4-3 街について考えてみよう
- 掲載日/2016年03月04日
- 写真・文/立花 啓毅(商品開発コンサルタント)
イギリスの景観は穏やかで本当に素晴らしいが、もっと美しい街がある。それはドイツのワイマールだ。私が最も感激した街で、その昔、バッハやゲーテが住まわれ、かのワイマール憲法を成立した地でもある。
ここは欧州文化の首都と言われるだけあって、その全てが素晴らしい。なにしろ街を歩くだけで長生きしそうな気持ちになる。広場では老人が日向ぼっこをし、その横で若者がストリートライブを奏でていた。
買い物も、役所も、劇場も、歩ける範囲に収まっている。行き交いする道は緑にあふれ、家並みを見るだけで楽しい。もし自分が住む街がこんな風だったら、どんなに暮らしが楽しいものかと思う。
欧州の多くの街は、度重なる戦争で何度も爆撃を受けてきた。その度に市民が立ち上がり、街を元の姿に戻す。それは破壊されても我々は負けないのだというプライドを誇示しているのだという。
そういった歴史を感じながら旅をすると、前章でも触れた「日本は先進7か国のひとつだが、住環境は発展途上国」という疑問が頭から離れない。
帰国すると、たまたま「街づくり」をテーマにした講演会があり、そこでこの疑問を投げかけてみた。すると演壇の先生は答えられず、少し間をおいてから「その答えは質問されたご自身がお持ちのようにお見受けしますが…」と言う。もちろん主催者である行政の方々も答えをお持ちでなかった。
「ではお答えしましょう。言いにくいのですが、それは民度の低さと行政の見識の低さではないでしょうか。まず行政の方々が、どのような街にしたいかというビジョンをお持ちでないですね。何十年も言われ続けている電柱や汚い看板ですら、構想を立てておられない。だから戦後70年を過ぎても、街は一向に綺麗にならない」と、わざわざ嫌われることを言ってしまった。
話は変わるが、イタリアに住む友人が「街は皆のためにあるのだから、素晴らしい景観と引き換えに厳しい条例を守るのは当たり前のことだ。それに不満を持つ人はいないし、日本の勝手極まりないパチンコ屋などは考えられない」と言っていた。
当たり前のことだが、行政がしっかりした構想を立てているのだ。どうも我が国の行政の方々は、ビジネスの世界では当たり前の「きちっと構想を立て物事を論理的に展開する」ことが苦手のようだ。
それは税金についても同様で、消費税論議が盛んに行なわれているが、大きな疑問がある。それは消費税論議の前に我々が払っている所得税などのトータルの税金に対して、福祉などでどれだけの恩恵があるかを天秤に掛けて評価すべきだと思う。
調べたところ、我々が払っている税金は、高福祉のデンマーク、スウェーデン、オランダに次ぐ4位であった(別資料では7位というデータもある)。ということは、日本は消費税が無くてもデンマーク、スウェーデン、オランダに次ぐ社会福祉が実現出来るということだ。
話が大きく逸れてしまったが、その昔の東京は世界に類を見ない大庭園都市だった。立派な庭園は江戸時代、参勤交代で大名が江戸に通った際に作られたもので、豪華で風流な庭を競い合った。その数は1,000を越えていたという。もしそれが残っていたら、世界から憧れられる東京になっていたと思う。ところが戦後、古いモノは諸悪の根源かのように取り壊され、ペラペラの新建材の家に変わってしまった。
調べてみると、英国では180年も前に住宅条例が制定されている。木造またはレンガ造りの3階建の集合住宅で、道路側の前庭とバックヤードが備わっていた。広い庭を取り入れるあたりは、いかにも園芸好きなイギリス人らしい。英国は昔から計画的に街作りが行なわれていたのだ。
要は何ごとも上に立つ人が目利きでないとダメだということだ。大名も欧州の貴族も目利きだったから文化が育まれた。日本は英国を参考にしてきたが、暮らし方や文化は参考にしなかったようだ。 そろそろバリューフォーマネーから、文化で判断する時代に変わる時だと思う。
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