、最後は英国製になってしまう。雨が多いお国柄、靴は雨に強く、当然傘もいろいろある。彼らは雨が降っていなくてもステッキ代わりに使うため、きりっとした細巻きが多い。なかでもフォックスは有名なブランドだ。エリザベス女王もお使いになっているお洒落なビニール傘もあり、これなら私でも買えそうだ。因みに名前はフルトン。
家具も落ち着きがあって品のいいものを探すと、英国のアンティークになってしまう。アンティーク家具と言えば聞こえはいいが、要は古道具だ。それがどうして、100年以上経っても、いまだ丈夫で長持ちする。そう言えば良い音を聴かせてくれるB&W(Bowers&Wilkins)も英国製だ。
考えてみると、クルマの左側通行もイギリスから学んだもので、世界には英国連邦と日本しかない。スポーツにしても、英国発祥が如何に多いかがわかる。サッカー、ラグビーにはじまり、ゴルフ、ポロ、クリケット、競馬、卓球、バドミントン、クレー射撃…と続き、じつは野球もイギリス生まれで、アメリカに渡って広まったという。
彼らは遊びを上手くルール化してスポーツにする。そのルールが面白いため、世界中に広まった。モータースポーツがまさにそうで、英国流のモータースポーツが世界に浸透している。その背景には英国モータースポーツ工業会というのがあり、会員にはウイリアムズ、マクラーレン、ジョーダンなどの名門F-1チームをはじめ、ロータス、ローラなどのシャシーメーカー、またプロドライブ、リカルドなどのシステムメーカーなど200社以上が名を連ねている。
さらに関連企業を含めると、その数は4,000社を超え、世界中からの受注で年間売上高は30億ポンド(1イギリスポンド175円換算でおよそ5,260億円)にものぼるという。
私もバイクのチューニングパーツをお願いすることが多いが、ほとんどの物が揃う。戦前の部品でもきちんとストックしているところが凄い。そういった背景も含め、クルマやバイクも突き詰めると、最後は英国車になる。
とは言え、例の英国病で自動車メーカーは衰退してしまったが、英国のクラシックカーに敵う、奥の深い車は無いだろう。
ただひとつ、例外がある。それは「食」である。美味いものを求めると、フレンチ、イタリアン、日本食となり、英国料理は全く評価されない。その味ときたら、イギリス人は味覚オンチかと思うほどだ。
その理由を考えてみると、食というのは食材の豊かなところで育まれる。そのため気候の良いイタリアや南フランスは、古代から食が豊かだった。日本は四季それぞれに良い食材が採れるため、それに応じた繊細な料理が生まれたものと思う。
ところが英国は昔から食材に恵まれず(せいぜいジャガイモくらいか…)、そのため食文化が栄えなかったものと思う。なにしろその昔、サンドイッチでも貴族と平民の違いは、レタスなどの青もの野菜が挟まっているかどうかだ。それほどに食材に恵まれていなかった。
そういった歴史からか、イギリス人の中には食を楽しむための味覚が抜け落ちているように思う。だから、料理そのものも好きではないようだ。スーパーに行けば色々な食材が揃ってはいるが、食に感心が無いため、客として呼ばれても冷たいローストビーフだけだったりする。なにしろ作家のサマセット・モームが「英国で良い食事をしたければ、朝食を3回とれば良い」と言うほどなんだから…。
そんな英国でも、最近はフレンチを勉強した若手料理人が次々に新しい店をオープンし、美味しい料理を提供している。ぜひ一度、最近の英国食を味わってみては如何だろうか。
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