トライアンフ タイガー800XRx
- 掲載日/2015年07月31日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文/佐川 健太郎 写真/山家健一 動画/倉田昌幸 衣装協力/HYOD
ミドルクラスで世界的な人気を誇る
アドベンチャーモデルが電子制御化
2010年のデビュー以来、世界で34,000台が販売され、アドベンチャーモデルの世界的セグメントシェアにおいても25%という高い人気を誇るタイガー800。2015年1月に国内投入された最新シリーズには、オンロード志向のオールラウンダー『タイガー800XR/XRx』と、オフロード寄りの装備を施した『タイガー800XC/XCx』の2つのバリエーションが用意されている。
従来モデルからの大きな進化は、電子制御システムが導入されたこと。ライドバイワイヤによる電子スロットルとなり、ライディングモードやスロットルマップ(タイガー800XRxとタイガー800XCx)、トラクションコントロールなどが標準装備された。さらなる進化・熟成を遂げたミドルタイガーの魅力に迫る。
トライアンフ タイガー800XRx 特徴
走りを最適化するライディングモード
エンジンが熟成され燃費性能も向上
今回試乗したのはオンロード寄りの仕様『タイガー800XRx』である。デイトナ675系をベースに排気量を拡大した水冷並列3気筒799ccエンジンは第2世代となり、新たにライドバイワイヤによる電子制御スロットルを導入。よりスムーズなパワーと俊敏なレスポンス、そしてエミッション低減を実現している。
新型の大きな特徴として、上級モデルであるタイガー800XRxとタイガー800XCxにライディングモードが搭載されたことが挙げられる。『ロード』と『オフロード』、任意に設定できる『プログラマブルライダー』の3つのモードを用意。ボタン操作ひとつでトラクションコントロール、ABS、スロットルマッピングを変更し、走行条件や路面状況に合わせて最適化できるのが特徴だ。
例えば『ロード』であればトラクションコントロールも舗装路での使用を想定してリアホイールスピンの許容量は低めだが、『オフロード』では逆にスピン量を多めに許容してリアを流しながら曲がれる設定になる。ABSも『オフロード』ではリア側が解除され、フロント側も介入を遅くするなど、ダート路面で安全に制動しながらもブレーキターンなどの豪快な走りも満喫できるしくみになっている。
また『プログラマブルライダー』ではトラクションコントロールやABSをライダーが任意に設定できるほか、スロットルマップも『レイン』『ロード』『スポーツ』『オフロード』の4種類を用意。最大出力は変わらないが、スロットル開度に対するレスポンスを変化させることで走行状況に応じた最適なマップを選べるなど、オーダーメイドで自分好みの走行特性に仕立てられるのが魅力となっている。さらに、新たにクルーズコントロールを標準装備し、ロングライドでの快適性も向上した。
エンジンにも改良が加えられ、内部パーツ変更によるメカニカルノイズ低減とともに、シフト機構にデイトナ675と同様のパーツを採用することで、より軽く正確なギアチェンジ動作が可能になった。燃費性能も17%向上し、400kmを超える無給油走行ができる。
シャシーも一部改良を受け、オンロードでのハンドリングとオフロードの踏破性がともに向上した。ショーワ製の前後サスペンションは、フロントにブラック酸化皮膜処理が施された43mm倒立タイプ、リアにはプリロード調節機能付きモノショックを装備し、快適な乗り心地と確実なロードホールディングを実現。
外観上もラジエターシュラウドとタンクサイドパネルのデザインが見直され、よりシャープで精悍さを増したスタイリングとなっている。
トライアンフ タイガー800XRx 試乗インプレッション
より安全かつスポーティに
オールラウンド性能がアップ
新型になり、グレード感が一段とアップした。ラジエターシュラウドが大型化され、フロントまわりのボリュームが増してアグレッシブな印象となり、美しい曲線を描くスチールフレームにはチタンパウダーコートを施すことでフォークチューブのアノダイズド処理とともに高級感を醸し出している。フルモデルチェンジのような派手な変身ではないが、静かに中身の進化をアピールしているあたりがトライアンフらしい。
車格もちょうど良い。アドベンチャーモデルらしい大柄な押し出し感を演出しつつも、実際に跨ってみると意外とスリムでシートが低く足つき性が良い。特に、2段階に高さ調整ができるシートを低い位置にセットすると、ビッグネイキッドと同等くらいの感じだ。アップライトで視界も良く、余裕のある懐まわりも好みだ。
走り出してまず感じたのは、エンジンのスムーズさ。従来モデルでは3気筒独特のややザラッとした回転フィールを強めに感じたが、新型ではパルス感を残しつつも回転がより滑らかになり、吹け上がりも軽くなった。電子制御スロットルになり、右手を捻ること自体が楽になったことも影響していると思うが、パワーデリバリーがきめ細かく軽快なのだ。シフトフィールも大きく変わった。以前より節度感が出て、軽い力でスムーズにギアチェンジが決まる。吸い込まれるようにギアが入る感覚だ。まさにデイトナ675と同じシフトフィールと言って良い。スペックに表れない部分だが、実際のライティングにおいては、この感性に訴える部分が大事であるとあらためて思う。これだけは乗ってみないとわからない。
ハンドリングについては、フロント19インチの大径ホイールとスチールフレーム、長い脚を生かしたダイナミックでしなやかな従来どおりの走りが特徴。サスペンションの設定も絶妙で、オンロードスポーツモデルほど減衰力が勝っていないし、オフロードモデルのようにフワフワでもなく、ほど良いストローク感で、アスファルトが剥がれて荒れた路面でも気にすることなく走破していける。
新型でもっとも進化したのは、電子制御技術だ。何日か試乗した中には雨天もあったので、ライディングモードを試す絶好の機会となった。まず『ロード』に設定。これは通常走行状態だが、スロットルを開けたときにマンホールに乗るなどして後輪が空転すると、すかさずインジケーターが点滅してトラクションコントロールが作動していることを知らせてくる。この滑りのタイムラグすら怖い場合は、スロットルマップを『レイン』にするとスロットルのレスポンスが穏やかになり、ほぼ滑らないので安心だ。ABSに関しては、わりと早めに介入してくるが、前輪ロックなどの心配がないので、思い切ってブレーキをかけられるはずだ。
試しにダートで『オフロード』にも設定してみた。パワーの出方が穏やかになるため、滑りにくくなるが、トラクションコントロールやABSの介入は控えめで、いざ滑ってしまうと自分でコントロールする必要がある。つまり、ダートで積極的にリアブレーキを使ってターンしたり、後輪をスライドさせて向きを変えたりするのに適しているわけで、いわば上級者向けのモードと言って差し支えないだろう。
このように、電子デバイスを駆使することで通常走行はもとより雨天やダートでもより安全かつ積極的にライディングを楽しめるようになったことが、新型タイガー800の最大の魅力だろう。加えて、クルーズコントロールや可変式スクリーンが装備されたことによって連続高速クルーズがより快適になった。街乗りにも使えるサイズ感と積載性、ワインディングロードでのスポーツ性能も含めて、まさにオールラウンドな1台だ。
トライアンフ タイガー800XRx の詳細写真
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