トライアンフ サンダーバード LT
- 掲載日/2014年05月16日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文/佐川 健太郎 写真/山家健一 動画/倉田昌幸 衣装協力/HYOD
世界最大パラレルツイン搭載の
英国流ラグジュアリークルーザー
トライアンフのクルーザーラインに新たなモデルが加わった。「サンダーバードLT」はベースモデルの排気量を拡大した上級バージョン「サンダーバードストーム」の派生モデルである。ストームがクールで都会的なイメージであるのに対し、LTはスクリーンやパニアケース、バックレストを標準装備するなどタンデムでのロングツーリングにも対応した本格的クルージングツアラーに仕上げられているのが特徴だ。トライアンフ伝統のパラレルツイン(並列2気筒)エンジンを搭載する英国流クルーザーの魅力をとくと拝見してみたい。
トライアンフ サンダーバード LT 特徴
旅の装備が充実した
快適ツーリング仕様
市販車世界最大となるパラレルツインを搭載するトライアンフの旗艦クルーザーが「サンダーバードLT」である。LTとはライトツーリング(Light Touring)の略で、思い立ったときに気軽にツーリングに出かけられる仕様とのこと。ワンタッチで取り外しできるウインドスクリーンや本革製パニア、パッセンジャー用バックレストなど、旅に必要となる装備が最初からミニマムで備わっているのが特徴だ。
水冷並列2気筒DOHC 4バルブ1699ccエンジンは、ロングストロークと不等間隔燃焼タイミングの270°クランクの組み合わせにより、味わい豊かな鼓動感が楽しめるのが特徴。メカニズム的にも、鍛造ピストンにツイン・バランス・シャフト、オートマチック・ディコンプレッサー、センター・カム・ドライブ、インテグレーテッド・トーションダンパーなど最新装備が与えられ、マルチシーケンシャル電子燃料噴射装置や6速トランスミッションの採用により、クラシカルな雰囲気にもかかわらず現代的な走りの性能を有していることもサンダーバードシリーズの魅力である。ちなみに駆動系にはベルトドライブを採用し、メンテナンス性と耐久性、静寂性を向上させている。
ライポジもより快適性を重視したプルバックハンドルを採用するとともに、シートもワイド化され肉厚をベースモデルより30mmアップ。フォームも二重構造とし、ランバーサポートを追加するなど、座り心地と腰回りのサポート性が高められた。
細かい部分だが、実はフレームも新設計となり、ハンドリングと乗り心地の更なる向上を目指して主にフロントまわりのジオメトリーが変更されている点も見逃せないポイント。足回りも、フロントにはシュラウド装備のφ47mmショーワ製フォークを採用、リヤには同じく5段階プリロード調節付きのLT専用ツインショックの組み合わせ。さらにブレーキはフロントにはニッシン製4ポットキャリパー&φ310mmフローティングディスク、リヤにはブレンボ製シングルキャリパー&310mmディスク、ABSが標準装備されるなど充実ぶりがうかがえる。
また、イギリスのエイボンと共同開発した世界初のホワイトウォール・ラジアルタイヤや56本ワイヤースポークを採用するなど、クラシカルかつエレガントなスタイリングへのこだわりも、LTならではの魅力となっている。
トライアンフ サンダーバード LT 試乗インプレッション
質実剛健な作りと
走りの良さが魅力
LTの魅力としてはまず、質実剛健な作りが挙げられる。巨大なブロックのようなエンジンはもちろん、フレームや足回りなどマシン全体がカッチリしっかりと作られている。トライアンフの中では最もラグジュアリーなクルーザーモデルではあるが、華美な装飾などはなく、最近流行りの電子デバイスも付いていない。先に挙げたLT専用装備も旅での実用性を重視した堅牢な作りが印象的だ。
エンジン特性も節度がある。Vツインと比べると大人しめの印象があるパラレルツインだが、実際に乗ってみると印象はうって変わる。1700cc近い排気量と不等感覚で爆発する270度クランクが紡ぎだす鼓動感は格別で、Vツインに勝るとも劣らない味わいがある。むしろ一発一発の輪郭はくっきりとしている感じさえある。溢れるトルクを生かしながら、ちょっと高めのギヤで街を流しつつ、そのソリッドな鼓動感を楽しむのが楽しい。その一方で、高回転までスムーズに吹け上がるパワー感や、スロットルを開けたときの俊敏なレスポンスなどは水冷DOHCならでは。何速ギヤからでも400kg近い巨体を軽々と引っ張っていく。LTのエンジンフィールをズボンに例えるなら、履きこなしたGパンというよりは、プレスの効いたスラックスのようだ。真面目で硬派な感じが、トライアンフの作るクルーザーの特長かもしれない。
ハンドリングもカチッとしている。通常、大型クルーザーはその性格上、乗り心地や直進安定性を重視したハンドリングに仕上げられていることが多い。ゆったりと快適に距離を稼げる一方で、コーナリングは苦手だったりすることも。ただLTの場合は、ハンドリングがとてもいい。これはトライアンフのクルーザー全般に言えることだが、快適性にスポーティさも兼ね備えているのだ。サスペンションも単なるクッション性重視のフカフカなタイプではなく、コシ感もありストローク量も豊富で、ワインディングでもけっこう積極的な走りを楽しめる。前後16インチのファットタイヤなので、倒し込みはゴロンとしているが意外と軽快でスムーズ。このクラスとしてはホイールベースも短めということもあり、見た目以上に旋回もコンパクトだ。Uターンなどの低速ターンでも、クルーザーにありがちなハンドルの切れ込みや重さはほとんどなく、どんな速度レンジでもニュートラルなハンドリングが印象的である。エンジンレイアウトの妙なのか、取り回しも重量の割に軽く感じる。また、前後で3枚揃えのφ310mmディスクブレーキも、タッチが分かりやすくかつ強力。ABS標準装備なのでいざというときも安心感だ。
安心と言えば、シートが低めなのも良い。平均的な日本人なら足着きに不安はないはずだし、ハンドル位置も後退しているので割とコンパクトに乗り込める。それでいて、シートクッションは厚みが増していて、まるで4輪高級車のような極上の座り心地。特筆すべきは新設されたランバーサポートで、体重が集中する仙骨辺りを支えてくれるため、ロングランでも疲れ知らずだ。
LTには驚くようなハイテク装備があるわけではなく、デザインも伝統的でオーソドックスだが、そこがまた安心感でもあり良さでもある。世界最大排気量のパラレルツインがもたらす圧倒的なゆとりと包容力。そして、トライアンフならではの走りの性能。信頼できる旅の相棒として、末永く付き合っていけるモデルだと思う。
トライアンフ サンダーバード LT の詳細写真
SPECIFICATIONS –TRIUMPH Thunderbird LT
価格(消費税込み) = 210万円
※表示価格は2014年5月現在
市販車最大のパラレルツインエンジンを搭載するプレミアム・クラシック・クルーザー。トライアンフの旗艦モデルに相応しい豪華装備とクラストップレベルのシャシー性能による確かな走りが魅力。
- ■エンジン型式 = 水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブ
- ■総排気量 = 1699cc
- ■ボア×ストローク = 107.1×94.3mm
- ■最高出力 = 94ps/5,400rpm
- ■最大トルク = 156Nm/2,950rpm
- ■トランスミッション = 6速
- ■サイズ = 全長2,546×全幅960×全高1,500mm
- ■車両重量 = 390kg
- ■シート高 = 700mm
- ■ホイールベース = 1,664mm
- ■タンク容量 = 21リットル
- ■Fタイヤサイズ = 150/80-16
- ■Rタイヤサイズ = 180/70-16
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