オールラウンドに使える本格派ブリティッシュカスタム、トライアンフ ボンネビル スピードマスター
- 掲載日/2018年04月17日
- 取材・文/佐川 健太郎 写真/山家健一 車両協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン 衣装協力/HYOD
優雅にアップグレードした
2人乗りカスタムクルーザー
2016年に登場した新型ボンネビルシリーズの水冷並列2気筒エンジンを往年のリジッドフレームを思わせるロー&ロングな車体に搭載し、独特のホットロッドスタイルに仕上げた「ボンネビル ボバー」。そのボバーをベースに前後16インチホイールとダブルディスクなどで足回りを強化したバリエーションモデルである「ボンネビル ボバー ブラック」を、さらにダブルシートやスウェプトバックスタイルのビーチバーなどを装備することで、2人乗りもできる優雅なカスタムモデルとして仕立てたのが「ボンネビル スピードマスター」である。トライアンフの伝統を今に伝える英国流ネオクラシックの魅力をあらためて味わってみたい。
トライアンフ ボンネビル スピードマスター 特徴
ボンネビル系の味わいを深めつつ
足まわりとライディングポジションを最適化
そもそもボバーとは第二次大戦後に流行したカスタムスタイルで、余分なパーツを削ぎ取りシンプルな車体とカラーで仕上げたミニマルな車両作りが特徴だった。これを現代的に解釈し、新型ボンネビルT120系のエンジンを独自のリジッド風フレームに搭載したのがボンネビル ボバーである。
そのボバーを前後16インチ化しダブルディスクブレーキで足まわりを強化、クルーズコントロールなどが与えられた上級版がボンネビル ボバー ブラックであり、さらに2人乗り用のリヤシートと前寄りのステップでリラックスしたライディングポジションとすることで、タンデムライドを含めた余裕のクルーズ性能が与えられた最新モデルがスピードマスターである。
エンジンには新型ボンネビルT120シリーズ系の水冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブ1200 ccを搭載。これにボバー専用のチューニングを施すことで10%のトルクアップを実現。また、従来型の空冷エンジンだった2015年式スピードマスターからは42%アップと大幅なパフォーマンス向上を遂げている。車体はボバー用に専用設計されたスチール鋼管製リジッド風フレームにリンク式モノショックを搭載。フロントフォークのインナーチューブ内径はボバーのφ41mmからφ47mmに拡大され、ブレンボ製フロントブレーキもシングルからダブルタイプに強化。
ボバー由来の2種類(ロード/レイン)のライディングモードに切り替え式トラクションコントロールとABS、トルクアシストクラッチに加え、あらたにクルーズコントロールやフルLEDヘッドライト、クロームメッキのツインエキゾーストなどの専用装備がプラスされているのも魅力だろう。まさにそのコンセプトを体現した本格的ブリティッシュカスタムアイコンとなっている。
トライアンフ ボンネビル スピードマスター 試乗インプレッション
見た目はクラシカルだが
実はなかなかのオールラウンダー
新型スピードマスターを目の前にして思ったのは質感の高さ。LEDヘッドライトやブレンボ製ダブルディスクに丁寧に作り込まれたダブルシート、そして往年のアマル製キャブレター風仕立てのFIや空冷式&別体式ミッションと見せかけた実は最新の水冷式バーチカルツインなど、どこから見てもディテールに隙がなく威風堂々としたスタイルングはまさに「本格派」と言える出来栄えである。
スピードマスターには従来型ボンネビルがベースの空冷865cc版から乗ったことがあるが、以前はいわゆるアメリカン的スタイルだったが、新型はボバーの流れを汲む新たなスタイリングコンセプトで貫かれており、いよいよトライアンフもこのカテゴリーとしての独自の立ち位置を確立してきたと思う。もちろん、動力性能や装備の充実度は従来型とは比較にならないレベルで進化している。
跨った感じだが、ライディングポジションはベースになったボバーブラックに比べてハンドルが手前に引かれて上体が起きると同時に、ステップ位置が少し前に移動してヒザを伸ばした楽なフォームになっている。シートもやや厚みが増してホールド感も高まり、どっかりと落ち着けるようになった。
リヤシートはコンパクトだがループ状のグラブバーも装備されるなど、タンデムツーリングにも対応した仕様となったのが嬉しい。ボバーやボバーブラックはドラッグバーにシングルシートというスパルタンな設定で、それはそれでカッコいいのだが、スピードマスターは実用面とツーリングでの快適性という部分でも一歩踏み込んだモデルと言える。
270度クランクを採用したボンネビルT120系並列2気筒は元々のハイトルクな特性に加え専用チューニングが施されたことで、よりドラマチックな鼓動感と加速フィールが与えられている。270度というのは燃焼間隔のことで、簡単に言うと2本のシリンダー内でタイミングがずれて爆発が起きるため、ライダーはそれを心地よい鼓動感としてとらえることができる。音でいうと「ドドン、ドドン」という感じで、排気量も1200ccもあるためそれは力強い。
高速道路の追い越しなどは本気でアクセルを開けると、上体がのけ反りそうになるが、ホールド感のいいシートのおかげで安心。ハードテイルに見えるリンク式モノショックも見た目以上にストローク感があり路面の凹凸をよく吸収してくれるし、しっかりとした剛性感のある車体とともに高速走行での安定感も抜群だ。
車体は相当長く見えるが、実はホイールベースは1510mmとビッグネイキッド並みでキャスター角も25度程度と意外にも立っている。さらに車重も同クラスの大排気量モデルに比べて軽いため、身のこなしも軽快だ。フロントタイヤが16インチで130サイズの小径ワイドタイプということで、ハンドリングはややフロントに粘りがあり、低重心ボディと相まって倒し込むとゴロっと転がる感じがするが、それが気持ちいい。路面が近いので怖くないし、ある程度寝かせていくとステップが路面に当たるため、それがバンク角の目安になる。
大トルク故にウェット路面やマンホール上などでラフにスロットルを開けると後輪がスリップすることもあるがトラクションコントロールが即座に介入してくれるなど、パワーモードのウェットモードやABSも含めて安心感が持てる。クルーズコントロールも含めてこれはツーリングでもリスクや疲労低減のための大きな武器になると思う。ダブルタイプを採用したブレンボ製ディスクブレーキも扱いやすく強力で、スポーティな走りにもきっちり対応できる性能とコントロール性を持っているなど、外観だけでなく走りの面においてもクオリティは高められている。
快適で現代的な走りが楽しめるスピードマスターは、クラシカルな見た目に反して実はなかなかのオールラウンダーでもあるのだ。
トライアンフ ボンネビル スピードマスター の詳細写真
SPECIFICATIONS – TRIUMPH BONNEVILLE SPEEDMASTER
価格(消費税込み) = 170万5,000円
※表示価格は2018年4月現在
並列2気筒エンジンを搭載する本格派ブリティッシュカスタム。ボンネビル ボバーをベースに前後16インチ化されるなどカスタムテイストも深められている。
- ■エンジン型式 =4ストローク 水冷並列2気筒SOHC4バルブ
- ■総排気量 =1,200cc
- ■ボア×ストローク =97.6×80mm
- ■最高出力 =57kW (77ps) / 6,100 rpm
- ■最大トルク =106Nm / 4.000 rpm
- ■トランスミッション =6速リターン
- ■サイズ =全長-mm× 全幅770 ×全高1,040mm
- ■車両重量 =245.5kg
- ■シート高 =705mm
- ■ホイールベース =1,510mm
- ■タンク容量 =12リットル
- ■Fタイヤサイズ =130/90-16
- ■Rタイヤサイズ =150/80-16
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