トライアンフ3気筒スポーツネイキッドの最高峰モデル スピードトリプルRSを最速インプレッション
- 掲載日/2018年03月14日
- 取材・文/佐川 健太郎 写真・動画/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン 衣装協力/HYOD
シリーズ7代目にして
最強スペック「RS」が登場
1994年に初代が登場して以来、トライアンフを代表する3気筒スポーツネイキッドモデルとして世界中で熱狂的なファンを獲得してきたのがスピードトリプルである。今回で7代目に当たる新型スピードトリプルRSは、歴代シリーズ最強の最高峰モデルとして登場。「RS」の名に相応しく、エンジンと足まわり、電子制御など全てを刷新した最新スペックが与えられている。その実力とは如何なるものか、スペイン・アルメリアサーキットで開催された国際メディア試乗会から、モーターサイクルジャーナリストのケニー佐川がレポートする。
トライアンフ スビードトリプル RS 特徴
エンジンと足回りを強化し
電制も大幅に進化
新型スビードトリプルRSは従来モデルをベースに全面改良が加えられた新型モデルである。2011年のフルチェンジで角目2灯を採用した5代目からスタイリングそのものは大きく変わっていないため、ぱっと見で差別化するのは難しいが、逆に言うとそれがトライアンフ流。自らのアイデンティティーにこだわり中味をじっくりと進化熟成させていくやり方に、歴史と伝統を重んじる英国のプライドが垣間見れる。
今回のRSで最もこだわったのはエンジンだ。従来からの水冷並列3気筒DOHC4バルブ1050ccをベースにシリンダーやピストン形状、カムプロファイルやクランク、オイルラインなど合計105におよぶ新型パーツ採用によりピーク回転数は先代から1000rpm引き上げられ、最高出力は従来比10psアップの150ps(7%向上)、最大トルクは117Nm(4%向上)を実現。また、ギアボックスとアシスト&スリッパ―クラッチの改良により、シフトフィールと加速レスポンスも高められた。サイレンサーも軽量なチタン製ボディにカーボン製パーツがあしらわれ、見た目の高級感とともに3気筒らしいサウンドにもこだわった。
特徴的なデザインのアルミダイキャスト製ツインスパーフレームは従来型をベースとするものの、前後サスペンションはオーリンズ製のφ43mmNIX30 倒立フォークとTTX36 リンク式モノシッョクを備えるなど最新スペック。また、ブレンボ製ラジアルモノブロックキャリパーに装着されるパッドも初期制動に優れるタイプに強化され、新設計の10本スポークホイールにはピレリのディアブロスーパーコルサがOE装着されるなど盤石の足まわりが与えられている。
電子制御も大幅に進化した。昨年先行投入された新型ストリートトリプルRSと同様のシステムが搭載されているのが特徴で、ライド・バイ・ワイヤシステムは最大5種類のライディングモード(ROAD、RAIN、SPORT、TRACK、RIDER)から走り方や路面状況に応じて選択可能。Continental社との共同開発による最先端の慣性計測ユニット(IMU)が制御するコーナリングABSとトラクションコントロールによって、最高のパフォーマンスを安全に発揮することが可能となった。また、キーレスイグニッションシステムによる始動とステアリングロック機構の他、クルーズコントロールやUSB電源といったユーティリティも充実している。また、見やすさを追求した角度調整式のフルカラー5インチTFTディスプレイを搭載。手元のスイッチで3種類6パターンのレイアウトから好みの表示スタイルを瞬時に選択することができるのも魅力となっている。
なお、スタンダード仕様の「スピードトリプルS」も本国のラインナップには用意されているが、日本には未入荷となる。
トライアンフ スビードトリプル RS 試乗インプレッション
スペックだけではない
上質な走りこそ真骨頂
ピットに整然と並べられて出番を待つ新型スピードトリプルRS。黒で統一され研ぎ澄まされたボディワークと、眼光鋭い2眼ヘッドライトはさながら獲物を狙う猛禽類のようである。エンジン、シャーシ、電制のすべてが刷新されたフルチェンジと言えるRSは、見た目こそ従来型と大きくは変わっていないが、ひと口で言うと「走りのグレード感」がより高い次元へと進化していた。
全域がピークのような台形トルクカーブは健在のまま、さらにひと盛りした感じ。回転もさらに滑らかになっている。トライアンフ3気筒独特のザラッとしたワイルドな回転フィールも世代を重ねるごとに洗練され、新型ではよりクリアな雑味のない領域へと高められた。最高出力も従来型より10ps上乗せされるとともに、ピークエンドでのひと伸びが違う。
そして、コーナー立ち上がりでモリモリとくるトルクの塊感はトライアンフ3気筒ならでは。パワーバンドが広いのでシビアにギアを選ばなくても豪胆に加速していってくれるのが嬉しい。ここアルメリアのような本格的なサーキットでも、ストレート以外は2速オールで走れてしまうほどだ。ライダーとしては楽に速く走れるというわけだ。
足まわりの進化も著しく、特に前後オーリンズ製の高性能サスペンションが実にいい仕事をしてくれた。アップダウンが激しいテクニカルコースだったが、丘の頂上付近を加速しながら通過するときでも接地感を失わず、高速コーナーではネコ科動物のようなしっとり感で路面を捉えてくれる。今回のテスト用に装着されたピレリのディアブロコルサSPの豊かなグリップ力にも支えられ、存分にスポーツライディングを楽しませてもらった。新型RSには5種類のライディングモードとシンクロしたコーナリングABSやトラクションコントロールなどの最新電子デバイスが装備されていることもあり、安心感は絶大なものがある。最強のトラックモードで試乗したが、サーキット全力走行でもまったく問題のないレベル。ただそれは自分の腕が上がったからではない。視界の片隅でちらっと瞬くインジケーターの光によって、電子デバイスがサポートしてくれていることを思い出すのだ。
試乗前のブリーフィングでは、車重が3㎏減量され「より軽快さと俊敏さを増した」との説明があったが、自分としてはむしろトライアンフの最高峰スポーツモデルらしい、豪快な走りに魅せられた。欧米人ライダーはとかくアグレッシブさを強調したがる向きがあるが、そんなに攻め攻めで走らなくても楽しいのが良いところ。大排気量スリーシリンダーから溢れ出るトルク、そのゆとりがスピードトリプルRSの真骨頂と言っていい。
一般公道でも少しだけ乗れるチャンスがあった。官能的なトリプルサウンドに身を委ねながら、じっくりと乗り味を確かめつつ走ってみたが、あらためて上質な乗り味が心地よかった。圧倒的なトルクはストリートではクルージング時の余裕に、ハイグレードな足まわりは乗り心地の良さへとつながっている。大画面のTFTディスプレイの美しさは見ているだけでもリッチな気分になるし、各種電子デバイスの操作も左手のジョイスティックで直感的に行えるので馴染みがいい。
個人的に気に入ったのがクルーズコントロールとオプション装備のグリップヒーター。夕方肌寒い中では両手にじんわりくる温かさが嬉しかったし、ロングツーリングではなお快適だろう。疲れたらレインモードに切り替えて穏やかなキャラに仕立てることで、慣れない異国の地でもストレスなく走ることができた。
トライアンフは地道に改良を重ねてプロダクトの完成度を高めていくメーカーであり、そこに常に物事の本質を追求する英国人気質を感じる。新型RSもまさにその結実だ。走りのパフォーマンスが進化したことはもちろん、乗り手に伝わる上質さもバランスよく高められていたことが印象に残った試乗会だった。
トライアンフ スビードトリプル RS の詳細写真
SPECIFICATIONS – TRIUMPH Speed Triple RS
価格(消費税込み) = 未定
※表示価格は2018年3月現在
トライアンフの3気筒スポーツネイキッドの最高峰モデル。新型では出力アップとともに前後サスペンションにオーリンズを採用。電子制御もアップグレードし、さらなる進化を遂げた。
- ■エンジン型式 = 4ストローク 水冷並列3気筒DOHC4バルブ
- ■総排気量 = 1050cc
- ■ボア×ストローク = 79×71.4mm
- ■最高出力 = 110kW (150ps) / 10,500 rpm
- ■最大トルク = 117Nm / 7,150 rpm
- ■トランスミッション = 6速リターン
- ■サイズ = 全長2075mm× 全幅775 ×全高1,070mm
- ■車両重量 = 189kg
- ■シート高 = 825mm
- ■ホイールベース = 1,445mm
- ■タンク容量 = 15.5リットル
- ■Fタイヤサイズ = 120/70-17
- ■Rタイヤサイズ = 190/55-17
関連する記事
-
試乗インプレッション
トライアンフ タイガー800XCx
-
試乗インプレッション
トライアンフ スラクストン(2016)
-
試乗インプレッション
トライアンフ ボンネビル ボバー(2017)
-
試乗インプレッション
ローシートバージョンのトライアンフ ストリートトリプルR Lowが登場
-
試乗インプレッション
トライアンフ ストリートトリプルRS(2017)