中免で乗れるトライアンフのスピード400を試乗インプレ!何度乗っても本当に良い、さらに飽きない
- 掲載日/2024年02月28日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文・写真/小松 男
プレミアムブランドのトライアンフがミドルスモールマーケットにあてた挑戦状
英国を代表する伝統的なモーターサイクルブランドであるトライアンフから、ついに普通自動二輪免許で乗ることができるスピード400が登場した。昨今目覚ましい発展を遂げてきたトライアンフの次なる一手、これは世界のモーターサイクルブランドに向けた挑戦状とも言えるものとなっている。スピード400はシングルエンジンはもちろんフレームをはじめとしたシャシー、一台すべてが完全新設計となっている。そのスピード400の発表と同時にスクランブラー400Xも登場しており、どちらも基本コンポーネンツを共通とした兄弟モデルではあるのだが、スタイリングはもちろん、乗り味も全く異なるキャラクターへと上手く仕立て上げられていることも興味深い。
実は先だって国内に上陸して間もないタイミングでメディア向けの発表試乗会が開催されており、その折実車に触れ、乗る機会をいただいていたのだが、少し走らせただけでもスピ―ド400の奥深さが伝わってきた。そこで私はもっと多くのステージでスピード400を走らせて本質を探りたいと考えて、今一度しっかりと試乗インプレッションを行うことにしたのである。
トライアンフ スピード400 特徴
石を投げれば当たるほどここ数年で目覚ましい成長を遂げた
トライアンフの勢いが止まらない。Moto2へのエンジンサプライヤーとなったことで、さらに注目されたロードスターシリーズやネオクラシックブームが後押しをしたこともありモダンクラシックシリーズも好調なことはもちろん、タイガーシリーズもアドベンチャーマーケットにしっかりとした存在感を示しているし、トライデント660から始まったエントリーモデルもファン層を広げていることに一役買って出ている。
毎年冬の寒い季節になると見かけるバイクはプロペラマークを付けたモデルがほとんどとなり、その中にぽつりぽつりとバー&シールドマークが紛れているというのが常であったのだが、驚いたことに今冬は街中でも高速道路でも見かける多くはトライアンフなのだ。
トライアンフジャパンでは2010年代に入ってから年間2000台の販売目標を掲げてきており、2020年には2389台をマークしている。ただその後、現在までの推移を見てみると、2022年には3397台、昨シーズン2023年は4108台と驚愕の成長を遂げているのだ。この勢いを止めることなくさらに加速させることを使命とし、このタイミングでスピード400は登場してきたのである。
トライアンフ スピード400 試乗インプレッション
扱いやすくエキサイティングそれでいながら骨太感もアリ
各国のレギュレーションによって排気量はまちまちではあるのだが、それを踏まえたとしてもここにきてミドルスモールレンジ(350~400ccクラス)のバイクマーケットは活況を見せている。元々は日本ブランドが得意としてきたクラスだったのだが、欧州からはジャーマン系、オーストリー系ブランドが参入してきたのに端を欲し、アジアンブランドではフラッグシップモデルとして開発を進め、さらにはモーターサイクル界を代表するアメリカンブランドも先だってミドルスモールレンジのバイクを発売した。そこに今回のトライアンフ・スピード400/スクランブラー400Xである。つまり役者は出揃ったのだ。
この動きは自動車業界では四半世紀ほど前からあり、日本車がスモールカーから脱皮してプレミアムセグメントを手掛けるようになったのに対して、欧米のプレミアムブランドは、より大衆向けのモデルを開発発表してきた。どちらが良策かという話は別として、各ブランドの戦略がマーケットに表れているというわけである。
そんな背景に照らし合わせてみるとトライアンフはそもそもプレミアムブランド志向で推し進めてきたところに、エントリーモデル的なトライデント660やタイガースポーツ660を投入、今回はさらに下層へとレンジを広げるべく、スピード400を追加してきたと考えて良い。
こう書くとチープな仕上がりとなっていそうだと感じられてしまうかもしれないが、実車を目の前にすると、全体的に上質な雰囲気を持たされているだけでなく、ディテールパーツまで高品質であり、さすがはトライアンフであるなと思わせてくれる。車格は小さくは感じないが、それでもツインエンジン系のモダンクラシックモデルと比べるとややコンパクトに見える。それよりも驚いたのは車体を引き起こした時の腕に伝わる軽さだ。これならば免許をとって間もないビギナーライダーはもちろん、ビッグバイクの重量に辛さを感じ始めた熟練ライダーでも楽に取り回すことができるだろう。
エンジンを始動し走り始める。シングルエンジンらしい歯切れの良いエキゾーストノートが心地よく伝わってくる。最初こそ若干ライディングポジションが窮屈に思えたものの、ハンドル、シート、ステップの位置関係が良い上にシートがフラットで前後長が長いため自由度が高く、キビキビと交差点を左右にパスして進むことができる。
エンジンのパフォーマンスは十分プラスαの余裕が持たされている。ショートストロークでヒュンヒュンと回るエンジン特性はスポーティであり、味付けこそツイン系のエッセンスが感じられるのだが、スピード400のバランスは素晴らしく気持ちが良いものとなっている。一方でシングルエンジンにドコドコとした鼓動感を求めているのであれば、方向性が違うと思うかもしれない。
首都高のようなステージを走らせるとビッグバイクではパワーやパーツが過剰だと感じられることもあるのだが、その点スピード400はエンジンパフォーマンス、コーナーリング性能、乗り心地などなど、すべてにおいて具合が良い。もちろん、適当に扱えば危険だが、真摯に走らせればそれに応えてくれる懐の深さを持っている。だからワインディングロードも最高に気分よく走ることができる。車重だけでなくブレーキやクラッチレバーのタッチまでも軽いので、力持ちがねじ伏せなければならないような場面を求められないのだ。
巡行性能的には6速トップ4000回転で時速80キロをキープしてクルーズと言うのが快適ライン。遠出しても疲れることは無いが、もう少しオーバードライブ気味でも良いかもしれない。強いて言えばモダンモデルだと印象付けるためにあしらったディテール、例えばゴールドに光るフロントフォークやミニマムサイズのターンシグナル(アフターマーケットでは極小がトレンドなようだが)などがそれにあたり、フォークのアウターチューブはシルバーやブラック、ウインカーはクラシックなデザインエッセンスを使ってくれると、先輩オニーサン方はとっつきやすいのではないかと感じてしまう。まあただデザインというのは常日頃からトレンドが流れていて、以前の流行りがまた巡ってくるということもままあるものなので、初代モデルとして登場したスピード400はこれで良いものなのか、とこちらが納得するのが得策であろう。
スピード400はとにかく楽しくて気持ちが良い。ソロで乗ってもタンデムデートも楽しめるし、ロングツーリングにもサーキット走行もカバーする。スピード400は幸せなバイクライフをもたらしてくれるトライアンフの名に恥じないモデルにまとまっている。
トライアンフ スピード400 詳細写真
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