現代に引き継がれるトライアンフの“クラシックレンジ”
- 掲載日/2014年10月15日
- 文/鈴木 克直(トライアンフ東京みなと)
トライアンフのラインナップには、クラシック、クルーザー、アドベンチャー、ロードスター、スーパースポーツ、ツーリングなどがありますが、初回は中でも根強い人気を誇り、トライアンフの大きな柱となっている“クラッシックレンジ”についてお話ししようと思います。
トライアンフの歴史の中でも、大きな意味のある『ボンネビル』の生産が一度終わり、再び姿を現したのは2001年のこと。デビューした当時は「新しいボンネビルか…」などと言われることもありましたが、そのボンネビルも既に14年も販売が続き、外観に大きな変化はないものの、年々細かな改良等を重ねながら、しっかりと熟成されてきています。
当初790ccだった排気量は、現在では865ccとなり、よりパワフルかつトルクフルになりました。このクラッシックシリーズの素晴らしい点は、出力などのスペックだけに頼ることの無いエンジンフィールと、バランスの良いシャシーの組み合わせだと思います。
エンジンに関して言うと、絶妙な鼓動感、パワー、トルクの盛り上がり方、これらからトライアンフモーターサイクルズ社で車両を設計する人々の2気筒エンジンへの情熱、知識、経験が良く伝わってきます。
特にクランクのバランスファクターやバランサーの大きさからから、長距離走行も疲労感無く走破でき、また、楽しさを感じる範囲に残された振動の量などは他社とは比較できないものだと思います。
クラッシックレンジの中でも、『スクランブラー』だけは、他のモデル(ボンネビル、T100、スラクストン)と同じレイアウトの2気筒ながら、270度クランクを採用しています。ちなみにレンジは異なりますが、クルーザーレンジではスピードマスター、アメリカ、サンダーバード(水冷エンジン)が、同様の270度クランクの2気筒エンジンです。
パンチのある360度クランク、鼓動感はあるけれど、とても滑らかな270度クランク。同じ2気筒エンジンで、360度と270度のクランク2種類を使っているなんて、他では無いでしょう。
英国では1930年代、「2気筒エンジンのクランクの理想は270度である」という研究結果が出ています。この頃の英国のバイク産業は世界のトップクラスでした。トライアンフ、ノートン、BSA、ビンセント、ベロセットなどのメーカーは耳にしたことがあるかもしれませんが、それ以外にも沢山のメーカーが台頭していました。
そして既にこの頃、英国では今までに聞いたことがあるであろうエンジンレイアウトのほとんどを完成させていたのです。例えば前後のフラットツイン、星形3気筒、フラットフォー、はたまたフラットフォーながらフラットツインを上下2段に積んだもの、直列横置き2、3、4気筒、縦置き2、3気筒などなど…。
そのような時代背景から考えると、現在のトライアンフモーラーサイクルズ社が、2気筒エンジンにわざわざ2種類のクランクを採用していることも納得できますね。
さて、初回はこの辺で…。次回はエンジンの造形や車両に込められた作り手の想いなどを探ってみたいと思います。
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