トライアンフ タイガー800
- 掲載日/2011年02月10日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン 取材・文/佐川 健太郎
トライアンフ待望の
アドベンチャーモデルが登場
トライアンフから久々のアドベンチャーモデル、タイガー800とその兄弟車のタイガー800XCがデビューした。“アドベンチャー” とは直訳すると「冒険」である。つまり、遥かなる地平を目指し、ときには野山に分け入り道なき道をも走破する実力を備えた万能マシンということである。
今回ご紹介するタイガー800は、オンロード性能に重点を置いたモデルであり、オフロード寄りのセッティングでまとめられた XC とは違ったライディングシーンを想定しているという。また、すでにトライアンフの現行ラインナップにはタイガー 1050 があるが、それとの差別化はどうなっているのだろう? 800cc トリプルというのも今回初登場のエンジンレイアウトであり、新作のスチールフレームとの組み合わせにも興味は尽きないところだ。何故いまアドベンチャーなのか…。その答えをニュータイガーの中に探ってみたい。
トライアンフ タイガー800 特徴
伝統に裏打ちされた
充実した「旅」の装備が魅力
タイガー800は近年のアドベンチャーモデルへの人気に対応するため、新たに開発されたニューモデルである。トライアンフには元々、1950年代~60年代にオフロードレースで活躍した650ccのタイガーというモデルがあった。90年代に生産を再開した新生トライアンフにおいても、デュアルパーパスモデルとしてタイガー900が投入され、やがて955iへと進化。ロード性能を高めた現行モデルのタイガー1050へとつながっている。
今回リリースされたタイガー800/800XCはまさにアドベンチャーというジャンルへの原点回帰と言っていいだろう。「どこにでも乗っていける」オールラウンド性がアドベンチャーの本旨だが、タイガー800においてはエンジンやシャーシなどの基本構成を共有する2つのモデルを作ることでこのテーマに挑んでいる。?今回試乗したタイガー800はそのロードバージョンで、通勤や手軽なツーリングにも使えて女性ライダーにもアピールできる幅広い実用性が特徴。デザイン的にはデュアルパーパス的ではあるが、ツインヘッドライトやチューブフレームなどトライアンフファミリー伝統のエッセンスが取り込まれている点も見逃せない。?水冷DOHC並列3気筒799ccエンジンは675ccベースにロングストローク化により排気量を拡大しているが、専用設計の鋳造シリンダーヘッドとスロットルボディを持つ新作。クラストップの95psはどんな条件下でも扱いやすい低中速トルク重視の穏やかなパワー特性が特徴となっている。また、ギヤレシオも高速クルーズに向いたロング設定となっている。
フレームは悪路や荷物にも対応できるよう強靭なスチール製とし、フロントには43㎜倒立フォークとデュアルディスクブレーキ、リアにはリンク式モノショックとシングルディスクブレーキを装備するなど足回りを強化。ちなみに兄弟車のXCは足回りが主に異なり、フロントホイール径が21インチで前後ともスポーク仕様。サスペンションのストローク量も増やされている。なおXCともどもABS仕様の設定もラインナップされている。
満タンで400㎞以上走行できる19Lタンクや高さ調整可能なシートやハンドルバー、大容量550wの強力ジェネレータに支えられた電源ソケットなど、快適なロングツーリングのための充実した装備の他、パニアケースや空気圧モニタリングシステムなど、タイガー800専用に約50アイテムのアクセサリーが用意されている点も魅力である。
トライアンフ タイガー800 試乗インプレッション
どこへでも快適に足を伸ばせる
都会派アドベンチャー
トライアンフの3気筒は万人が認める「良くできたエンジン」である。これをパワーソースに用いたアドベンチャーモデルとなれば、期待しない訳がない。子供のようにワクワクしながら試乗に向かったのだった。そしてご対面…。遠目にはスリムで華奢な感じがしたが、近寄ってみると意外に大きい。剥き出しのスチールフレームが醸し出す武骨な雰囲気もあり、わりと男っぽいバイクだ。フロントに19インチの大径ホイールを付けていることもあるが、スポーツツアラー路線を歩む既存のタイガー1050よりもオフロード色が強いスタイリングと言える。跨ってみるとシートとハンドルが高く見た目どおりオフ車的で、スタンディングでもしっくりくる自由度の高いライポジだ。
エンジンはデイトナやストリートトリプルでお馴染みの675cc、3気筒をベースに799ccに拡大されているが、排気量が大きい分ゆとりはあるのだが、出力特性はむしろ穏やか。スロットルを開けたときの瞬発力ではストリートトリプル系のほうが上だ。スペック上でも同 106ps に対し、こちらは 95ps とピークパワーは抑えられている。排気量拡大によるトルクアップを低中速に振り分け、しかもギアリングを高めに設定している感じ。元々が荒地も走ることを想定したアドベンチャーというコンセプトに合わせたエンジンキャラクターと言える。675cc では少々物足りないが、1050cc ではもて余す…。800cc はその中間を埋める “いい線” なのだ。フラットで伸びやかなトルクは3気筒ならでは。加速とともに「キーン」と共鳴する独特の金属音がまたシビれる。強烈すぎない適度なパワー感とともに、“エンジンを楽しめる” バイクでもある。
ストリートトリプル系の「やんちゃ」ぶりに対して、タイガーは「落ち着き」がある。大柄な車体とロングホイールベース、大径19インチのフロントホイールなど、車体の構成からして安定志向であることは明らかだが、実際のところハンドリングは穏やか。一般的なロードモデルに採用される17インチに比べると倒し込みのレスポンスが緩やかで、コーナーでは前輪の軌跡が自分のイメージよりやや外回りするようなラインを描く。いい意味でちょっと昔のバイクっぽい穏やかさがあるのだ。でも、長距離や荒れた舗装路を走るのであれば、こうしたハンドリングのほうが疲れにくく安心なはずだ。
車体剛性はとてもしっかりしていて、スチールフレームだからといってヨレやしなりなどは全く感じない。まあ、兄弟車のタイガー800XCはオフロード走行も想定しているのだから、当たり前といえば当たり前。意外だったのはサスペンションで、見た目からはデュアルパーパス的なソフトな足回りをイメージしていたのだが、実際のところは前後ともダンピングが効いた、完全にロード寄りの味付け。タイガー1050には豊富なストロークを生かした足長系バイクの名残りがあるのだが、これに対しタイガー800はよりハードな設定だ。けっこうな速度レンジでコーナーに飛び込んでも、ムダな動きはせずにしっかり路面を捉えてくれていた。標準装着のピレリ SCORPION の恩恵もあると思う。ただ、リアサスはややオーバーダンピングな感じで、もう少しスムーズに動いてほしい感じはある。リアサスに装備された油圧式のプリロード調整機構はとても便利なのだが、残念なのはダンパー調整が出来ないこと。個人的には価格を上乗せしてもいいので加えてほしいところだ。
旅の装備の充実も見逃せないポイント。固定式のスクリーンは小ぶりながら高速クルーズではけっこう効いてくれるし、人間工学に基づくシート形状や19Lタンクも快適に距離を伸ばすための手助けをしてくれる。メーターパネルのデザインもモダンで質感が高く、トリップコンピュータなどのデバイスも使いこなせれば便利だろう。そして、キーシリンダー横に装備された電源ソケットが特筆もの。モバイル機器を携行する現代のライダーにとっては、まさに痒いところに手が届く装備と言えよう。
タイガー800はデュアルパーパスの形をしたツアラーでありスポーツバイクでもあり、目的によって何にでも転用できる懐の広いバイクである。でも私なら、冒険心を忘れない都会派ライダーにこそおすすめしたいと思うのだが、いかがだろう。
トライアンフ タイガー800 の詳細写真
SPECIFICATIONS –TRIUMPH TIGER800
価格(消費税込み) = 113万5,050円
国内入荷の2011年モデルはクリスタルホワイト、ベナムイエロー、ファントムブラックの3色をラインナップ。
- ■エンジン型式 = 水冷4ストローク並列3気筒/DOHC4バルブ
- ■総排気量 = 799cc
- ■ボア×ストローク = 74.0mm×61.9mm
- ■最高出力 = 95PS/9,300rpm
- ■最大トルク = 79Nm/7,850rpm
- ■トランスミッション = 常噛段6リターン
- ■サイズ = 全長2,215×全幅795×全高1,350mm
- ■シート高 = 810mm/830mm
- ■ホイールベース = 1,555mm
- ■車両重量 = 210kg(整備重量)
- ■タンク容量 = 19L
- ■Fタイヤサイズ = 100/90-19
- ■Rタイヤサイズ = 150/70-17
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