VIRGIN TRIUMPH | DAYTONAレースダイアリー vol.01 江本陸さんのコラム

DAYTONAレースダイアリー vol.01

  • 掲載日/2014年10月31日
  • 文/江本 陸(ライター)

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1960年代、鎌倉山の実家の御近所に、福澤諭吉氏の曾孫にしてトップレーサーの福澤幸男氏が住まわれていた。そんな福澤氏の姿を見かける度に“レーサーになりたい”というぼんやりとしたイメージが僕の心に芽生え始めた。

そんなある日、偶然か必然か、テレビのスイッチを押すと全日本ロードレース選手権の生放送が流れていた。それまでカーレーサーを夢見ていた僕のモードは、その日を境にモーターサイクルレーサーへと完全に切り替わってしまった。免許年齢にも満たない14才の僕は、専門誌を買い漁り、付録だったバイクのポスターを自室の壁や天井に張りまくっていた。

なかでも一番のお気に入りは、TRIUMPHの空冷3気筒『TRIDENT』(トライデント)だった。ジーン・ロメロがファクトリー仕様のトライデントでデイトナ200を制した話しは、今日までしっかりと語り継がれている。そんな武勇伝を見聞きする度に、“モーターサイクルレーサーになりたい”という想いは、途切れる事なくより一層強いものとなって行った。

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それから30数年の時を経た2003年、子供の頃から持ち続けていた想いが現実となり、サンデーレースを中心とした新たなライフスタイルをスタートさせていた。それをきっかけに、某専門誌に長年楽しんできたサーフィンとモーターサイクルレースをテーマにした、ライフスタイル的なコラムを書き始めた。

そして2007年、新生トライアンフの優れモノとして、タイガーがセンセーショナルな話題を振り撒いていた。そんな噂を耳にするやいなや、雑誌の取材で試乗を体験した。すると、始めてモーターサイクルを操縦した、あの興奮と楽しさが爽やかに蘇ってきた。と同時に、水冷3気筒が醸し出す、独特なパフォーマンスに気付かされた。

当時、僕はイタリアの小生意気な代物でサンデーレースに興じていたが、常に“このテイストは自分に合っているのだろうか”という疑問を抱いていた。

そんなとき、タイガーの試乗で蘇ってきたあのときの興奮は、同時に、子供の頃に憧れを抱いたトライデントとデイトナのイメージが重なり、“ひょっとしたらこれかも知れない”と、トライアンフ デイトナ675が気になり始めた。

跨がった瞬間“これだっ”とピンときた。すぐさまイタリアの小生意気な代物を手放すと同時に、新車でデイトナ(2008年型)を手に入れ、プロダクションレーサーへと進化させる事に喜びを感じ、邁進していった。

水冷3気筒のデイトナは僕の予想を遙かに上回り、筑波のインフィールドでは2気筒的なフィーリングを醸し出し、ハイスピードサーキットの富士においては、独特なサウンドと共に4気筒的な味わいを体に伝え、全開でコースを駆け抜ける。僕はあの独特なフィーリングに完全にノックアウトされてしまった。

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デイトナが僕のレースライフのバディーとなって6年が過ぎようとしているが、くたびれた様子も無く“さぁー、次のレースはどうするんだい?”と無言のアピールを投げ掛けてくる。今年も残すところあと1戦。どんなレース展開となるのか、今から楽しみだ。

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