トライアンフ ロケット3GTの2023年モデルを試乗インプレ!これしかない。他は考えられない。
- 掲載日/2023年05月29日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文・写真/小松 男
超異端児でありながらも、受け入れられてしまう存在
環境問題への観点からクルマの世界ではエンジン排気量のダウンサイジング化が進み久しくなる。バイク業界的に見ても、モデルトレンドのマスとなっているのは125~400cc程のコンパクトモデルではあるものの、大型モデルを見てみると、昨今ではむしろ排気量の拡大化が進んでいるようにも思える。ただそれは環境問題のことを考えていないわけではなく、低回転のトルクを太らせることで高い回転域まで使わずに楽しめる=排出ガスを削減できるという取り組みにもつながっている。
このような書き出しをするのは、今回紹介するトライアンフ・ロケット3GTが、市販量産モーターサイクルにおいて最大排気量となる2500ccのエンジンを採用しているモデルからである。さらに注目して欲しいのは、大排気量化が進むモデルの多くがツインエンジンであるなかで、トライアンフのお家芸でもある3気筒を用い、しかもクランクシャフトを縦方向にレイアウトしセットしているという点であり、それらを聞くだけでも怪物マシンだということが伝わると思う。それでは世界最大であり唯一無二の存在であるトライアンフ・ロケット3GTの詳細及びインプレションをお伝えしてゆこう。
ロケット 3 GT 特徴
手にした者だけが味わえるロケット3の怪物的感触
トライアンフが最初にロケット3(初代は”ロケットIII”だがこの項ではロケット3に統一)を発表したのは、2003年のEICMA(ミラノショー)でのことだった。90年代にトライアンフの新たな代表となり、ヒンクレー工場を稼働させたジョン・ブロアーが提唱した『モジュラー・コンセプト』によって生み出されたモデル陣が次々とヒットを収め、その成果が昇華した頃のことであった。ロケット3は、初代モデルから2300cc直列3気筒という他に類を見ない大排気量エンジンが採用され、世の中を震撼させたのだった。
その後いくつかの派生グレードを生み出した後、一度はラインナップから外れてしまう時期があったが、2020年に大幅に改良がなされた2代目ロケット3が登場したのである。当初日本国内へはロケット3Rのみが輸入販売されていたが、現在は今回テスト車両に取り上げたロケット3GTも導入されている。
新型ではエンジンの排気量を2458ccまで引き上げつつ、単体で約18キロもの軽量化を実現。新設計アルミフレームの採用や、足まわりの刷新により、トータルで40キロ近くも車重を削ってきた。それは走りに如実に現れるものであり、旧ロケット3がトルクにモノを言わせた直線番長的なキャラクターだったのに対し、コーナーリングなども楽しめるモンスターパワークルーザーに仕立てられたのである。
これまで旧ロケット3、現行ロケット3Rとテストしたことがあったが、ロケット3GTには初めて触れる。個人的にも大好物である怪物、そのGT(グランツーリズモ)モデルはどのような仕上がりとなっているのだろうか。
ロケット 3 GT 試乗インプレッション
非の打ち所がない次元を超えたパフォーマンス
ロケット3GTを目の前にすると多くのライダーがその大きさに一瞬躊躇することだろう。ただ、実際に跨り、車体を引き起こしてみると、昨今のアラウンド2リッター大排気量モデルの中では軽く感じられ、付き合いやすそうだと気づくはずだ。
エンジンを始動してスロットルを軽くブリッピングすると、クランクシャフトを縦置きにセットしたエンジン特有のトルクリアクションを味わえる。ステップに足を乗せようとしたところ、ステップがかなりフォワードコントロールポジションとされていることが分かった。それに対してハンドルはライダーに近い位置でセットされていることから、クルーザー特有のかなりリラックスしたライディングポジションとなる。
これはロケット3Rとの大きな違いであり、例えばステップを見ると、Rだとトリプルエンジンの一番後方のシリンダー位置にあるのに対して、GTでは一番前のシリンダーの場所となっており、ハンドルのグリップ位置ではRは給油口の前、GTではおおよそ後ろ側にある。だからコントロール性の印象は大きく異なる。
ロケット3Rに乗った時には、もはやロードスターの頂点を極めるほどのポテンシャルと運動性能だと感じたが、ロケット3GTでは怪物的な運動性能を持たせたクルーザー的なイメージとなっている。もちろんシャシーやエンジンは共通なので、上手く扱えば同じように走らせることができるのだが、例えばワインディングで少々ペースアップをして走らせるような場面においては、Rの方がやや扱いやすく、それに対して高速道路を流すような場面ではGTの方が安楽かつエキサイティングな加速を楽しめるというように、キャラクターが分けられているのである。
やはりロケット3GTの最大のポイントはエンジンだ。4つのライディングモードが用意されており、もっともホットなスポーツモードでは恐怖を感じるほどの強烈な加速を味わえるので、4000回転すら回せないライダーも多いことだろう。それでいながらも、強大なパワーをしっかりと受け止めるシャシーと足まわりには心底感心させられるものだ。トラクションコントロールやコーナリングABSなども装備しており、怒涛のパワーでありながら破綻しにくくされているのである。
テスト車両を借用している1週間、毎日ロケット3GTを走らせた。高速道路、市街地、ワインディングなどもちろんインプレションをとるための走行ではあるのだが、その他の仕事に行く際や、子どもの送迎にまでも使ってみた。大柄な車格ではあるが見た目以上に軽く扱いやすいために、日常的に使えてしまうのである。ロケット3GTのオーナーの多くは週末の相棒的な使い方をしているだろうと思うが、毎日使うこともでき、しかも飽きないというのはバイクとして大きな魅力である。
そして見た目だけでなく排気音も独特であり、どこを走らせても皆が振り向くのも気持ちが良かったことも付け加えておく。 ロケット3GTに手を出すライダーというのは、もしかするともしこのバイクがトライアンフではなくとも良いのではないかと思う。それほどまでに怪物的であり際立った個性を持っているのである。もちろん一筋縄では付き合うことのできないモデルではあるので、万人に受けるとは絶対に言えないのだが、私は今一番欲しいモデルを聞かれたらロケット3だと答える。それほど異次元的な魅力が詰まっているので、是非一度体感してみて欲しい。
ロケット 3 GT 詳細写真
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