トライアンフ サンダーバード ストーム
- 掲載日/2012年11月15日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文/佐川 健太郎 写真/岡 拓 動画/MOTOCOM 衣装協力/HYOD
クールな外観と走りが魅力の
英国発パワークルーザー
ビッグクルーザーと言うと、ハーレーダビッドソンを思い浮かべる人が多いと思うが、実はこれに対抗する英国車がある。トライアンフのサンダーバードだ。ロー&ロングの威風堂々としたスタイルはまさしくクルーザーの伝統的イメージだが、ハーレーのVツインに対してこちらは並列2気筒でアイデンティティを主張する。そのサンダーバードの排気量を拡大し、よりパワフルに走りの性能をアップ。そして2灯ヘッドライトやブラック塗装、低いハンドルバーを装備することで、よりクールにセンスアップされた外観をまとった上級モデルが、今回試乗した『サンダーバード ストーム』である。
トライアンフ サンダーバード ストーム 特徴
排気量拡大とフェイスリフトで
パワーと存在感をアップグレード
サンダーバード ストームは、標準モデルのサンダーバードをよりパワフルかつマッチョにグレードアップした上位機種である。注目すべきはエンジンで、水冷 DOHC 270度クランク並列2気筒エンジンは、ボアを 103.8mm から 107.1mm に拡大し、排気量を 1,699cc にアップ(スタンダードは 1,597cc )している。これにより最高出力も 12ps 上乗せの 98ps/5200rpm へと大幅にアップ。最大トルクも 146Nm から 156Nm/2950rpm へと増強されるなど、クラス最強レベルのパフォーマンスを実現している。
シャーシは基本的にサンダーバードと同様で、スチール製クレードル構造のフレームに極太 47mm 正立フォークと5段階プリロード調整機構付きツインショックの組み合わせ。機構的にはコンベンショナルだが、ブレーキシステムにはフロントに大径 φ310mm ダブルディスクと4ポットキャリパー、リアにも同じく φ310mm シングルディスクと2ポットを組み合わせるなど充実。さらに ABS を標準装備とすることで強力なパワーと 340kg に迫る車重を受け止め、安全に減速させるための、信頼できる足回りを備えている。
デザイン面では、トライアンフのアイデンティティとも言える丸型2灯ヘッドライトを採用。ロケットスリーや先代スピードトリプルにも共通するアグレッシブな雰囲気を強調したフロントビューが特徴だ。また、ハンドルバーもクルーザー風のプルパックタイプから、低く構えたコンチネンタルタイプに変更され、よりスポーティなライディングポジションを実現。車体色にはジェットブラック、マットブラック、マットグラファイトが用意され、ブラックアウトされたエンジンとの組み合わせにより、クールでワイルドな印象にまとめ上げられている。
このビッグトルクを支えるタイヤは、フロント 120/70-19、リア 200/50-17 のワイドサイズに対応したメッツラー『マラソン』をチョイス。サンダーバードと共通の5スポーク鋳造アルミホイールやスラッシュカットの左右2本出しストレートマフラー、多機能オンボードコンピュータ内蔵のタンクマウント型メーターを採用するなど、英国トライアンフらしいスマートな造形美もサンダーバードシリーズの魅力になっている。
トライアンフ サンダーバード ストーム 試乗インプレッション
巨大トルクに巨体が舞う
クルーザー随一のハンドリング
爛々と光る2つ目と全身黒ずくめのワルそうなシルエット。サンダーバードストームは、ダークヒーローが乗るマシンのようである。真面目な感じのスタンダードモデルにはない一面だ。カラーリングやちょっとしたデザイン変更で、こうも雰囲気が変わるものかと関心してしまう。
実際に乗り味もだいぶ違う。まずライディングポジションだが、ハンドルバーが低く前方にセットされているため、スタンダードに比べると上体もやや前傾気味になる。700mm のシート高により、足着き性は非常に良いが、シート自体がライダーを後ろ寄りに座らせる設定のため、ハンドルまでの距離感はけっこうなもの。欧米人の体格を想定した大柄なライディングポジションと言える。
一番の大きな違いはエンジンだ。スタンダードからして十分なトルクの持ち主だったが、排気量が 102cc 増えて約 1,700cc の心臓を持つに至り、その力量たるやモンスター級。ゼロ発進でラフにアクセルを開けると、路面によっては簡単にホイールスピンしてしまうほどだ。トライアンフには、以前日本にも導入されていた3気筒 2,300cc の 『ロケット III 』 というメガクルーザーがあるが、それに勝るとも劣らぬ加速感だ。
余談だが、加速感には大きく2通りあって、ひとつはスーパースポーツの高性能直4エンジンに代表される、回転馬力によって絞り出される上昇感と呼べるもの。一方、ストームのそれは地面を蹴り出す巨大なトルクの塊のような爆発力であり、ビッグピストンを持つ大排気量ツインならではの醍醐味である。
加えて、270度クランク独特の弾けるような鼓動感も心地よく、ただ街を流しているだけで楽しめる。2,000rpm も回していれば十分で、早めにシフトアップしつつ、ひとつひとつのパルスを感じ取りながら走るのが気持ちいい。エンジンを味わうのはVツインだけの特権ではないことを、ストームは教えてくれる。ちなみに、パルス自体は良くも悪くもハーレーのそれより端正で振動も少ない印象だ。
特筆すべきはハンドリング良さ。通常、クルーザーモデルはフォークオフセット量や前輪径が大きいため、低速域でハンドル操作が重くなったり切れ込み傾向が出たりする場合があるが、ことサンダーバードシリーズにはそれがほとんどない。そのため、渋滞路などでの極低速バランスも巨体の割にしのぎやすく、交差点の右左折のようなシーンでも当て舵するなどの気を遣うことがない。直進安定性が良いのは当然として、低速ターンからワインディングの高速コーナーまで、あらゆる速度域で同じようにニュートラルなステアリング特性なのだ。
ライントレースも正確で、左右へのバンキングも軽やかなので、ついつい調子に乗りすぎるとすぐにステップを擦ってしまう。排気量アップによるトルク増大効果も手伝って、スタンダードモデルより軽くなったような感じさえするから不思議だ。このクラスのビッグクルーザーとしては、抜きん出たスポーティさを持ったモデルと言えるだろう。
ブレーキもコントローラブルで、コーナー進入でフロントブレーキを使い、フォークを沈めて曲がりやすい姿勢を作ることも自然にできるし、ダブルディスクのおかげでリアブレーキに頼らなくても十分な減速ができる。ABS があるので、いざという時にはこの巨体でも安心して全力制動にトライできるのは心強い。
高速道路では、エンジン回転数を上げずとも速い巨大エンジンのおかげで、流れに乗った巡航ペースであればすこぶる快適。サスペンションはしっかりと剛性感があり、それほどストローク感はないものの、路面からのショックは問題なく吸収してくれるし、ライディングポジション的にも腰が曲がりすぎないため疲れにくい。ただし、リアシート形状を見る限り、タンデムはあまり得意とは言えないだろう。
こうして、あらためてサンダーバードに乗ってみると、同じクルーザーでもハーレーとは全く異なるキャラクターが見えてくる。それはエンジンのテイストであり、ハンドリング特性あり、デザインの方向性などすべてに表れている。そして、ストームはより独自性を色濃く打ち出したモデルだと思う。人の真似が嫌いな英国らしい、誇りと頑固さを感じさせる1台だ。
トライアンフ サンダーバード ストーム の詳細写真
SPECIFICATIONS –TRIUMPH THUNDERBIRD STORM
価格(消費税込み) = 189万円
並列2気筒エンジンを搭載するトライアンフのビッグクルーザー『サンダーバード』の排気量をさらにアップし、カスタムテイストを盛り込んだハイパフォーマンスモデル。
- ■エンジン型式 = 水冷DOHC 並列2気筒 270度クランク
- ■総排気量 = 1,699cc
- ■ボア×ストローク = 107.1×94.3mm
- ■最高出力 = 98PS(72kW)/5,200rpm
- ■最大トルク = 156Nm/2,950rpm
- ■トランスミッション = 6速
- ■サイズ = 全長2,340×全幅880×全高1,120mm
- ■車両重量 = 339kg
- ■シート高 = 700mm
- ■ホイールベース = 1,615mm
- ■タンク容量 = 22リットル
- ■Fタイヤサイズ = 120/70 R19
- ■Rタイヤサイズ = 200/50 R17
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