トライアンフ最上級アドベンチャーツアラーのタイガー1200XCA
- 掲載日/2018年06月19日
- 取材・文/佐川 健太郎 写真/山家健一 衣装協力/HYOD
80年の歴史を持つ
由緒正しきオフロードの雄
TIGER(タイガー)は1936年に開催されたインターナショナル6デイズトライアルで3つのゴールドメダルに輝いて以来、トライアンフの歴史に度々登場してきた由緒あるモデルである。そして現在、タイガー1200シリーズはトライアンフが展開する現行のアドベンチャーセグメントの頂上モデルとして君臨している。その最新版である2018モデルはエンジンや電子制御を含む100ヵ所以上の大幅なアップデートにより、走りの性能と快適性を向上。オンロードだけでなくオフロード性能も高められているのが特徴だ。新型タイガー1200は従来のエクスプローラーに代わり、オンロード志向の XRシリーズとよりオフロード性能を高めたXCシリーズが設定され、XCにはクロススポークホイールが採用されているのが主な違い。今回紹介するXCAは国内に投入されるその最上級バージョンである。
トライアンフ タイガー1200XCA 特徴
エンジンと電子制御を
大幅にアップグレード
新型タイガー1200XCAは、ほぼフルモデルチェンジと言っていい進化ぶりだ。まずトータル11kgの軽量化によりハンドリングが向上。クラス最強レベルの141psを発揮する新設計の水冷並列3気筒DOHC4バルブ1215ccエンジンは低速トルクが強化され、フライホイールの小型化やクランクシャフト軽量化によりエンジンレスポンスもより俊敏に。マグネシウムカムカバーを採用するなどユニット自体も軽量化しつつ、新設計サイレンサーによりトリプルサウンドにも一層磨きがかかった。
電子制御も一段と進化した。また、新型1200XCAには6種類のライディングモードの中に新たに「OFF-ROAD PRO」も設定。ABSとトラクションコントロールが停止し、サスペンションもオフロード用に設定されるなど、オフロードにおける限界域でのコントロール性も高められた。また、前後サスペンションの減衰力とプリロードを自動的に制御するWP製セミアクティブサスペンション(TSAS)や、コーナリングでも制御可能なABSとトラクションコントロール、加えてクラッチを使わずにスムーズなギアチェンジができるシフトアシストを標準装備する充実ぶりだ。
また、マシンとライダーをつなぐインターフェイスも新設計のフルカラー5インチTFTディスプレイとなり、バックライト付きスイッチハウジングと5方向ジョイスティックで、走行中でも簡単に各種モードの切り替えが可能となっている。新たにアダプティブコーナリングライトを標準装備。これは慣性計測ユニットによりバンク角に応じてLEDライトが自動的に点灯するシステムで、コーナーの先まで明るく照らし出すことで安全性を確保。
他にも坂道発進で役立つヒルホールド機能。クルーズコントロールや電動スクリーン、グリップ&前後シートヒーターにUSBと12V電源ソケットなど、至れり尽くせりの快適装備を満載。さらにハンドルバーとシートの見直しにより、一層アップライトなライディングポジションと乗り心地の良さも追求している。今回の試乗車にも装備されていたパニアケースとトップボックスのキットなど、長距離ツーリングで頼りになる豊富な純正アクセサリーが揃っているのも魅力だ。
トライアンフ タイガー1200XCA 試乗インプレッション
パワーと快適さでリードする
脚長系の大陸横断ツアラーだ
タイガー1200XCAはトライアンフのアドベンチャー系セグメントの最高峰モデルだ。XCAとは「クロス・カントリー・アドベンチャー」の略。つまり、最もオフロード色の強い仕様ということ。同時に国内投入されたオンロード仕様のXRTがキャストホイールであるのに対しXCAは同じフロント19インチながらスポークホイールを履き、エンジンガードやアルミ製アンダーガードで護りを固めているのが違いだ。
スペックを見る限り、ホイール径やセミアクティブサスペンションのストローク長、6種類のライドモードなども両者共通で、その意味では同じタイミングで新型が投入されたフロント21インチのタイガー800XCAに比べると、よりオンロード寄りのキャラクターと言えるだろう。
跨った感じも前後サスペンションがソフトで乗り心地が良く、このクラスとしてはシートが低めで足着きも良好。相対的にハンドル位置は高めでよりリラックスしたライディングポジションになっている。1200ccを超える排気量から繰り出される141psのピークパワーと250㎏近い重量も見ても、どちらかというと“脚の長い大陸横断ツアラー”といった雰囲気だ。
見た目から従来型との決定的な違いを見つけるのは難しいが、それはトライアンフのいつもの手法。地味に改良を重ねていく中で着実に完成度を高めている。
エンジンは基本的に従来型と変わっていないが、回転がより滑らかになりスロットルに対する応答性もさらにリニアになった感じ。世代を重ねるごとに大排気量3気筒らしいゴリゴリした粗削りなパルス感は薄くなっているが、機械的には進化していることは間違いない。007のボンドカーとして名を馳せた往年のアストンマーチンDB5の直6エンジンにも似た、やや湿り気を含んだトライアンフ製3気筒独特の咆哮も健在だ。
低速トルクを強化したビッグトリプルのパワーは凄まじく、タイトコーナーが連なるスラローム走行ではよく整備されたアスファルト路面でも常にトラクションコントロールのインジケータが光るほど。試しに「オフロード・プロ」モードにしてトラクションコントロールを切ってみたが、スロットルだけでフロントが浮いてくる。逆に言えば、コーナリングABSやトラクションコントロール、電子制御サスペンションのサポートがあってこそ、この巨大な猛獣を手なづけることができるのだ。
もちろんタイガー1200の魅力はアグレッシブな側面だけではない。本当の特技はむしろ高速クルーズだ。なみなみと溢れんばかりのフラットトルクとストローク感たっぷりの猫足に高くそびえる電動スクリーンの恩恵により、その気になれば1日数百㎞を一気に走破することだって可能だろう。今回はオフロードを走る機会はなかったが、約10㎏も軽量化された車体と電子デバイスの進化によって、さらに扱いやすくなっているはずだ。
もうひとつ注目したいのは、インターフェイスの進化だ。新型に採用されたTFTフルカラーディスプレイは分かりやすいレイアウトで走行に必要な情報を伝えてくれ、手元のジョイスティックの直感的な操作でモード変更などもしやすい。美しいグラフィックは見ていて飽きないし、シフトアシストやクルーズコントロール、コーナリングライトなどともに長距離になるほどそのありがたみを実感するはずだ。
アドベンチャーツアラーにもいろいろな方向性があると思うが、積載性とパワー重視の快適超特急を求めるならコレがベストだろう。
トライアンフ タイガー1200XCA の詳細写真
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