
2007年にデビューした「ストリートトリプル」は、その名のとおりストリートでの走りを楽しむことを目的に開発された、ミドルクラスのロードスターである。トルクフルなエンジンと扱いやすくコンパクトな車体で、発売以来世界的ヒットとなったトライアンフの3気筒 675cc シリーズの代表的モデルだが、今回のマイナーチェンジによってヘッドライト形状が変更され、フロントマスクがより精悍なイメージとなったことが主な変更点である。あらためて、ジャストスタンダードの魅力を探ってみたい。
2007年にデビューしたストリートトリプルは、現行トライアンフ唯一のスーパースポーツモデルであるデイトナ675のエンジンと車体をベースとしたスポーツネイキッドモデルで、日常域での使い勝手に優れ、ワインディングでのスポーティな走りを気軽に楽しめるのが特徴だ。開発当時のキーワードは「 ACCESSIBLE =親しみやすさ」。これはビギナー向けという意味ではなく、誰もが気負いなく乗れて、腕のあるエキスパートライダーが乗っても楽しめる、扱いやすさとエキサイトメントを両立したマシンということだ。
エンジンはデイトナ675譲りの軽量コンパクトで高性能な水冷DOHC12バルブ3気筒ユニットを低中速寄りにモディファイし、同じく675同様のオープンバック型のアルミ鋳造フレームに搭載。ただし、キャスター角やスイングアームピボット位置などはストリート向けに最適化されている。
サスペンションはショーワ製で、フロントに倒立フォーク、リアにはリンク式モノショックを装備するが、調整機構はリアのプリロードのみと最小限に抑えられている。前後ディスクブレーキ&キャリパーはニッシン製のコンベンショナルタイプを採用する。
今回のマイナーチェンジでは、先にフルチェンジを行ったスピードトリプル同様、ヘッドライト形状をヘキサゴンタイプとし、精悍さをアピール。純正オプションとしてフライスクリーンやアンダーカウル、シートバックなども用意されている。
久々に乗るスピードトリプルは、ちょっと懐かしい感じがしないでもない。というのも2007年にブランニューモデルとしてデビューしたとき、いち早く海外試乗会に参加する機会があり、そこでの記憶があれこれと蘇ってきたからだ。
当時、デイトナ675がその前年に衝撃的なデビューを果たし、これに続くネイキッドバージョンが渇望されていた。デイトナ675は周知のとおり、世界中のメディアから絶賛を浴びた優秀なマシンだったため、その動力性能とハンドリングをもっと手軽かつ快適に味わえるとしたらどんなに素敵だろう…と、誰もが考えたわけだ。果たしてベールを脱いだニューマシンは、デイトナ譲りの車体とエンジンをダイレクトに受け継いだストリートファイターとして登場し、これまた大成功を収めたことは記憶に新しい。ちなみに今年リニューアルした新型 1050cc スピードトリプルは、マスを集中した軽量・コンパクトな車体にパワフルなエンジンを搭載し、スポーツモデル顔負けの運動性能を追求しているが、元をたどればこの流れを最初に作ったのがストリートトリプルだった。
今回のマイナーチェンジではヘッドライトがちょっと釣り目になり、表情が険しくなった感じがする。個人的には人懐っこい感じの丸目も好きだったが、デザインについては意見が分かれるところだろう。ストリートトリプルをあらためて目の前にすると、まずそのコンパクトさが目を引く。スリムになった兄貴分のスピードトリプルと比べてもひと回りは小さい。データ的にもホイールベースで 30mm、シート高で 25mm、重量で 15kg も小さいのだ。取り回しも楽だし、これならヒラッと跨って、スイスイと市街地を走り回れそうな気がしてくる。実際のところ機動力は抜群だ。3,000rpm で最大トルクの8割を発生するという低中速に厚いエンジン特性のおかげで、街乗りではほとんどエンジンを回す必要もないぐらい。エンジンマネジメントも熟成されて、初期型に見られたようなドンツキ感は影を潜め、スロットル開けしなのパワーの出方もよりマイルドに調教されている。国産ネイキッドなどに比べてハンドル切れ角が若干少ないことを除けば、もっとも気軽に乗れる輸入ビッグバイクといっていいだろう。
足回りは従来どおりで、サスペンションはどちらかというとソフトで乗り心地重視な感じ。ブレーキタッチも穏やかだ。フルアジャスタブルタイプの前後サスペンションとラジアルキャリパーを備えた上級バージョンの「R」が、サーキットを含めたもっと高次元でのハードな走りをターゲットにしているの対し、スタンダードモデルは「普段使い」を想定したモデルと言える。とはいえ、多少の勇気を持ってスロットルを大きめに開ければ2速からでも軽々とフロントを掲げるし、倒し込みと同時に舵角がついてクルッと曲がる俊敏な旋回特性などはさすがデイトナ675譲りである。
サスペンション調整機構や ABS、トラコンなど、いま流行りの電子デバイス類も付いていないが、「そんなものはいらない」という向きにはおすすめだし、逆にシンプルさ故の気楽さというか、一種の安心感もある。輸入ビッグバイクで100万円を切る価格も大きな魅力だろう。3気筒エンジン独特のトリプルサウンドと鼓動感を日常レベルで楽しみたい人、初めてトライアンフに乗ってみようという人向けのエントリーモデルとしても、おすすめである。
価格(消費税込み) = 99万9,600円
デイトナ675がベースのハイパフォーマンスな水冷3気筒 675cc エンジンを搭載するネイキッドモデル。マイナーチェンジによりヘッドライト形状か見直された。