2019年モデルでマイナーチェンジが施された新型ストリートツイン
- 掲載日/2019年01月18日
- 写真・文/小松 男 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
トライアンフ ストリートツイン 試乗インプレッション
取り立てて速いわけでは無いが、
見た目以上にスポーティなパッケージ
排気量1200ccのバーチカルツインエンジンを搭載するボンネビルT120系やスラクストンなどと比べ、900ccエンジンを搭載するストリートツインはエントリーモデルという位置づけであり、価格面においても100万円程度で購入できるため、登場するや世界中でヒットセラーモデルとなった。一方で一部のライダーからは物足りなさを感じるという意見も耳にすることはあったことも事実だ。新型では10馬力も出力が高められているので、その物足りなさが払しょくされたものか試乗前から期待をしていた。
基本的なディメンションなどは従来モデルを踏襲している新型ストリートツインは、シート高が760mmで相変わらず足つき性は高く、ビギナーや女性ライダーでも躊躇なく乗れるだろう。ただ身長175cm超の私の場合、シートの前の方に乗ると膝がエンジンの空冷フィンに当たり熱い、なのでやや後方に座る。するとおのずとハンドルが遠くなり、上半身は若干前傾した状態となる。これはこれでスポーツ志向の高いポジションとも言えるのだが、そうなるとステップ位置を変更したいという欲求に駆られてきた。
エンジンを始動し走り出す。270度クランクのツインエンジンは、低回転時には特有の鼓動感を味わうことができながら、高回転域までフラットなトルクを得られる。街中を走るならば3000~4000回転程度で小気味良くシフトアップしてゆけば、心地よくクルージングすることができ、5000回転まで回せば、飛ばしているイメージとなる。よほどでなければ6000以上回す場面はなく、レブリミットが作動する7500回転まで引っ張るような走りもしてみたが、通常の走行時ではそこまで使うことはないだろう。ただし、いざという時にそこまで回せるという余裕は、無いよりもあった方がいいことは間違いない。
新型では「ロード」と「レイン」というライディングモードを選べるようになり、マッピングとトラクションコントロールを調整するのだが、ドライ路面で変更しても大きな差は感じられなかった。それよりも総じてスロットル操作に対してのツキの頃合いが良く、若干ダルに思えるもののライドバイワイヤのセッティングによってあえて生み出された、この感触こそ新型ストリートツインに込められた美学なのだと思わせる部分だ。
ブレンボ製4ポッドキャリパーへの換装、それに伴い新型カートリッジフォークの採用など、足まわりも変更されているのもトピックスではあるが、シート構造が見直されており、長時間のライディングでも快適になった。こういった細かい変更点が積み重ねられ、従来モデルと比べて上質な乗り心地となっているのだ。
そのまま乗っても良し、カスタマイズを楽しむのも良し
長く付き合える相棒となる素質がある一台。
先にも述べたがストリートツインという存在は、昨今のネオクラシックブームとは一線を画すると思っている。ブームに乗ったリバイバル的な物ではなく、同じような道のりを歩んできたライバルとしてはヤマハSR400やカワサキW800などが挙げられるだろう。その中でもストリートツインは伝統を大切にするトライアンフだからこそ作れるモデルであり、モダンクラシックシリーズをトータルで考えてみると、その歩みたるや長くゆっくりとしたものだが着実に進化してきているものなのだ。それこそ半世紀近く前のバーチカルツインモデルを今乗るのは苦労をするだろうが、現代の道に合ったものが作られており、それを新車で購入できるというのはある意味幸せなことだと思う。
せかさせるということはなく、むしろワクワクさせてくれ、その中にスポーティな部分が垣間見えた新型ストリートツイン。ノーマルの状態で乗っても十分楽しめるモデルではあるが、タイヤ空気圧モニタリングシステムをはじめ、140種類以上ものアクセサリーが用意されれている点にも注目したい。一気に自分好みのスタイルへと仕立てても良し、また長い時間をかけてコツコツとカスタマイズを楽しむのも一興だ。オーソドックスであるがゆえに飽きることが少なく、バイクライフをより深く楽しめる相棒となってくれることだろう。
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