VIRGIN TRIUMPH | トライアンフ スラクストン(2016) 試乗インプレッション

トラインフスラクストンの画像
TRIUMPH THRUXTON

トライアンフ スラクストン(2016)

水冷化したツインの味わいとは
その進化の是非を追求する

トライアンフのラインナップでもっとも人気が高いカテゴリー「モダンクラシック」のバーチカルツインエンジンが水冷化された一報はすでにご存知のとおり。その新型エンジン発表とともに、ストリートツイン、ボンネビルT120、そしてスラクストン/スラクストンRが発表され、大いに話題を呼んだ。ハイエンドなスラクストンRよりもニュートラルな仕様のスラクストンに、英国モーターサイクルメーカーのどんな想いが注ぎ込まれているのか興味深く試乗したところ……「これぞ正常進化」と感嘆の声をあげたくなるほど高い完成度を見せつけてくれた。

トライアンフ スラクストン 特徴

トライアンフ スラクストン 写真

カフェレーサーを知り尽くす
英国メーカーだからこその完成度

トライアンフの人気カテゴリー「モダンクラシック」のボンネビルシリーズがフルモデルチェンジをはたしたのが2015年のこと。「ついに」と言うべきか、モダンクラシックモデルのエンジンが水冷化することとなったのだ。発表されたのは、ストリートツイン、ボンネビルT120、そしてスラクストンRの3モデル。いずれも先代モデルのデザインを踏襲し、基本的なスタイルはそのままにより流麗で現代風にアレンジされていた。

この新型スラクストンが発表されたのはこれら3モデルのすぐ後で、お察しのとおりスラクストンRをよりニュートラルにした仕様になっている。エンジンは水冷並列2気筒 SOHC 8バルブで、最大トルクはR同様、ストリートツインやT120を上回る112Nm/4,950rpmというセッティングとなっている。違いはそのフットワークで、ショーワ製ビッグピストンフロントフォークにオーリンズ製リアショック、ラジアルマウント式ブレンボモノブロックブレーキキャリパーを標準装備とするRに対して、リザーバータンクのないスタンダードなプリロード調節式ツインショックに倒立フロントフォーク、前後とも2ピストンフローティングキャリパー(ABS機能付き)となっている。価格も159万円と、179万円のRより抑えられている。

トライアンフ スラクストン 写真

先代の空冷スラクストンと比べると、スペックだけ見比べても違いは明らかだ。まずエンジンだが、DOHCからSOHCへと変わり、最大トルクも71.5Nm(7.3kg-m)に対して112Nmと、大幅に向上。そしてライド・バイ・ワイヤ・システム(電子制御式燃料噴射)仕様となり、トラクションコントロール機能にABS機能、さらには「ROAD」「SPORTS」「RAIN」という3モードのエンジンモード切り替え機能まで備わる。

様変わりしたマシンビジュアルにも心憎い演出が多々盛り込まれている。フューエルタンクとシート、メガホンマフラー、ヘッドライトステー、そしてショート化された前後フェンダーはスラクストンモデルのオリジナルとなっている。復活したルーカススタイルのテールライト、フォークブーツも見逃せないポイントだが、個人的にはフューエルタンクにモンツァキャップが標準装備となっているところに身悶えしてしまう。1950~60年代の英国カフェレーサーブームに登場したクラシカルなデザインのタンクとキャップを備えている点に、トライアンフの自国モーターサイクル史への誇りと愛情を感じずにはいられない。バーエンドミラーも思わずニヤリとするところだ。

それでいて、バイクとしては現代のロードシーンを想定した仕様になっているのが面白い。セパレートハンドル & バックステップというカフェスタイルを取り入れつつも、ステップはややニュートラルな位置にあり、セパレートハンドルもトップブリッジに対してアンダーマウントとされながら、ハンドル自体はトップブリッジよりも高い場所にあるので、実際に跨ってみると思っていたよりもきつくない。これなら街乗りはもちろん、ちょっとしたツーリングに出かけても腰を痛めるなんてことはなさそうだ。

トライアンフ スラクストン 写真

クラシックなカフェレーサースタイルを踏襲するならば、前後ホイールは18インチとなる……昔のスタイルを知る人ならばそう言うところだろう。しかしこの新型スラクストンはスポークホイール仕様ながら、サイズは前後17インチとなっている。これは現代のロードスポーツバイクに多用されるサイズで、モダンクラシックでありながらもバージョンアップを遂げた水冷エンジンに合わせて、スポーティにストリートを駆け抜けることをイメージしたがゆえの仕様なのだろう。

スタイルはクラシカルなカフェレーサーながら、現代のロードスポーツとして仕上げられた新型のマシン。それでは、実際のエンジンフィーリングやライドフィールはどんなものか。ツインエンジン最大の魅力は味わい深さにあり、それが水冷化したことで損なわれているとしたら、本末転倒である。その具合を探るべく、街へと走り出した。

123

バイク買取&乗り換えガイド