トライアンフ ストリートスクランブラー
- 掲載日/2017年03月31日
- 取材・文/佐川健太郎 写真・動画/山家健一 衣装協力/HYOD
トライアンフ ストリートスクランブラー 試乗インプレッション
ダート風味を街乗りでも楽しめる
個性的でスタイリッシュな走り
自分にとってトライアンフの「スクランブラ―」というと、往年の名画「大脱走」の劇中でスティーブ・マックイーン本人が演じた(諸説あるが)と伝えられる柵越え大ジャンプが印象的だ。否、正確にはスクランブラ―ではなく、これまた往年の名車TR6をベースに撮影用に改造したものと聞く。過日行われたトライアンフの2017モデル発表会でもそのレプリカが展示されていたが、たしかにマフラーは低い位置にセットされたピーシュータータイプだし、「これで本当に飛んだのか!?」と思うほどオンロードバイクの雰囲気ではあったが、それはともかく、広大な牧草地をスライドしながら走り回り、鉄条網を飛び越えて逃げていったあのシーンが、自分にとってのスクランブラーのイメージとして焼き付いているのだ。
というわけで、まず惹かれるのがそのスタイリング。初めて見た人は「なんでこんなところにマフラーが付いているのだろう」と思うかもしれないが、これはオフロード走行を前提としているためだ。最低地上高を稼いでサスペンションが深くボトムしても岩などにヒットしないように、また浅瀬なども走破できるようにするための工夫だ。同じように18インチから19インチに大径化されたフロントホイールや、ストロークを伸ばされたリアサスペンション、深い溝が刻まれたブロックタイヤなどもオフロードでの走破性を高めるため。幅広で高めにセットされたハンドルバーやギザギザの付いたステップやペダル類にもダートの香りを感じることができる。もちろん、モトクロッサーやトレールバイクのような本格的なオフロード性能はないが、その気になれば(腕もあれば)ちょっとしたフラットダートなどでは十分遊べるだけのポテンシャルを持ったモデルということだ。今回の試乗では街乗り中心でダートまでは足を伸ばせなかったが、従来型の空冷スクランブラ―がT100をベースにしていたため大きく重かったことを考えると、新型は軽量コンパクトでしかも排気量が増えてトルクアップしているため、ダート走行もきっとより楽しめると思う。
またがってみると、シート高はベースのストリートツインよりやや高めだが足着きは良好で、ハンドル位置も高く全体的にアップライトな姿勢になる。走り出して気づいたのは、従来型のスクランブラーで感じたマフラーの熱をあまり感じなかったこと。きっと取り回しが改善され、エキパイがより内側の低い位置に追い込まれたおかげだろう。夏場は分からないが、だいぶ快適になった。
フロント19インチホイールや長いリアショックなど、オフロード想定の足回りとなったことで、舗装路を走っていても乗り心地が良いのがいい。見晴らしも良く悠々とした気持ちになれる。ベースのストリートツインと比べると車重も増えているためか、ハンドリングは大らかでフロントにどっしり感があるが、それがかえって安心感になっている。
エンジンもテイスティだ。270度クランクによる鼓動感がストリートツインよりもさらに強調されて、スロットルを開けると歯切れの良いサウンドとともに弾かれたような加速感が味わえる。
電子制御の恩恵もありがたい。ABSもグレードアップしているようで、以前と比べると作動時のショックがほとんど気にならなくなり、ずっとスムーズになった。トラクションコントロールのおかげで交差点の曲がり角にマンホールがあっても神経をすり減らさずに済むし、ABSと合わせて雨の日などもずっと安全に走れる。ストップ&ゴーの多い街中ではクラッチの軽さも大きなメリットだ。
見た目はクラシカルだが、どこでも走りやすく安全で快適。デザインも現代風に洗練され、都会の景色にもよく馴染む。それでいて味わい深いエンジンにダートも走れる機動力とくれば、乗っていて素直に気持ちがいい。いろいろなシチュエーションで楽しめる、遊び心を持ったモデルだ。
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