特別装備が与えられたアドベンチャーモデルの限定バージョン「タイガー1200デザートエディション」を試乗インプレ
- 掲載日/2020年09月24日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文・写真/小松 男
美しいボディワークから生み出されるしなかやな乗り心地は大地が続く限りどこまでも走りたくなる衝動を駆る
トライアンフのアドベンチャーモデルであるタイガーシリーズの頂点となるタイガー1200に限定バージョンとして加わったタイガー1200デザートエディション。そのネーミングからも伝わるように、地球上でもっとも過酷な砂漠という地をインスパイアして作られた一台であり、カラーパターンやエキゾーストシステム、シフトアシストなどが装備された特別仕様だ。長年熟成されてきたタイガー1200の乗り味は、ライバルを凌駕するほど上質なものであり、さらに道なき道へと誘う運動性能を誇るものである。そんなタイガー1200デザートエディションの詳細を紹介してゆく。
タイガー1200デザートエディション 特徴
アドベンチャーモデルのハイエンドタイガーはキャラクターを修正しながら進化を繰り返してきた
一世紀を大幅に超えるとても長いトライアンフの歴史を遡ってみると、タイガーというネーミングが初めて採用されたのは、今から84年前の1936年のことだと分かる。当時はトライアンフ社の首脳陣交代に伴い、アリエル社から優れた技術者であるエドワード・ターナーが移籍してきたタイミングであり、トライアンフのさらなる販売向上を目論み、タイガー70/80/90の3モデルをマーケットに投入したことが始まりだった。軽量かつスポーティな初代タイガーシリーズは成功を収めた上、ISDT(現在のISDE)をはじめとしたエンデューロレースなどで輝かしい成績を収め、トライアンフはオフロードでも強いことを世界に知らしめた。しかしその後、日本車の台頭により一時トライアンフは窮地に立たされる時代を迎えることとなった。
80年代に入り、トライアンフを買収した実業家のジョン・ブロアは新たにヒンクレーに生産工場を建設し、ニューモデルの開発に着手し始める。そして90年代初頭から、かつての名機の名前を用いた新型車を次々と発表して行くのだが、その中にタイガー900の名もあった。3気筒エンジンを採用したタイガー900は、欧州市場において人気の高いデュアルパーパスモデルとして位置づけられ、瞬く間に人気を博すことになる。2000年代に入るとデュアルパーパスモデルは、アドベンチャーモデルとしてカテゴライズされるようになり、マーケットの争いは過熱していった。その中において、2007年にモデルチェンジしたニュータイガーは、オンロード性能を高められたモデルとなっていた。2010年にはミドルラインのタイガー800が追加され、その後もタイガーシリーズはオンロードツーリングに根差すモデルやオフロード性能を引き上げたモデルなど個々を差別化させながら、さらなる充実が図られてゆく。そして最新の限定モデルとして登場したのが、タイガー1200デザートエディションである。
スポークホイールを採用していることからも分かるように、タイガー1200XCA系の流れからなるモデルであるが、特別仕様でありながらも価格はタイガー1200XCAの283万7700円に対し、タイガー1200デザートエディション265万円と20万円近く低い設定となっている。そこにどのような差があるのかを探っていくことにしよう。
タイガー1200デザートエディション 試乗インプレッション
超豪華すぎるほどの装備でありながらも価格を抑えてきたことにあっぱれ
エンジン形式及び出力&トルク、前後タイヤ径、シート高などのスペックは、すべてタイガー1200XCAと同じとなっている。全高、全幅が100mmずつ、車重が2kg、タイガー1200デザートエディションの方が低い数値となっているのは、スクリーンの高さの違いと、フォグランプの有無によるものだと私は推測する。外見上の違いと言えば特別仕様のカラーリングとロゴ、オフィシャルの商品紹介にはArrow製サイレンサーとトライアンフシフトアシストが記載されているが、タイガー1200XCAにも装備されている。と、ここで気づいたのは、タイガー1200XCAからの派生ではないこと。実はタイガー1200デザートエディションというのは、日本では現在のラインナップにない『タイガー1200XCX』というモデルをベースに、手が加えられた一台なのである。
巨大とも言える体躯は、乗る者を選ぶように見えるが、それも快適な長旅を楽しむためのゆとり。大きく足を上げて跨りエンジンを掛け、走り出す。まずは市街地、やはり大柄な車体のため入り組んだ狭い道を入っていく際には気を使うが、ステアリングをしっかり切ることを意識しながら扱えば問題はない。低回転域からトルクがあるので、そこを上手く使えば細かいコーナーもスムーズにパスできる。高速道路は独壇場だ。電動スクリーンを上げれば走行風は気にならないし、クルーズコントロールを使えば延々とどこまでも走っていける気になる。6000回転以上引っ張るとさらにパワー感を得られること、電子制御式のWP製サスペンションの動きがどんなステージでもしっかりと路面状況を伝えてくれることから、オンオフ問わずスポーツライディングの性能も高くまとめられている。
いつもよりも長めの期間テスト車両を借り、遠出もしてきたが、どれだけ乗っても飽きさせず、さらに毎日使いたくさせてくれた。車両の特性自体は、タイガー1200XCAと基本的には変わらず、それでいながら価格が抑えられているので、お得感がある。少しでも浮いた費用は、ケース類の購入に回すと良いだろう。それはこのバイクに乗ると、おのずと旅へと誘ってくるからであり、その欲求を満たすためには、純正ケース類は是非とも装備しておきたいアイテムだからだ。
大型アドベンチャーモデルは熾烈な競争が繰り広げられてきたマーケットだが、ライバルとは明確に異なるキャラクターを持ち、それでいながらまんべんなく高い性能を楽しむことができる。肝となっているのは、トライアンフならではの三気筒エンジンであり、そこにしっかりと適正チューニングされたパーツが組み合わされていることで、独自の世界観、そして高い運動性能を引き出すことができているのだ。出先でライバルモデルが横に並ぶと、それに乗るライダーは興味を示しタイガー1200デザートエディションの事を覗いてくるのはとても愉快であり、その視線を受けながら颯爽と走り去ると、なんとも優越感に浸れるものだ。もしアドベンチャーモデルを選ぼうとしているのであれば、タイガー1200デザートエディションも試乗してみることをお薦めする。
タイガー1200デザートエディション 詳細写真
関連する記事
-
特集記事&最新情報
TOWARD WEST-ALL NEW TIGER1200