トライアンフ スピードトリプルR
- 掲載日/2012年07月19日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文/佐川 健太郎 撮影/MOTOCOM 衣装協力/HYOD
トリプル系フラッグシップに
究極の「R」仕様が登場
世界基準でのキング・オブ・ネイキッドを標榜するスピードトリプルのスポーツバージョンが「R」である。2011年、6年ぶりにフルモデルチェンジされたスピードトリプルの狙いは、さらなるスポーツ性能の向上にあった。そして今回の「R」の登場により、そのパフォーマンスは究極まで高められたことになる。スピードトリプルは1994年にデビューした初代から、世界中で実に7万台以上のセールスを築いてきた、ある意味でトライアンフの屋台骨でもあるモデルだ。それだけに、そのフラッグシップとなる「R」にはメーカーの意気込みを感じさせるスペックが与えられている。当然、ユーザーの期待度も大きいはずだ。どんなパフォーマンスを見せてくれるか、楽しみである。
トライアンフ スピードトリプルR 特徴
世界の一流ブランドで
足まわりをグレードアップ
「R」を語る前に、まずは昨年フルモデルチェンジした新世代のスピードトリプルについて、知っておく必要がある。パワフルさには従来から定評のある並列3気筒エンジンは、吸排気系のリファインや ECU 性能の向上、ポンピングロスの低減などにより、ピークトルクで8%アップ、ピークパワーで5PSアップの 135PS/9,400rpm を実現。これに合わせて、特徴的なレイアウトのアルミツインスパーフレームも、先行デビューした「ストリートトリプルR」の設計思想を取り入れて大幅に軽量・コンパクト化。エンジン搭載位置を 3mm 前方かつ7度前傾させて搭載し、フロント荷重を増加されることで、よりスポーティなハンドリングを獲得。また、ライディングポジションも最新のエルゴノミクスに基づいて改良され、シート高を下げるとともにライダー着座位置を前寄りとし、ステップ位置なども最適化することで、マシンとの一体感と操作性を高めている。
そして「R」の称号を支えるのが、サーキットでのパフォーマンスも見据えたハイクオリティな足回りである。前後サスペンションは、スタンダードの「ショーワ」から「R」専用に開発された「オーリンズ」を採用。フロントは左右独立減衰調整式の NIX30 倒立フォーク、リアサスペンションには伸び側、圧側が完全独立式の減衰力調整機構を持つ TTX36 リンク式モノシッョクを備えるなど、最新スペックで固められている。また、ブレンボ製キャリパーも最新のモノブロックタイプにバージョンアップされ、スタンダードに比べて制動力が5%向上。前後ホイールも「R」専用に開発された PVM 製(ドイツ)の軽量タイプが採用され、鍛造ホイールならではの強度により、リムの厚さは 4mm から 2.5mm に薄肉化された結果、フロントホイールで 0.7kg、リアホイールで 1kg の軽量化を実現している。なお、日本仕様は ABS が標準装備となる。
エクステリアにも「R」専用のカーボンファイバー製タンクカバーやラジエーターシュラウド、ブラックアルマイト加工を施したテーパーハンドルバー、特徴的なレッドサブフレームなどが奢られ、ワンランク上の品質を演出している点も見逃せない。こうしたディテールへのこだわりもまた、「R」のバリューを高めることに一役買っている。まさにトライアンフが提案する、ロードスターのフラッグシップモデルにふさわしい仕上がりと言えよう。
トライアンフ スピードトリプルR 試乗インプレッション
「R」の名にふさわしい
ワンランク上の走りに酔いしれる
スピードトリプルは、いつ見てもカッコいいと思ってしまう。ムダなものを切り落とした筋肉質な車体に、見るからにマスが集中した凝縮感のあるフォルム、それでいて全体的に柔らかな曲線で構成されたエレガントなデザインなど、眺めているだけでホレボレしてしまうのだ。そして今回の「R」バージョンは、これにレーシングマインドが吹き込まれた。
もともとスポーティなマシンであるスピードトリプルは、かつてスーパーバイク世界選手権の前座でワンメイクレースが開催されていたこともあるなど、サーキットを意識した作り込みがなされていた。それが昨年、新型になって軽量・コンパクト化され、車体もスーパースポーツ的なディメンションとなり、エンジンもパワーアップされて戦闘力が高められた。さらに、「R」はこれに加えてオーリンズとブレンボ製モノブロックキャリパーと PVM 製軽量ホイールまで装備されている。その実力は推して知るべしだ。
取り回しをやってみただけで、スタンダードモデルとはイナーシャ(慣性力)が違う。車重は 212kg と、スタンダードに比べてわずか 2kg 減なのだが、軽く押しただけでスーッと前に出て行く。まるで、転がり抵抗が少なくなったかのような感じは、軽量ホイールとオーリンズのおかげだ。バネ下の軽量化とサスペンションの作動性の向上がもたらす恩恵と言える。
走り出すとこれを実感する。ウォームアップを兼ねて軽く左右にロールを切ってみると、排気量を感じさせないヒラヒラ感がある。これだけで「走りそうだな」と直感。マシンに体を慣らしながら徐々にスロットルを開けていくと、3気筒独特の、やや湿り気を含んだハスキーなトリプルサウンドが存在をアピールしてくる。675 シリーズよりも図太く腹に響くサウンドは、そのままパワー感にも表れている。とにかくミドルレンジが厚く、どこからでもスロットルを開けるだけでパワーリフトできるような、スーパーフラットトルクがスピードトリプルの持ち味だ。
コーナリングは「R」の真骨頂である。元々のスポーティなハンドリングに輪をかけて、軽快感が増した感じ。特にコーナーアプローチからの倒し込みでは、ブレーキングもそこそこに飛び込んでいける余裕がある。オーリンズ特有のしっとりとした作動感が優しくコーナリングGを受け止めてくれる感じなのだ。ブレンボのブレーキも、新型が採用されて制動力が高まっただけでなく、コントロール性も高まっている。以前は効きすぎてしまい、コーナー進入時での微妙な速度コントロールがやや難しい感じもあったのだが、これは繊細なタッチ感そのままに、自在に減速フィールを楽しめる。バネ下が軽くなって路面追従性も向上していることから、タイヤの接地感も鮮明になっているように感じる。OEM 装着されているピレリのスーパーコルサ SP との相性も抜群で、安心感に満ちたとても気持ちいいグリップ感を発揮してくれる。かように、グレードアップした足回りのパッケージングが素晴らしいのだ。結果的に、楽に安全にペースアップできるし、サーキットなどでは存分にそのポテンシャルを楽しめるはずだ。そして、何よりもそのグレード感たっぷりの上質な走りのクオリティを楽しめる。それは、たとえ速く走らなくても、市街地クルージングでも味わえるものだ。
ちなみに、以前スタンダードモデルに試乗したときはリアサスのバネがやや硬い感じでプリロードを調整した記憶があるが、今回の「R」では最初から標準セットがいい感じなので、調整なしで試乗した。もし、調整が必要な場合も、フロントは圧側と伸び側の減衰力調整が左右それぞれのフォークトップで完結できるし、リアの TTX にいたっては素手でダイヤルを回せる簡単さ。いくら高性能なサスペンションでも、調整できなければ宝の持ち腐れなので、その意味ではこのセッティングの容易さは特筆すべきだろう。
スーパースポーツに匹敵する走りのパフォーマンスもさることながら、カーボンパーツや鍛造ホイール、金色に輝くサスペンションなど「R」専用パーツならではの美しい仕上げも、オーナーの所有欲を存分に満たしてくれるはず。その贅沢が、スタンダード+30万円で手に入るなら、これはリーズナブルと言えよう。
トライアンフ スピードトリプルR の詳細写真
SPECIFICATIONS –TRIUMPH SPEED TRIPLE R
価格(消費税込み) = 179万3,400円
排気量1,050cc、3気筒エンジンを搭載するロードスタートリプルシリーズのフラッグシップモデルに、スポーツ性能をさらに高めた上級バージョン「R」が登場。
- ■エンジン型式 = 水冷4ストローク DOHC並列3気筒
- ■総排気量 = 1,050cc
- ■ボア×ストローク = 79.0×71.4mm
- ■最高出力 = 135HP(99kW)/9,400rpm
- ■最大トルク = 111N・m/7,750rpm
- ■トランスミッション = 6速
- ■サイズ = 全長2,100×全幅795×全高1,110mm
- ■車両重量 = 212kg
- ■シート高 = 825mm
- ■ホイールベース = 1,435mm
- ■タンク容量 = 17.5リットル
- ■Fタイヤサイズ = 120/70 ZR17
- ■Rタイヤサイズ = 190/55 ZR17
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