空冷エンジンのチューニングと水冷ボンネビル【最終回】
- 掲載日/2016年01月12日
- 文/鈴木 克直(トライアンフ東京みなと)
最後は、エンジン内部のパーツに関してです。本格的なチューニングパーツも、今では英国やアメリカで豊富に販売されています(どれを買ったらいいか、かなり迷ってしまうほど)。
まず『ハイリフトカムシャフト』で、これは2、3種類が世に出ています。中低速を強くするタイプ、完全にレース(サーキット)用のタイプ、ドラッグレース用のタイプなどです。これとともに使用するのが『強化バルブスプリング』と『トップカラー』のセット。ただし、むやみに強いスプリングを使えば良いというものではありません。カム山がすぐに減ってしまったり、やたらとノイズの大きなエンジン音になったりするので、注意が必要です。そして『ビッグバルブ』は1、2mmオーバーサイズのものを選びます。
その次が『ビッグボアピストンキット』です。これは、ボンネビルが発売されて2、3年後から出回り始めました。この中のピストンはアメリカのワイセコ製で、かなり良いものが入っています。本来、ボンネビルはニカジルメッキのスリーブが採用されていますが、それを加工屋さんで削り取り、キット付属のスチールスリーブを圧入します。これによって、排気量は904ccになります。初期型である790ccモデル、後期型の865ccモデルのどちらにも使用できますよ。その他としては『クラッチキット』などもありますね。
英国内には『ガスフローイング』といってエンジンの吸入&排気ポートに煙を入れ、その流れを見ながら最良の流れとなるようにポートを加工するチューニングメーカーがありますが、これはもっとも基本のチューニング手法でもあります。
キャブレターもケイヒンFCR、旧タイプのCRキャブ、また変わり種としてはアマルのコンセントリックMK2タイプ36mm&38mmがあり、レトロな感じにも仕上げられます。
いずれの場合も、チューニングはすべて相乗効果によってパワーアップするため、一部のみを交換しても良い結果は出ません。しかし「どれかひとつでも!」という場合は、キャブレター交換でしょう。特に、ケイヒンのFCRキャブレターはかなり効果的で、最初はビックリするくらいの加速を示します。ただ、しばらく乗っていると慣れてしまいます(人間は贅沢なもので困りますね)。くれぐれもトータルバランスが重要なので、ご注意を。
そういえば先日、2016年に日本上陸する新型ボンネビルシリーズの現車をじっくりと観察する機会がありました。気になっていた部分=エンジンの水冷化にともなって取り付けられたラジエターですが、横から見るとほとんど気にならないのです。特別に薄くできていて、前から見ると縦長。そして裏側には、とても薄い電動ファンもセットされていました。このあたりのデザイン処理は非常にセンスの良い仕事ですね。
今回は、カムがDOHCからSOHCになっているので、さらに整備性が良くなっているでしょう。エンジン全体の形にもまとまりがあり、これまでのモデルよりもスタイリッシュで、特に左側のプライマリーケースは、旧トライアンフのユニットモデルの形に近づきました。ボンネビルT120のフューエルインジェクションは、アマルのモノブロックキャブレターをモチーフにしてあり「よくやった!」という感じです。
ただレトロなだけではなく、その中にもデザインの良さが光ります。ストリートツインにおいては、以前のボンネビル(スタンダードモデル)よりスリムになった感があり、とてもスマートです。新型のボンネビルシリーズはすべてのセンスが良く、乞うご期待です。
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