【トライアンフ タイガー1200ラリー試乗記】アドベンチャー最高峰を狙う新世代マシン、ダートでの扱いやすさは3割増だ
- 掲載日/2022年05月18日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文/佐川 健太郎 写真/渡辺 昌彦
タイガー1200ラリープロ / ラリーエクスプローラー 特徴
新設計3気筒エンジンに25kg軽量化
従来モデルのタイガー1200XR/XCから4年ぶりのフルチェンジとなり名称も変更された新型タイガー1200シリーズ。まず注目したいのはエンジンだ。排気量は従来の1215ccから1160ccへとコンパクト化されたが、ピークパワーは9psアップの150ps(9,000rpm)を実現。新開発T-PLANEクランクの採用による不等間隔の点火サイクルがトルクフィールを向上させている。また、ショーワ製セミアクティブ・サスペンションやブレンボ製 モノブロックキャリパーを全モデルに装備するなど足まわりも大幅にアップグレード。さらにトータル的な見直しにより25kgの大幅な軽量化を実現した。
電子制御も進化した。最大6種類のライディングモードは最新の6軸IMU(慣性計測ユニット)によってスロットルレスポンスやABS&トラコン介入度、サスペンションを調整することで、あらゆる走行状況でライダーをサポートしつつ最適な走りを実現している。
新型タイガーシリーズは4モデル構成となっている。オンロードに特化したGT(ジーティ)と、よりオフロード性能を高めたRally(ラリー)の大きく2タイプがあり、それぞれに2グレードが用意されている。スタンダードモデルの「GTプロ」には前後19/18インチのキャストホイールを採用。一方「Rally プロ」には前後21/18インチのワイヤースポークホイールとロングストロークのショーワ製セミアクティブ・サスペンションを採用。また、上級モデルの「GTエクスプローラー」と「Rallyエクスプローラー」には大容量30Lタンクと死角の危険を検知する「ブラインドスポットレーダーシステム」を初搭載するなど、安全性と快適性がさらに高められているのが特徴だ。
タイガー1200ラリープロ / ラリーエクスプローラー 試乗インプレッション
Tプレーンの鼓動が路面をつかむ
最初に試乗したのはオフロード向け上級モデルのRallyエクスプローラー。会場となったオフロードコースは朝からの雨でマディ。だいぶ滑りやすい状態だ。路面コンディションは嬉しくはないが新型をテストするには絶好の機会かも……。
見た目は最高峰マシンらしく威風堂々。張り出した30Lタンクと張り巡らされたガード類に圧倒される。エッジの効いたデザインにフロントホイールも21インチ化され足も長くなって、いかにも「オフロード走ろうぜ!」というオーラがにじみ出ている。
その迫力にやや押されつつ跨ってみる。車体がスリムにシート前方が絞り込まれていることに加え、試乗車にはオプションのローシートが装備されていたので足着きも安心できるレベル。そして、やはり軽さの恩恵は大きい。新型はトータルで25kgも軽量化されているが、これはパニア2個分の重量に匹敵するのだとか。マシンの取り回しやスタンドを払うだけで軽さは感じられる。
低く唸るようなエンジン音は紛れもないトライアンフ3気筒ではあるが、新型は音質がさらにワイルドになった。新開発のTプレーン3気筒エンジンの特徴は不等間隔の点火サイクルにある。音にすると「ドドン・ドーン」で、従来型の等間隔クランクに比べて鼓動感が強い。路面を捉えて後輪をグリップさせる、いわゆるトラクションに優れているのだ。低中速域での2気筒のようなトルクフィールがダートでは扱いやすく、アクセルを開けていく高速域では4気筒的な伸びやかな加速も味わえる。つまり、2気筒と4気筒それぞれのメリットを併せ持っているのだ。
ハンドリングも向上した。25kgの軽量化だけでも凄いことだが、さらに重量配分が最適化され、より低重心かつフロント寄りになったのがポイント。両サイドへ振り分けられたツインラジエターはライダーへの熱を抑えるだけでなく、エンジン搭載位置を前寄りにしつつ前輪と車体とのクリアランスを稼ぐことで走破性も高められた。フレームの軽量化に加え、スイングアーム&シャフトドライブの改良によって足まわりが軽量化されていることも大きい。これは滑りやすい路面で逆によく分かったのだが、車重が軽くなり特にパネ下が軽減されたおかげで路面追従性が良くなった。パワースライドしたときなどもリアが収束しやすく、マシンの姿勢をコントロールしやすい。これは紛れもなくダートでの安心感につながっていると思う。
電子制御の威力でダートを楽しめる
その陰には電子デバイスの進化がある。路面状況を見て最初から「オフロード」モードにセットしたがこれが大正解。出力特性が穏やかになり、フロントのみABSが入りトラコン介入は控えめになるなどダート走行に最適化される。ヌタヌタ路面でも車体さえ起こしていればしっかりブレーキをかけられるし、強めに加速しても後輪が適度に滑ったところでトラコンが安全にスライドを収めてくれる。車体を寝かすこともできず、ハンドルを切ることもできない路面では最高に頼りになるデバイスだ。というより、このサイズとパワーのメガアドベンチャーを電制の助けなしに乗りこなすことは普通の人間には不可能と思う。ちなみにRallyモデルには専用の「オフロードプロ」モードがありABSとトラコンを全解除にする機能があるが、このコンディションではとても試す気にはならなかった。
もうひとつ忘れてはならないのが、新開発のショーワ製セミアクティブ・サスペンション。減衰力を常にモニターし積載量に応じてプリロードを自動調整するという優れものだ。なんというか、乗り味が“しなやか”なのだ。ムリしない範囲でそれなりに凸凹や砂利道に入ったり、低いジャンプを飛んでみたりもしたが挙動が安定していて安心できる。
最後にタイヤについて。Rallyモデルには全地形対応のメッツラー「Karooストリート」が標準装着されるが、今回はより本格的なオフロード走行向けにオプション設定されているミシュラン「Anakee Wild」を装着しての試乗だった。ちなみに空気圧は前後1.2kgf/㎠に設定。オフロードでは最終的にはタイヤ次第といった部分もあるので、目的によってチョイスしてほしい。
ともかく、新型タイガー1200は今ある最先端のテクノロジーとトライアンフが培ってきた知見とノウハウをすべて投入した意欲作である。総括すれば「Tプレーン3気筒」と「大幅な軽量化」と「進化した電子制御」によって従来モデルより3割以上は扱いやすくなったと思う。そして、その効果はオフロードでより実感できるはずだ。機会があれば、次回はぜひ広大なフラットダートでその実力と楽しさを存分に味わってみたいと思う。
タイガー1200ラリープロ / ラリーエクスプローラー 詳細写真
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