トライアンフ スプリントGT
- 掲載日/2011年06月30日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン 取材・文/佐川 健太郎
ツーリング性能を高め
グランドツアラーへと進化
トライアンフの3気筒 1050cc エンジンを搭載する正統派ツアラー。2005年に従来型の 955cc 3気筒エンジンから排気量を拡大した新型スプリントSTがデビューして以来のフルモデルチェンジとなる。このスプリントGTは、エンジンをリファインすると同時に車体へも大幅に手が加えられ、ST(スポーツツアラー)からGT(グランドツアラー)へ、新しいコンセプトを掲げての登場である。そのイニシャルコードを見ればマシンの素性が分かるというもの。長距離をより安全・快適に走破するためのガジェットが組み込まれた、スプリントGTの真価を見極めてみたい。
トライアンフ スプリントGT 特徴
パワーと積載性を高め
ABS装備で安全快適に
スポーツツアラーは欧州で人気のカテゴリーである。隣国が地続きのヨーロッパ大陸では国境を越えて長旅に出ることも珍しくなく、有名なツーリングスポットでは多彩なナンバープレートで賑わう光景を目にすることも多い。そんなモーターサイクル文化の中に生まれ、育まれてきたのがスポーツツアラーである。
先代のスプリントSTがスポーツ性能を重視した先鋭的なモデルだったのに対し、後継機となるスプリントGTはその名のとおり、ツーリング性能を高めてきた。GTとは “グランドツーリング” の略であり、直訳すると大陸横断ツアラーである。つまり、ロングランをより快適にこなすための “旅の装備” と “走りの性能” を合わせ持ったモデルということだ。
パワーユニットはスプリントSTがベースの水冷4ストローク DOHC 4バルブ並列3気筒 1,050cc エンジンだが、ECUと排気系の見直しによって中速域を中心にトルクアップ。ピークパワーも5psアップの 130ps/9,200rpm と強化されている。フレームはSTをベースに、ホイールベースを 1,457mm から 1,537mm へと大幅に延長し、マフラーを従来のセンターアップタイプから右側1本出しとすることで、低重心化とともに直進安定性を高めている。
また、サイレンサーを下側に移行したことで、シート下スペースを新たに確保。31リットルの大容量を誇るパニアケースを標準装備するとともに、モバイル機器に対応する12V電源を備えたトップケースをオプションで用意するなど、積載性や利便性を大幅に高めている点が特徴となっている。
前後の足回りも基本的に従来どおりだが、リアショックには新たにダイヤル調整式の油圧プリロードアジャスターを装備し、タンデムや荷物積載時の素早いセッティング変更を可能にしている。そしてGTにはABSが標準装備となっており、アクティブセーフティ性能が高められていることも見逃せない。スタイリングもフロントマスクがよりシャープになり、スクリーン形状もプロテクション効果の高いデザインに変更されるなど、より高速長距離型の仕様にアップグレードされている。
トライアンフ スプリントGT 試乗インプレッション
余裕のパワーが生み出す
際立つ高速クルーズ性能
先代のスプリントSTは、どちらかというとスポーツに軸足を置いたツアラーだったが、スプリントGTは逆にツーリング性能を前面に押し出してきた。車体も一見して大きく長くなった印象で、実際にホイールベース換算で 80mm も拡大しているし、パニアケースは標準装備、重量も 20kg 以上増となるなど、もはや堂々たるロングツアラーの風格である。
跨ってみると、イニシャルでソフトに沈み込む前後サスと相まって、足着きは意外と良好。ただ、さすがに重量があるため、押し引きなどの取り回しには気を遣う。パニアケースの張り出しもかなりのものなので、渋滞路などは苦手だ。
街中を抜けて郊外に出ると、一転してGT性能が開花する。「5psアップ」と言われても大したことなさそうだが、最高出力はおもに中速トルクに振り分けられているため、ミドルレンジの余裕が違う。高速クルーズを想定したハイギアードな設定なので、100km/h 巡航なら6速 3,500rpm で十分なゆとりがある。STなら追い越しでシフトダウンしたくなるところを、GTの場合は 4,000rpm も回していれば分厚いトルクで楽々パッシングが可能だ。
ウインドプロテクションも向上している。比較的上体が立った、アップライトなライディングポジションだが、段付きタイプになったスクリーンのおかげで風に頭が押されるというストレスがない。頭の位置を微妙にずらしてみたが、気になる風切り音もほとんどなく快適。バックミラーも大型でブレが少なく、後方視界もなかなか良好だ。
サスペンションも動きがしっとりとソフトでツアラーらしい設定。同系の 1,050cc トリプルエンジンを積むスピードトリプルよりは柔らかくストローク感があり、どちらかというとタイガーに近い感じがある。スイングアームが延長された効果だと思うが、先代のSTよりリアの動きがゆったりとしていて、路面のギャップやうねりに対しても、姿勢変化が穏やかになった。つまり疲れにくくなったのだ。
大船に乗っているような安心感があり、ワインディングでも見通しのいい緩やかなコーナーをハイスピードで駆け抜けるのは得意だ。ただ、大柄で長い車体のため、タイトコーナーなどは思ったよりラインが大回りする傾向がある。特にパニアケースに荷物を満載したときは要注意。若干スイングすることで反動を逃がす独特のマウントシステムの影響もあってか、倒し込みでややオツリをもらうことがあった。これも、慣れの問題だとは思うが…。
ABSも試してみた。前後とも作動時に若干のクリック感があるが、作動タイミングは浅くもなく深過ぎず、ちょうどいい感じだ。ブレーキの初期効力の立ち上がりも穏やかなので、思い切ってかけられる。これだけの重量車なので、万が一の危険回避のためにも、絶対必要なシステムだろう。
本格的なグランドツアラーへと正常進化したスプリントGTは、より快適で頼もしい旅のパートナーとなった。高級化が進むビッグツアラーの中にあって、価格的にも魅力ある1台だと思う。
トライアンフ スプリントGT の詳細写真
SPECIFICATIONS –TRIUMPH SPRINT GT
価格(消費税込み) = 166万9,500円
先代のスポーツ・ツアラー、スプリントSTの進化版として、よりツーリング性能を高めたモデル。トライアンフお得意の3気筒エンジンもパワーアップし、実用性も高められている。
- ■エンジン型式 = 水冷4ストロークDOHC4バルブ並列3気筒
- ■総排気量 = 1,050cc
- ■ボア×ストローク = 79.0×71.4mm
- ■最高出力 = 130ps/9,200rpm
- ■最大トルク = 108Nm/6,300rpm
- ■トランスミッション6速
- ■サイズ = 全長2,260×全幅760×全高1,210mm
- ■シート高 = 815mm
- ■ホイールベース = 1,537mm
- ■タンク容量 = 20リットル
- ■Fタイヤサイズ = 120/70-17
- ■Rタイヤサイズ = 180/55/17
- 【前の記事へ】
トライアンフ ボンネビルT100 - 【次の記事へ】
トライアンフ ストリートトリプル
関連する記事
-
試乗インプレッション
トライアンフ スプリントST
-
試乗インプレッション
トライアンフ トロフィー
-
トライアンフ購入ガイド
トライアンフ スプリントGT
-
トライアンフ購入ガイド
トライアンフ スプリントST
-
トライアンフ購入ガイド
トライアンフ トロフィーSE