すべてが規格外のトライアンフ ロケット3 R!量産バイク世界最大排気量2,500ccメガファイターの魅力とは!?
- 掲載日/2020年02月06日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文/佐川 健太郎 写真/山家 健一 衣装協力/KUSHITANI
トライアンフ ロケット 3 R 特徴
クルーザーからロードスターへと華麗なる転身
2,294ccの直列3気筒エンジンを搭載する初代ROCKET IIIが登場したのが2004年。その当時で既に量産市販車として世界最大級のメガクルーザーとして君臨。その後マイナーチェンジを重ねてきたが、2019年に完全新設計の新型モデルがプレミアム限定仕様のTFC(トライアンフ・ファクトリー・カスタム)として登場。そして昨年のEICMA2019において満を持してデビューしたのが量産型の「ROCKET 3 R」である。ネーミングを見ても従来型のROCKET IIIに対して「3 R」に刷新されているとおり、よりモダンかつスポーティに進化した現代のマシンに生まれ変わったのだ。
まず見た目が大幅に洗練された。従来の筋骨隆々とした重量級クルーザーのイメージから一転してよりスリムで軽快感のあるシルエットに。ライディングポジションも低く構えたワイドバーにやや前傾フォームで跨る欧州スタイルのロードスターへと華麗なるイメージチェンジを図っている。ディテールも新型スピード&ストリートトリプル譲りのフルLED灯火類やフルカラーTFTディスプレイを導入しつつ、燃料キャップ類などは伝統的デザインで統一するなどネオクラシカルな雰囲気を巧みに演出、より上質でアーティスティックな印象へと仕上げている。
40kg軽量化され“曲がる”ディメンションへと進化
エンジンは水冷直列3気筒の基本レイアウトはそのまま排気量を2,458ccまで拡大。シャーシも完全新設計となり車重もトータルで40kg軽量化されている。それと同時に足まわりも一新され、前後サスペンションにSHOWA製アジャスタブルタイプを奢るとともに前後ブレーキにもブレンボ製の最高峰4ポットラジアルモノブロックを採用。また、ライド・バイ・ワイヤによる4段階のライディングモードやコーナリングABS&トラクションコントロール、ヒルトコントロールなど最新の電子制御が投入されていることも見逃せない。
さらに注目したいのが車体ディメンションの進化だろう。ディメンション(ジオメトリーとも言う)とは寸法のことで、その値を見ればマシンが目指す方向性が見えてくる。ちなみに新型ROCKET 3 Rは従来型に比べてキャスターで約4度(32度→27.9度)、トレール量で約17mm(152mm→134.9 mm)、ホイールベースで18mm(1695mm→1677mm)も値が小さくなった。さらに驚くのは軽量化。前述したように車重はトータルで40kg(エンジン単体で18kg)も軽くなり、乾燥重量で291kgまで絞り込むなど大幅に軽量・コンパクト化が進んだ。これらの数値が意味するのは、ハンドリングの大幅な進化だ。つまり、より俊敏に軽快に曲がりやすくなったということ。従来のクルーザー路線から脱皮し、完全なスポーツモデルへと方向性を改めたことが分かる。
トライアンフ ロケット 3 R 試乗インプレッション
意外なほどスリムで思ったより軽い
目の前にある新型ROCKET 3 Rは世界最大排気量の称号から想像していたよりもずっとスリムで小さく感じる。縦置き3気筒エンジンは1本800ccほどの巨体なシリンダーであるが、車体の前後方向に並んでいるため意外にもほっそりしているのだ。前や後から見るとフューエルタンクの幅の中にエンジンブロックはもちろん、左右に分かれたマフラーまで収まってしまうほど。ロー&ロングではあるが凝縮感があり、立体パズルのように各パーツがぎっしりと緻密に組み込まれている。特にエンジンまわりの造形などは芸術的でさえある。カウルなどで包み隠さず敢えて見せることを意識したデザインからは、トライアンフの新型ROCKET 3 Rに対する自信が伝わってくるようだ。
跨ってみるとスリムな車体と低いシート高(773mm)のおかげで足着きも難なく、低重心と相まって実際の車重より軽く感じる。1,300ccクラスのビッグネイキッドとあまり変わらない感じだ。一方、ハンドル位置はやや遠く上体は軽く前傾気味に、ステップ位置もミッドコントロールとするなど、従来モデルに比べるとライディングポジションからしてかなりスポーティになっている。
規格外のトルクが生み出す爆発的加速
動力性能もアップした。新型は排気量を2,458ccに拡大し最高出力を11%増しの167ps/6000rpmまで向上。もっともパワーではこれを上回るバイクも少なくないが、注目すべきは最大トルクの221Nm /4,000rpm。この数値は一般的なリッタースポーツバイクの実に2倍以上もある。トルクとは路面を蹴飛ばす力そのものなので、この値がどれほどの加速力を生み出すかは想像に難くないはずだ。
予想どおり走りは爆発的。スロットルを開けた瞬間、エンジンの回転上昇を待つ間もなく背中をど突かれたように2.5リッターの巨体がぶっ飛んでいく。巨大なトルクの塊で一気に押し出される感覚はおそらくバイクでは経験したことがない世界で、フル加速では1速ではもちろん、2速、3速でもトラクションコントロールのインジケーターは光りっぱなしだ。ちなみにROCKET 3 Rのスペックは0-100km/h加速2.89秒と公表されているが、これは4輪に例えると数千万円級のスーパーカー並みということになる。
そう聞くと、とても手に負えない怪物のようだが、丁寧に操作すればとても従順で、なみなみと溢れる分厚いトルクのおかげで発進でも半クラがいらないほどだし、急坂でもアイドリングだけでスルスルと登っていく。ライド・バイ・ワイヤによる緻密な電子制御のおかけで乗り味はむしろ穏やかになっていて、モード切替によって好みの出力特性に変えられるのも嬉しい。ちなみに普通に街を流すときは「レインモード」で十分だ。
普通の人が普通に楽しめる巨大マシン
ハンドリングもより軽快になり、普通のバイクとなんら変わらない感覚でコーナリングを楽しむことができる。おそらくディメンションの大幅な見直しが効いていると思うが、従来型は低速でのハンドルの切れ込みや重さが気になっていたが、新型では速度を問わず極めてニュートラル。シャフトドライブ特有の加速時のテールリフトも抑えられている。故にライン取りも安定していてUターンや低速バランスも楽。フロント150、リヤ240という極太サイズのタイヤもこの超ド級マシンに見合った程よい安定感をもたらしてくれる。
加えて前後SHOWA製のサスペンションが実に良い動きをしてくれて、加減速による車体の姿勢変化もより自然なフィーリングになった。剛性を増した極太の倒立フォークが強力無比なブレンボ製ラジアルモノブロック&トリプルディスクの減速力をガッチリと受け止めてくれるし、同じくリヤのリンク式モノショックはしなやかなストローク感で路面を舐めるように追従してくれる。軽量化されたとはいえこれだけのヘビー級マシンなので、足まわりの充実度は大事な要素。スポーティに走ろうと思うほどそれが効いてくるのだ。ともあれ、普通の人が普通に乗れる巨大マシンへと敷居は下げられた。
なお、新型ROCKET 3 Rにはブルートゥース接続によるコネクティビティ機能が搭載されたことも特筆すべき。個人的に特に気に入ったのはナビ機能で、TFTディスプレイに矢印と距離が表示されるだけの簡単なものだが、このシンプルさがかえって分かりやすく実用的だった。
世界最大排気量と聞いて最初は構えていたが、ROCKET 3 Rは意外にも素直で街乗りからツーリングまでいたって普通に楽しめるバイクというのが総じての印象。その上で街行く人々から注がれる熱い視線と浴びながら、2,500ccのバイクを悠々と乗り回す優越感は最高!その気持ち良さはまさに格別である。
トライアンフ ロケット 3 R の詳細写真
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