いよいよヒンクレーのトライアンフ本社へ
- 掲載日/2016年01月29日
- 写真・文/山田 健
スペインからイギリスへ。ポルトガルのロカ岬に行った後の目的地、それはトライアンフ イギリス本社だ。
10月中旬、地中海側のアンダルシア地方を走ろうと思ったが、時期的にこれ以上寒くなるのが嫌だった。もうすぐアフリカが見えるところまで走ってきたけど、その後イギリスに向かうとなると11月中旬になる。
少しだけ頭の中で、この後どうするか考えて北上することにした。3ヶ月ほど走って少々旅の疲れが出てきた頃で、イギリスに行く楽な方法を調べた。するとスペインのビルバオからフェリーが出ていた。次の行き先はビルバオに決定。ネットで空席があるのを確認して走った。
シントラという街からポルトガルで最も標高の高い街、グアルダを駆け抜け、途中2泊してビルバオに着いた。ビルバオから出ていたイギリス行きの船は、1週間に1本だけだった。次の便まであと4日ある。
ビルバオに着き、直ぐにフェリー乗り場に行ってみると、そこはただゲートがあるだけだった。普通は受付なり、建物があるはずなのに無い。ゲート近くにバイクを止め、ゲートの門番に聞いてみた。おじさんが1人。船の出る日にならないとゲートも開かないし、ネットで予約しないと乗れないらしい。おじさんはとても親切で、キャンプ場の予約までしてくれた。おじさんもバイク乗りで、翌日バスク地方をバイクで案内してくれた。
紹介してもらったキャンプ場のWi-Fiを使ってフェリーの予約状況をみると、フルで予約出来なかった。ツーリングの後おじさんに別れを告げ、陸路でフランスを北上してイギリスに行こうと思ったとき、キャンプ場へ戻ってみると、キャンセルが出たのか、なぜか予約できた。フェリーは早めに予約しないと、最悪目的地へ行けなくなる事もあるので注意が必要だ。
ビルバオからフェリーで約1日、イギリス南部の町ポーツマスに着いた。イギリス入国には時間がかかった。バイクで最初のほうに船から出たのだが、入国管理官がなかなかゲートを通してくれない。自分のゲートだけ大渋滞。結局最後の1人になってしまった。さすがイギリス、移民問題があるのだろう。「お金はあるのか」「どこに泊まるのか」「帰りのチケットは」と次々に質問してくる。
いままではシェンゲン圏を走っていたので、国境審査は無かった。イギリスはシェンゲン協定に加盟していないので、当然パスポートも必要だ。「日本から乗ってきた英国製トライアンフで、トライアンフ本社に行くんだ」と言っても話にならない。根気強く話し、なんとか入国出来た。諸事情があるだろうが、入国出来なかったバックパッカーもいるらしい。
イギリスに上陸してびっくりしたのが物価。たばこはマルボロで1箱9ポンド。今のレートでも1,500円以上だ。一時のレートでは1,800円を越えていた。ガソリンも食べ物も、日本よりかなり高い。
トライアンフ本社はイングランド中部?北部にある。いきなり行っても訪問出来ない。トライアンフジャパンの協力もあり、何とか数日後のアポイントをとることが出来た。トライアンフ本社へ行く前に、イギリスのパニアケースメーカーへ行くことにした。タイガーで旅に出ると決めたとき、わざわざイギリスから個人輸入したメーカーだ。トライアンフ本社訪問までの間、ほかにもブラブラと走ることにした。
本社が近くなった頃、ふと道路標識を見ると「Home of Triumph」と書いてある。小さい標識だったが大きく見えた。さすがホームタウン。企業と自治体が一体となっている気がした。その標識をまっすぐ進むと、遂にトライアンフ本社が見えた。『Triumph Hinckley』の看板がある。工場も併設されており、ゲートもある。アポイントした日の前泊入りで下見しておいた。
翌日、約束の時間に訪問。ゲートに入る前、脇にある駐車場に停めて、歩いてゲートの受付に行った。ゲートには先客がいた。どうやら営業マンのようで、アポイントが無かったため入れてはもらえなかった。
受付のガードマンに、名前とアポイントの件を告げると内線で確認し、入ることが出来た。バイクでゲートをくぐり、左へ曲がると本社入り口だった。ゲートの前には、わざわざ担当の方が出て来てくれた。まずは記念に写真を撮ってもらった。
中に案内してもらい、受付を済ませて工場を見せてもらう。内部はもちろんトップシークレットなので、撮影はN.G.だった。まずは倉庫。完成したバイクや部品などのストックが沢山置いてある。このバイクはどこの国へ送られるものだとか説明してくれた。
続いて工場の中へ。いろんなブースに分かれていて、各工程を説明してもらった。当時発売前でプレス発表もされていなかった、タイガー800XRx/XCxなど、新しいモデルも見せてもらった。発表までは口外しないことを約束して見学することが出来た。
見学を終え、この後さらに北上してスコットランドへ行くことを伝えると、「ちょっと待ってて」と言って、パーカーやTシャツなど持ってきて「これから寒くなるから」とプレゼントしてくれた。正直、荷物はパンパンだったが嬉しかった。今でも宝物だ。
自分のタイガーはもちろん、他のトライアンフ・モーターサイクルもこの工場で組み立てられている。ようやくバイクの里帰りが達成出来た。日本からトライアンフで走って本社まで来た人は初めてらしい。遂に念願だったトライアンフ本社へ行くことが出来た。出会ったすべての人に感謝している。出会いとは何か、そんなことを考えさせられる旅だった。
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