水貼りデカールで“ぐっと上がるカスタム感”
- 掲載日/2015年02月16日
- 文/鈴木 克直(トライアンフ東京みなと)
今までのペイント工程はいかがでしたか? 今回は、オートバイの顔とともにチャームポイントになっているタンクマークの貼り方についてお話ししましょう。タンクマークは、エンブレムタイプの場合にはそのまま両面テープもしくはビスで固定すれば良いのですが、ステッカータイプと水貼りデカール(転写マーク)の貼り付けでは技術を要します。これらは英国のデカール専門店などで扱っており、古くは戦前のものまで世界中のオートバイのマークが手に入ります。各コーションマーク、フレームに使うものやリアフェンダーに使うものなど、細かいものではありますが、カスタムには必要で、貼ることによってぐっとカスタム感が上がります。
水貼りデカールは、薄手の和紙のような台紙の上に、これまた薄い材質で水溶性の糊が裏側に付いています。これは、誰でも一度は作ったことがあるプラモデルのデカールとまったく同じもので、ものが大きいだけに、ほんの少し厚くできています。まずは皿や洗面器に水を張り、その中にデカールを入れます。台紙は、水を良く吸う紙でできていて、糊が水で溶けてデカールが動くようになるので、指で軽く触ってみてください。そしてOKならば、水を切って台紙を押さえながら、指でデカールを前後左右に動かして、裏側に糊をじゅうぶんに行き渡らせましょう。
貼りたい位置にデカールを台紙ごと持って行き、そっと置きます。次にデカールを指先で軽く押さえて、下の台紙だけを引き抜きます。そして、タオルで軽く全体を押さえながら、水分を横方向にしごいて出していきます。この状態ならば、まだ多少は移動可能です。位置もバッチリ決まったら、さらに水分を出していきます。今度は指先で直接、デカールをガソリンタンクの曲線に合わせて馴染ませていきます。反対側も同様に貼ってください。
水貼りデカールの乾燥時間は夏場で5?6時間、冬場なら次の日までそのままにしておきましょう。ただ、その間にときどきデカールの状態をチェックしてください。水分が抜けていく途中に気泡が入ったり、糊が弱いと浮きが発生したりします。この後のクリア処理のときに、気泡や浮きは失敗の原因となります。なお、デカールは“なまもの”と同じで、製造年月日が古いほど失敗する可能性が高くなります。糊が弱ったり、材質がもろくなったりするからです。英国のデカールは、新品であっても5?6年前のものを平気で送ってくることがあるので、注意が必要です。水に浸けて2?3分でデカールがバラバラになり、使いものになりません。デカール全体が黄ばんでいるものは要注意。
なかには、どうしても糊の弱いデカールがあります。その強化方法としては、木工用の接着剤(白くて少しだけ酢の匂いのするもの。昔から売っている接着剤で、コンビニにも置いてあります)を使います。これを指先に少し取り、水とともに薄めて伸ばし、台紙の部分で溶かして、デカール全体に行き渡るように、特にデカールの裏側の接着面に入るように台紙の上で動かしながら刷り込みます。
そして同じようにガソリンタンクに貼ります。このときに多少白く接着剤の色が残っても、乾燥すると透明になるので、安心してください。このデカール貼りは、プラモデル作りのベテランでしたら、お手のものでしょう。冬場はデカールが硬いため、水から引き上げたデカールを熱い蒸しタオルの上にしばらく載せておきます。デカール全体が熱で柔らかくなり、曲線に馴染みやすくなります。それでもまだ硬い場合は、プラモデル用の『マークソフター』という軟化剤を使用します。これは液体で、デカールを貼って台紙を引き抜いた後に、筆で直接塗ります。全体が柔らかくなり、良くカーブに馴染みます。ここまでの工程は、この後のクリア仕上げのときに影響しますので、完全に乾燥させましょう。今回は、ここまでです。
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