【トライアンフ新型スピードツイン1200/RS 海外試乗記】伝統のバーチカルツインで本格的なスポーツライドを楽しめる
- 掲載日/2024年12月12日
- 取材協力・写真/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文/佐川 健太郎 衣装協力/KUSHITANI
スピードツイン1200/RS 動画でチェック!
スピードツイン1200/RS 特徴
スタイリングとパフォーマンスを磨いた最新モデル
元祖スピードツインが誕生したのは1937年。時速90マイル(145km/h)に達するなど当時の世界最速級を誇ったスポーツバイクだった。その不朽の名車の名を冠した新生スピードツインが登場したのが2019年。ボンネビル系で最も高性能な「スラクストンR」をベースに開発された“カスタムロードスター”として現代に蘇った。そして今回さらに熟成を重ねスタイリングと走りのパフォーマンスを磨いた最新モデルとして誕生したのが「スピードツイン1200」である。
外観はトライアンフの伝統を感じさせるクラシカルな雰囲気とスポーティで現代的なスタイルを融合しつつ、さらに軽快で洗練されたデザインへと一新されている。搭載される水冷並列2気筒エンジンはピストン高圧縮化やカムプロファイル変更、クランクシャフト軽量化などにより5psアップとなる105ps/7750rpmを実現。フレームは従来型を踏襲するが、前後マルゾッキ製サスペンションはリア側がリザーバータンク付きとなり、トライアンフ銘柄の新型ラジアルキャリパーとφ320mmダブルディスクを装着。新デザインの軽量アルミ鋳造ホイールに新たにメッツラー・スポルテックM9RRを標準装備するなど足回りも充実。また、DRL付きのフルLEDヘッドライトやTFTフルデジタルメーターなど最新のコンポーネンツにコーナリング対応のABSやトラクションコントロールを装備するなど電子制御もアップデートされている。
さらに今回、上級版として「スピードツイン1200RS」が新たにタイプ設定させた。エンジンと車体はスタンダード版と共通ながら足回りを大幅にハイグレード化。全調整式のマルゾッキ製倒立フォークとオーリンズ製リアショックにブレンボ製Stylemaキャリパーを採用し、公道レースでも実績のあるメッツラー・レーステックRR K3タイヤを標準装着する。モダンクラシック系で初となるクイックシフターの投入や、スタンダードと比べて低めのハンドルとバックステップを採用した“攻め”のライポジからも、徹底して走りの性能にこだわったモデルであることが分かる。
スピードツイン1200/RS 試乗インプレッション
バーチカルツインの洗練された走りを楽しめる
まずはスタンダード版の1200から試乗してみた。タンク回りがスリムになり全体的にスタイルも洗練されている。ライポジも従来型に比べてよりハンドルが高くリラックスできる印象だ。跨るとサスペンションは比較的ソフトで初期の沈み込みが大きく、シートも前方が絞り込まれていて足着きも良い。イグニッションスイッチを押すと軽いクランキングで一発始動。正しく英国的なバーチカルツイン(直立並列2気筒)が奏でる重厚で弾けるサウンドが響き渡る。クラッチは軽くシフトも節度感があり発進もスムーズ。洗練された操作系のフィーリングに現代のバイクを感じる。
スロットルのレスポンスも穏やかで、コーナー進入でスロットルを閉じて車体を倒し込み、バンクした状態から再び開けていくときもストレスがない。とはいえ、1200ccの排気量が生み出すトルクは強力で、3,000rpmも回していれば270度クランクの小気味良い鼓動とともに何速からでも豪快な加速が得られる。従来との違いが出てくるのが高回転での伸び。軽量クランクとハイカムのおかげでパワーの立ち上がりも速く、出力ピークが500rpm高くなってワンギアで長く引っ張れるようになった。以前、従来型でサーキット走行したときに「もう少し上が欲しいな」と思った記憶があるが、そこを上手く整えてくれた感じだ。
大柄に見えてホイールベースは1,413mm、車重216kgと意外にもコンパクトで軽く、車格としてはミドルクラスと同等レベルと言っていい。おまけにキャスター角(22.4°)やトレール量(91mm)などのジオメトリーも運動性能重視の数値が与えられている。そこにトルクフルな出力特性が加われば、走りの良さは言わずもがな。1200ccの大型バイクとは思えない軽快さでひらひらとワインディングを切り返していく。エンジンを回さずとも低い回転域でも分厚いトルクで路面を蹴って曲がってくれるし、新型ラジアルキャリパーのブレーキも強力かつ扱いやすく、コーナー進入での微妙な速度コントロールもしやすかった。160サイズと細めなリアタイヤも軽快なフットワークに貢献している。
積極的に操るほど楽しいスパルタンなRS
続いてRSだが、走りのキャラクターは予想以上に大きく異なっていた。前後フルアジャスタブルのサスペンションはダンパーが効いた完全なスポーツ設定で、軽やかなフットワークの1200に対しRSは手応えがあるハンドリングが特徴だ。コーナーではしっかり荷重を掛けて倒し込み、立ち上がりではスロットルを開けて後輪にトラクションをかけてやることで、メッツラー・レーステックRRが路面に吸い付くような接地感で返してくれる。ちなみオーリンズ製ツインショックはスタンダードより7mm長いストローク量を持っていて、若干リアが上がった姿勢も相まってハンドリングはさらにクイックだ。それでも尚ブレンボの最高峰ラジアルブレーキに公道レース用タイヤを奢るスパルタンな足回りを見て最初はやりすぎと思ったが、走り込むほどに低めのハンドルとバックステップも含め、RSの運動性能を存分に引き出すための最適解であることが理解できた。
印象的だったのがRSに搭載されるスポーツモード。エンジンは共通だが鋭いレスポンスを生かして車体のピッチングモーションを引き出せる。結果として、ハイグレードなサスペンションに仕事をさせて一層アグレッシブな走りが楽しめる。ではギンギンに攻めないと楽しくないのか? と問われればそれは違う。ちゃんとボンネビル系のバーチカルツインらしい味わい深さも残っていて、低中回転でただ流しているだけでトルクフルな力強さと鼓動感のあるサウンドが気持ち良かった。
実際に一日ワインディングを走り回ってみて、両者の方向性の違いも良く分かった。気負わずに街乗りからツーリングまで軽快な走りを楽しめるのがスタンダード。積極的に乗りこなすほどに楽しく、週末のワインディングから本格的なサーキット走行まで想定したスポーツモデルがRSである。従来モデルからすると正常進化したのはRSかもしれないが、普通に乗るならスタンダードを個人的にはおすすめしたい。
スピードツイン1200 詳細写真
スピードツイン1200RS 詳細写真
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