DAYTONAレースダイアリー vol.11
- 掲載日/2015年08月21日
- 文/江本 陸(ライター) 写真/中尾 省吾
できる限り走り続けたい…。子供の頃から夢だったレース。その夢が叶い早12年。
2015年6月28日。再び大好きな富士スピードウェイに立つことが出来た。
トランスポーターからバイクを降ろしてパドックに向かうと、4サイクルマシンの心地よい咆哮が響き渡り、オイルの焼けるほのかな甘い薫りが周囲に漂い始めている。
ピット内の誰もが真剣な眼差しでセッティングに集中している。しかし、そこは“大人のレースごっこ”を謳う『Max10group』だけあって、ほどよい緊張感に包まれながらも、エントラント同士が互いの健闘を讃え合ったり、ピクニックテーブルにお弁当を広げたりと和やかな空気がパドック全体を覆っていた。そんなアットホームなレースに参加する度にハッピーを感じるのは、自分だけだろうか?
そしてまた、長年エントリーし続けたクラシックレース『LOC』(Legend of classic)を共に戦ったかつてのチームメイトや、仲間達との再会もMCFAJのレースならではの楽しみのひとつだ。
残念ながら、以前は年間2戦行なわれていた富士でのレースも、諸事情により1戦のみとなってしまったが、通年で『PEARL IZUMI Racing Team』の一員として参戦している。
今回はサーフィンとバイクカルチャーを融合させたアパレルブランド『DEUS』のインフルエンサーとしての一面もあり、どうあっても上位に食い込みたいとテンションは上がる。
気合いも充実、準備万端で望んだレース。富士ならではの心配事と言えば天候の急変だ。あたかも梅雨の真只中ともなれば、天候への憂いは尚更のこと。レインタイヤを用意するかしないかと大いに悩む。
筑波でのウェットコンディションはまっぴらゴメンだが、1週間前の筑波TTでの悔しい思いがそうさせたのだろう。相性が良い富士では多少の心のゆとりからか、今回ばかりはなんとか上位に食い込みたいというレースへの欲望がむくむくと頭をもたげ、レインコンディションさえ望んでいた。
なぜなら、出場クラスの『FastMAX』とMAX Group最高峰の『SuperMAX』のエントリー車両は、最新型のBMW S1000RR、DUCATI パニガーレに996S。筑波でのインフィールドならまだしもミドルクラスのDAYTONAでは、ハイスピードサーキットの富士はどう考えても不利。
だからレインコンディション、しかもヘビーレインだったら尚更のチャンスかと…。しかし自分勝手な思いとは逆に、レースの女神が皆の期待に応えたのだろう、ヘルパーを買って出て下さったDAYTONA乗りの平野氏も羨むほど、当日の富士は嬉し悲しのどピーカン。気温も路面温度も極上のレースコンディションとなった。
5月に開催されたDEUSのイベントBIKE BUILD OFFを取り仕切られた小山田氏も応援に駆けつけてくれた。そういえば彼の会社名は「ハレトケ」だった。
DAYTONAもご機嫌、身も心もスタンバイOK。気も充実している。いよいよタイムアタック、予選がスタートした。タイヤも充分に暖まっている。それでも1、2周は気持ちを抑えて慎重にこなした。幸い走行中のマインドはカウリングの先にある“Go,Ricky Go”(Ricky=僕の愛称)と心の中で叫びながらレースへの集中力を高めた。
全長4,563mの富士スピードウェイ。1,475mに及ぶメインストレートも“I need more speed!”(もっともっとスピードを!)と気持ちよく快走。結果は目標タイムを切ることは出来なかったが総合5位、クラス3位とまずまずだった。
決勝グリッドは5番目で2番手選手の後ろ。わりと有利なポジションだった。隙間を見つけて少しでも前に付きたいと思いながらシグナルに集中。しかし、そう易々と行かないのがレースだ。
スタート時に1番手落ちだったFastMAXクラスの松岡選手のパニガーレに抜かれてしまった。順位を落としてしまったが出来るだけ各コーナーへの進入速度をハイペースにキープしつつ、なんとか追いつこうとシケイン手前のブレーキング、そして1コーナーへの飛び込みも自分なりに頑張り、努力もした。
しかし特急列車の横を最新型の新幹線が難なく抜いて行くのに等しく、ストレートではあっという間に車間が開く。これは排気量、馬力とも歴然の差があるバイクを相手にしているのだから、致し方ない事だ。
とは言え、やはり悔しくもある。結果はクラス4位、クラス6位と入賞には到らず。レースをやる以上絶対に勝ちを狙いたいが、それにも増して、できる限り長く走り続ける永遠のオイリーボーイでありたいと思う、今日この頃だ。
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