トライアンフ スプリントST
- 掲載日/2009年05月21日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン 構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
ヨーロッパが認めた
ハイスピードツアラー
日本と違い国同士が地続きとなっているヨーロッパでは、フルカウルのツーリングモデルの人気が高い。パニアケースに荷物を満載し、パートナーとタンデムで数百kmの距離を一気に駆け抜けるというタフな使い方をするため、自ずとバイクに対する評価も厳しいものが多くなる。今回インプレッションを行うのは、ドイツの名門2輪雑誌「モトラッド」において、50,000km耐久テストでトップの成績を収め、2008年にはツーリング賞に選ばれる栄誉に浴したトライアンフ「スプリントST」だ。数多く発売されているツアラーモデルの中で、なにゆえこのバイクが高い評価を集めているのか。あらゆるシチュエーションを走り抜けることで、その秘密に迫ってみたい。
トライアンフ スプリントST 試乗インプレッション
昂ぶるスポーツパフォーマンスと
ツアラーならではの快適さが融合
「予想外」という言葉ほど、スプリントSTに似合う言葉は無い。パニアケースが装着でき、20リットルのタンクを持つフルカウルモデル、といえば典型的なツアラーイメージだが、その枠に収まらないスポーツ性能を併せ持つバイク、それがこのスプリントSTだ。今回の試乗では渋滞の多い東京23区から、千葉・埼玉などのツーリングルートを走行したが、ひと際エキサイティングな面白さを見せてくれたのは、驚くべきことにワインディングだった。低回転から力強いトルクが湧き出す並列3気筒エンジンは、アクセルのオンオフに対してリニアに反応。高速走行だけに終わらないレスポンスが楽しめる。ツーリングも視野に入れた大柄な車体は見かけとは裏腹に、積極的な姿勢変化を好んで受け入れ、タイトなコーナーでも高い旋回性を発揮。一般的なツアラーならリーンウィズで曲がるところを、膝頭一つ分だけ腰を落とし込めば、穏やかさと鋭さのバランスが取れたコーナーリングで気持ち良く駆け抜けられる。これを空荷の状態でなく、左に撮影機材、右にレインウェアなどのツーリング用品を詰め込んだ状態でこなしてしまうのだから、そのパフォーマンスには舌を巻くしか無いだろう。
もちろん、主眼であるツアラーとしての実力も十分だ。ヨーロッパで人気が高いモデルだけに、高速巡航能力は抜群。6速ホールドのままでも、右手のアクション一つで追い越しは自由自在で、ストレス無く交通の流れをリードできる。今回の実燃費ではリッターあたり20kmを少し割る程度だったが、20リットルというタンク容量を考えれば航続距離は十分なもの。性能と燃費のバランスは良好だ。そして、超高速域の巡航からのブレーキングでも不安が少ないのもスプリントSTの美点。特に搭載されているABSは作動感覚が分かりやすく、ライダーへのフィードバックもソフトなので非常に扱いやすい。ただ、少し気になるのがライディングポジション。スポーツ性を重視したために、少し前傾が強いように感じた。とはいえ、あのアグレッシブな走りを知ってしまうと、これはこれで面白いパッケージと思える。快適な高速走行と、旅先での熱い走りを両立するスプリントSTだからこそ、ヨーロッパにおいてベストツアラーに選ばれているのだろう。
トライアンフ スプリントST 特徴
ツーリングモデルの基本を抑えた
ソツの無いパッケージングが魅力
個性的なルックスや走行性に対し、スプリントSTの装備類は実直なまでにスタンダードなものとなっている。20リットルの大容量タンクに、純正のパニアケースとグラブバー、タンデムでの居住性も考慮した肉厚で大き目のシートなど、ツアラーとして求められる要素を過不足無くえている。個性的な3眼ヘッドライトが印象的なカウリングも防風性能が高く、見た目のインパクトの裏に確かな実用性を確保。中でも、ヘッドライトは照射範囲、光量とも優秀で、ナイトランに安心感を与えてくれ、ロービームのワイドな配光は被視認性の面でもメリットが大きい。また、ハイビームに切り替えると3つ全てが点灯するため、街灯の少ない山間部においても、余裕を持って夜間走行を楽しむことができた。3気筒エンジンの個性派ツアラーという印象が強いモデルだが、ツーリングモデルとしてのユーティリティに抜かりは無い。
そして、もうひとつ忘れてはならない特徴と言えば、トライアンフのアイデンティティである並列3気筒エンジン。2気筒にも4気筒にも無い独自の風味を醸し出すこのエンジンは、やはりスプリントSTのキモだ。低回転域から分厚いトルクを発生し、トップエンドまで淀みなく回るエンジンは快感の一言。127馬力という十分なパワーを発生しており、乾燥重量で200kgを超える車体を軽々と高い速度域へと連れて行ってくれる。そして何より、他の形式では味わえない官能的なトリプルサウンドは必聴だろう。迫力ある低音が高回転で和音へと変わっていく様は、一度聴いたら癖になってしまう。この心地良くもパワフルなエンジンと、個性の裏に高い実用性を備えた車体の組み合わせなら、思い切り遠くまで旅に出られそうだ。
トライアンフ スプリントST の詳細写真
SPECIFICATIONS – TRIUMPH SPRINT ST
価格(消費税込み) = 169万500円
1,050ccの並列3気筒DOHCエンジンを搭載したハイスピードツアラー。ドイツの名門2輪誌で「ツーリング賞」を獲得するなど、ヨーロッパにおいて高い評価を獲得している。
- ■エンジン型式 = 水冷4ストロークDOHC並列3気筒
- ■総排気量 = 1,050cc
- ■ボア×ストローク = 79.0mm×71.4mm
- ■最高出力 = 127PS/9,250rpm
- ■最大トルク = 105N・m /7,500rpm
- ■トランスミッション = 常時噛合式6速リターン
- ■サイズ = 全長2,114×全幅750×全高1,215mm
- ■シート高 = 805mm
- ■ホイールベース = 1,457mm
- ■乾燥重量 = 213kg
- ■タンク容量 = 20.0L
- ■Fタイヤサイズ = 120/70 ZR17
- ■Rタイヤサイズ = 180/55 ZR17
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