トライアンフの魅力をしっかり凝縮した中免で乗れるスクランブラー400Xを試乗インプレ!
- 掲載日/2024年03月04日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文・写真/小松 男
普通自動二輪免許クラスで一気にトップに立つ可能性アリ
ベルギーのミネルバ製エンジンを搭載した記念すべきトライアンフ第一号車が登場したのは1902年のこと。それから110年以上もの時の流れの中には紆余曲折あったものの今現在のトライアンフはどうだ、多くのモーターサイクルブランドの中でも一際輝いて見える存在となっているではないか。
経験とそれによって培ってきた知識、さらに開けた未来をイメージする情熱が多くの人々の心を掴み、英国の伝統というルーツを持つモダンクラシックシリーズから、Moto2という最高峰ステージで活躍するエンジンサプライヤーまで幅広く受け入れられているのである。
そのトライアンフが新たに世に送り出してきたのが、日本国内のレギュレーションにおいて普通自動二輪免許で乗ることができる400ccクラスのモデル、「スピード400」と「スクランブラー400X」だ。どちらもモダンクラシックシリーズの末弟として追加されたわけだが、さすがトライアンフと見る者をうならせる高い質感を持っていることは大きな特徴だ。今回はクロスオーバーモデルにあたるスクランブラー400Xをフューチャーし、その本質を深堀りしてみようと思う。
トライアンフ スクランブラー400X 特徴
実は現状不在となっていたネオクラクロスオーバー400
トライアンフが以前から400ccマーケットへの参入を画策している話は耳にしていたが、それは思っていた以上に早く現実となって目の前に現れた。と言うのが私の印象だ。ちなみにトライアンフの長い歴史を紐解いてみると400cc以下の排気量エンジンを採用したモデルもあったにはあったが、それらは1940~50年代のモデルのことなので(余談だがスクーターも製造していたこともあった)、この度登場したスピード400とスクランブラー400Xに「トライアンフ初の普通自動二輪免許」と書いてしまっても語弊は無いと思う。
1990年代にジョン・ブルーアによりヒンクレー工場へと拠点を移してから、モジュールコンセプトを掲げ誕生したトリプルエンジン(初期は4気筒もあった)系と伝統的なバーチカルツインエンジンモデルの二本柱を中心にバリエーションを広めてきた。トライデント660のエンジンは新設計ではあったものの長く培ってきたトリプルエンジンテクノロジーを踏襲しているものであるし、ロケット3は異端といえる存在なので除くとすると、今回2車種に採用されている400ccシングルエンジンは、まったくの新設計と言え、非常にチャレンジングな試みだと思っている。
ただ、その新しいエンジンを用いた最初のモデルに、トライアンフの歴史上外すことのできないスピード/スクランブラーというイニシャルを与えて稼ぎ頭とも言えるモダンクラシックシリーズに投入してきたところや、見回してみるとスクランブラー系=ネオクラシッククロスオーバーは現在400ccマーケットに不在である点。これらのことを考えるとヒットを飛ばす気満々であり、一方でそれは背水の陣を敷いているのではないかとも思えてしまう。そんなスクランブラー400Xの使い勝手、ポテンシャルを数日間に渡りじっくりと吟味したのでお伝えしてゆこう。
トライアンフ スクランブラー400X 試乗インプレッション
小さすぎず大きすぎない高級感もありコレがベターパック
スクランブラー400Xに触れるのは今回が2度目であった。最初は1月に行われたメディア向けの発表試乗会の時で、その際は限られた時間だったこともあり、ある程度の感触を得ることしかできなかった。再びスクランブラー400Xを目の前にすると、立派な体躯を持っていることが改めて分かる。
同時に登場した兄弟モデルのスピード400もクラスを超えた質感と風格を持っているが、それでも上位モデルと比べると若干コンパクトにまとめられているのに対して、スクランブラー400Xはしっかりと大柄ボディで纏められており、置いてあるだけも威張りが効く。それでいながら車体重量が軽く気軽さも持ち合わせている上に細部の質感も高く良いこと尽くめ、あまり褒めることをしない私であるが実際に跨りライディングポジションをとると如実にそれが伝わってくるのでオーナーは所有欲も満たされることであろう。
エンジンを始動すると、トライアンフのスクランブラーモデルでアイデンティティとなっている二本出しタイプのサイレンサーから心地よいサウンドが周囲へと響き渡る。ファーストギアに入れて走り出すと、スピード400と比べて、よりローギアード化されたスプロケにより力強い加速感を得られる。ハンドルが高い位置にセットされており、上体が立っているからなおさらそれを感じさせる。
メディア試乗会の際に「ハンドルの切れ角が少ない」という声が聞こえたが、太めのアウターチューブを持つアップサイドダウンフォークであることを考えると、むしろ逆に良く切れ角を稼いできたと思えるものである。アップライトなライディングポジションと相まって交差点をスイスイとパスし、前方がクリアになったらスロットルをワイドオープンしてトルクフルな加速を味わう。これは痛快そのものである。
シャシーがしっかりしている上にスピード400よりも45mm長いホイールベースで、キャスターも寝かされているため直進安定性が高い。パワーとの兼ね合いも良いのでハイウェイクルーズも楽にこなせた。
強いて言うならば、先述した通りローギアード気味のスプロケを採用しているので、スロットルを開けた際の吹け上がりが早く回転上昇の頭打ちも低めには感じられる。これはソフトリミッターやトラクションコントロールなど電子デバイスとのセッティング関係もあるので、スロットル操作をゆっくり行えば伸びるように回転が上昇し、ラフな操作をすれば車体の方が抑制してくる。これはセーフティマージンがしっかりと取られていると考えて良い。
この手のクロスオーバーモデルはルックス(見た目)のみで、実際に未舗装路に持ち込んで云々の性能というのはあまり重視されていないことも多々あるのだが、フラットな未舗装路を走らせた感じでは、なかなか走れるものに仕上げられているじゃないかと思わせてくれた。ステップとハンドル位置が良く、踏ん張りが効く点と、フロント19インチ、リア17インチのタイヤサイズがポイントとなっている。
エンジンやフレームなどの基本コンポーネンツはスピード400と共通とされているが、フレームネック部分を横から見るとキャスター角を変えるためだと思えるが仕上げが違うものとなっているし、何と言っても双方のキャラクターは明確に異なり、どちらも甲乙つけがたい。後は新型モデルということなので耐久性が気になるくらいか。
そうそう、街中でちょっと置いて離れていたところ何人かが足をとめて各部をじっくりと眺めていた。クラシックな佇まいでありながらも、それほど注目を浴びる存在となっているのである。ここ数年のトライアンフの勢いをさらに加速させる400モデルのマーケット投入。スクランブラー400Xはその一翼を担うにあたり十分魅力的なモデルに仕上がっている。
トライアンフ スクランブラー400X 詳細写真
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