トライアンフ サンダーバードコマンダー
- 掲載日/2015年08月19日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文/佐川 健太郎 写真/山家健一 動画/倉田昌幸 衣装協力/HYOD
世界最大排気量の並列2気筒を誇る
カスタムクルーザーの旗艦モデル
『サンダーバードコマンダー』は、ベースモデル『サンダーバード』の排気量を拡大した上級バージョンで、都会派カスタム『サンダーバードストーム』や、ラグジュアリーツアラー『サンダーバードLT』とともにクルーザーレンジの一角を成す派生モデルである。
同じカスタムでもサンダーバードコマンダーはメッキパーツを多用し、カバードフォークやストレートマフラーを採用するなど、昔ながらのクラシカルな外観に仕上げられているのが特徴だ。ちなみに“コマンダー”とは“司令官”の意味で、フラッグシップモデルに付けられることが多い。つまり、肝入りのモデルということだ。今回は、英国が誇るそんなビッグクルーザーの魅力に迫る。
トライアンフ サンダーバードコマンダー 特徴
最新エンジンと進化したシャシー
クラシカルな外観に走りの性能が宿る
英国トライアンフが誇る市販車世界最大のパラレルツインエンジンを搭載するクルーザーがサンダーバードシリーズである。スタンダードモデルのサンダーバードより100cc大きい排気量を持つ3兄弟『サンダーバードストーム』、『サンダーバードLT』、『サンダーバードコマンダー』の中で最も正統派かつクラシカルな雰囲気を持つのがこのサンダーバードコマンダーである。
水冷並列2気筒DOHC 4バルブの排気量1,699ccエンジンは、ロングストロークと不等間隔燃焼タイミングの270°クランクの組み合わせにより、味わい豊かな鼓動感を楽しめるのが特徴だ。鍛造ピストンに、ツイン・バランス・シャフト、オートマチック・ディコンプレッサー、センター・カム・ドライブ、インテグレーテッド・トーションダンパーなどの最新装備を与えられ、マルチシーケンシャル電子燃料噴射装置や6速トランスミッションの採用で、クラシカルな雰囲気にもかかわらず、現代的な走りの性能を有していることもサンダーバードシリーズの魅力である。ちなみに駆動系にはベルトドライブを採用し、メンテナンス性と耐久性、静寂性を向上させている。
ライディングポジションに関しては、快適性を重視したプルバックハンドルに変更し、シートもワイド化され、肉厚をスタンダードモデルより30mmアップ。フォームも二重構造とし、ランバーサポートを追加するなど、座り心地と腰回りのサポート性が高められている。また、クロームメッキのアルミダイキャストフットボードを装着。アジャスタブルシーソー式シフトレバーを組み合わせるなど、ロングツーリングでの快適性も確保している。
フレームも新設計となり、ハンドリングと乗り心地のさらなる向上を目指して、おもにフロントまわりのジオメトリーを変更。足まわりも、フロントにはカバー装備の47mm径ショーワ製フォークを採用、リアには同じく5段階プリロード調節付きのツインショックの組み合わせ。ブレーキは、フロントにニッシン製4ポットキャリパー&310mm径フローティングディスク、リアにはブレンボ製シングルキャリパー&310mm径ディスクを装備する。ABSも標準装備し、安全性も高められている。さらにフロント140/75-17、リア200/50R17のワイド扁平タイヤにダイヤモンドカットのアルミキャストホイールを組み合わせて、迫力あるスタイリングを演出するなど、フラッグシップに相応しいグレード感も魅力である。
トライアンフ サンダーバードコマンダー 試乗インプレッション
心地よい鼓動感に浸りつつ
重厚かつスポーティな走りを楽しめる
サンダーバードコマンダーは、トライアンフのクルーザーレンジの中で最もクラシカルな外観をまとったカスタムテイストあふれるモデルである。もともとロー&ロングなシルエットは一直線に伸びたマフラーによってさらに伸びやかに、陽光を受けてキラキラ光るエンジンパーツもグレード感たっぷり。迫力ある丸目2灯ヘッドライトもトライアンフ伝統のエレメントだ。
巨大な“塊”感のある車体は、さぞかし重いだろうと思いきや、取り回してみると意外にそうでもない。スペック的にも車重350kgと、1,700cc級のフルサイズクルーザーとしては軽いほうだ。同シリーズの派生モデルでツーリング仕様のサンダーバードLTと比べても、明らかに取り回しは楽。もちろん軽々というわけにはいかないが、気合いで解決できるレベルである。
トライアンフが誇る世界最大の並列2気筒エンジンには、1本が900cc近くもある特大のシリンダーが、しかも2本も入っている。これが270°ずれる形で爆発のリズムを刻むわけだから、そのパルス感は凄いものがある。セル一発で目覚める最初の「ズドン!」が気持ちいい。空吹かしすると、周囲の空気が震えるほどのパルス感。並列2気筒エンジンは平滑で味がないと思っている人も多いが、それは大きな誤りだ。排気量と爆発タイミングというレシピ次第でフィーリングが激変するのも、パラレルツインのいいところ。ぜひ一度、実物を試していただきたいと思う。
話は戻って、エンジンは極低速から粘りがあり、ハンドル切れ角の大きさも相まってUターンも余裕でこなす。一番おいしいのはミッドレンジ。あえてちょっと高めのギアを選んで街を流してみると、歯切れいい鼓動とともに気持ちのいいグライド感を楽しめる。それでいて、フューエルインジェクションで緻密に制御されたこの水冷DOHCエンジンは、レブリミット直前の高回転までストレスなく回ってくれるのだから、素性の良さを感じさせる。
ハンドリングには巨体に似合わぬ軽快感があり、思ったとおりのラインを描けるニュートラルステアが特徴。ニューフレームと、もともと持っている優れたディメンションの恩恵により、低速でのハンドルの切れ込みはほとんどない。車重が軽いこともあるが、サンダーバードLTに比べても、身のこなしは軽やかだ。
サスペンションは、クルーザーとしてはストローク感があり、ソフトかつ適度なコシ感もあって、快適さとスポーティな乗り心地を両立している感じだ。前後合わせてトリプルディスクを装備するブレーキもタッチに剛性感があり、コマンダーの巨体をしっかり止めてくれるし、ABS装備ということで安心感もある。
大きなタンクオンメーターやハンドルポストの重厚なメタル感といい、ライダーからの視界にも高級感があって気持ちいい。大船に乗った気分で堂々と街を流し、悠々とハイウェイをクルーズする。走りの性能にも裏打ちされた、まさに英国艦隊の旗艦と呼ぶに相応しいモデルである。
トライアンフ サンダーバードコマンダー の詳細写真
- 【前の記事へ】
トライアンフ タイガー800XCx - 【次の記事へ】
トライアンフ アメリカLT
関連する記事
-
試乗インプレッション
トライアンフ サンダーバード LT
-
試乗インプレッション
トライアンフ サンダーバード ストーム
-
試乗インプレッション
トライアンフ サンダーバード
-
試乗インプレッション
トライアンフ タイガー800
-
モデルカタログ
サンダーバードコマンダー(2014-)
-
試乗インプレッション
トライアンフ デイトナ675
-
トライアンフ購入ガイド
トライアンフ サンダーバードコマンダー
-
試乗インプレッション
トライアンフ タイガー800XCx