2023年モデルのトライアンフ ボンネビルボバーを試乗インプレッション!見た目は異端、走りはスパルタン
- 掲載日/2022年10月28日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン 取材・文・写真/小松 男
ストリートライクなボバースタイルで人の目を惹きつけるボンネビル
今から5年前の2017年にブランニューモデルとして登場したボンネビルボバー。巧みなフレームワークによって表現されたハードテイルスタイルによるシンプルながらも過激さを感じられるボディワークは、まるでカスタムビルダーの手によって仕立て上げられたかのような雰囲気を醸し出す。
2021年モデルでボンネビルボバーはビッグマイナーチェンジが図られた。まずはスタイリング及び乗り味を大きく変える要因となるタイヤサイズを前後16インチに変更、フロントフォークも強化するとともにリセッティングし、エンジンはユーロ5の排出ガス規制をクリアしている。燃料タンクに関してもほぼそのままのスタイリングを維持させつつ、従来モデルから約3リットル拡大させた容量12リットルとなっている。コンセプトはそのままに、大幅に改良された現行ボンネビルボバーに乗り、その感触を確かめてみることにする。
トライアンフ ボンネビルボバー 特徴
新しくも、懐かしくも感じさせる絶妙なデザインバランス
ストリートバイク系のカスタムとして定着した感のあるボバーと呼ばれるスタイル。その歴史を紐解いてみると、まだ舗装路も少なかった1930年代のレースマシンの仕様として、車両の軽量化を図るべく鉄製フェンダーを外したり短くカットするスタイルに端を欲している。
そもそも『ボブ』という言葉の語源は、16世紀ごろ馬の尾を短くカットすると言う意味で用いられていたとする説もあり、それから数百年経った現在でも、バイク(馬)のテイル(尾)をカットしたスタイルの呼び名としても使われているということに、由縁を感じざるを得ない。
そして、そんなボブスタイルを車名として使用したボンネビルボバーは、旧き時代を感じさせるファットな小径タイヤや、サドルシートで終わらせた大胆なテールセクションなど、まさしくボバースタイルを表現しているデザインと言えるものであり、120年もの歴史を持つトライアンフの伝統的なバーチカルツインエンジンとの相性も良好だ。それでいながらも、補器類にLEDライトを採用したり、ハードテイルスタイルに見えつつも、しっかりと仕事をするリアサスペンションを装備するなど、モダンな手法もしっかりと取り入れており、それらのバランス感が絶妙であることが、ボンネビルボバーの魅力ともなっている。
スタイリッシュなモデルであることは、誰の目に見ても歴然だが、果たして乗り味はどうなのだろうか。早速実車に触れてテストを行ってゆくことにしよう。
トライアンフ ボンネビルボバー 試乗インプレッション
ファッション感覚だけでなく、強烈な走りも楽しめる仕様
見た目からして異質な雰囲気が伝わってくるボンネビルボバー。低く構えた車体に跨ると、サドルタイプのシートにドカッと収まる格好に自然となる。ハンドルは傍からの見た目よりもやや遠くにある印象で、ステップはミッドにセットされており足の落ち着きが良い。シート、ハンドル、ステップの三点支持からなるライディングポジションは、クラシックモーターサイクルという感じである。
排気量1200ccのバーチカルツインエンジンに火を入れて走り出す。270度クランクのこのエンジンは程よく、逸れていてしっかりとした鼓動感を得られる上に、低回転から密度の高いトルクを発生するとても心地の良いフィーリングを持っている。スロットルを優しく扱えば、とろけるようなクルーズを楽しむことができる。4000回転程までの加速感は気持ちよく爽快そのもの。ラフなスロットル操作を行えば、振り落とされそうなほどの強烈なダッシュを体感できる。
なお7000回転程度でレブリミッターが作動するのだが、その時点でもパワーの衰えが感じられることはなく、リミッターが無ければもっと高い回転域まで使いたくなる力強さを持っている。そして何よりもサウンドが良い。吸気音、排気音、ともにしっかりと注力して設計をしてきたのであろう、ストリートでもハイウェイでも、ライダーを気持ちよく陶酔させてくれる音色が体の隅々まで響き渡るのだ。
乗り味はサスペンションストロークが短めだということもあり、やや固めな印象を受ける。それでいながらも、前後のサスペンションはしっかりと仕事をしてくれているので、路面追従性は高い。これらを踏まえ、ハードテイルスタイルがそのまま走りで表現されているという印象を受けた。
2021年モデルからフロントタイヤサイズが19インチから16インチへと変更されたことによるハンドリングの違いは歴然だ(以前ラインナップされていたボンネビルボバーブラックは16インチだった)。ワイドタイヤなこともあり、倒し込みにコツが必要だが、ステップ入力とハンドル操作の基本的な扱い方が分かれば、想像以上に”曲がる”バイクだということに気づかされるだろう。私自身、テスト走行を重ねてゆくにつれ、どんどん回転半径が小さくなってゆき、最終的には狭い路地でのUターンも容易になっていた。つまり、車体のバランスが良いのである。ただしタイヤサイズ的に轍に動きを取られやすい設定であることは違いないので、その点は頭の片隅に入れておくと良いだろう。
余談だがブレーキのタッチと効きは個人的にとても好きなセッティングで、カチカチとデジタルチックな入力と初期作動が多くなった最近のバイクの中において、ぎゅっと握りこみ、じわっと制動力を得られるブレーキフィーリングが気に入った。 テスト車両を返却する際に給油を行ったところ、燃費は15km/L程度だった。旧モデルから増大し容量12リットルとなった燃料タンクと相まって、ツーリングもストレスなく楽しむことができるだろう。
スタイリングこそ異端児的な感覚を得てしまいがちであるが、走りに関しては甘くはないが優しさも持っている。この手のモデルを扱う際の作法だけ身に着けていれば、実に正統派だと言える一台に仕上がっていた。
トライアンフ ボンネビルボバー 詳細写真
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