VIRGIN TRIUMPH | 10年振りのフルモデルチェンジを果たしたトライアンフの新型タイガー900は快適性、利便性、走破性も劇的アップし、真のアドベンチャーモデルへ進化した‼ 試乗インプレッション

10年振りのフルモデルチェンジを果たしたトライアンフの新型タイガー900は快適性、利便性、走破性も劇的アップし、真のアドベンチャーモデルへ進化した‼

10年振りのフルモデルチェンジを果たしたトライアンフの新型タイガー900は快適性も利便性、走破性も劇的アップし、真のアドベンチャーモデルへ進化した‼の写真
TRIUMPH TIGER 900 RALLY PRO / GT PRO(2020)
トライアンフのミドルクラスアドベンチャー「タイガー900」がフルモデルチェンジ。エンジンもフレームも完全に新設計され、まったくの別モノになった。そのフィーリングをモロッコからお届けしよう。

本格オフロード仕様の「ラリー」と
オンロードツーリングが快適な「GT」の2本立て

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現在、トライアンフはミドルクラスのアドベンチャーモデルとして「タイガー 800」をラインナップしている。2010年の初登場以来、これまで2度のマイナーチェンジによって改良されてきたが、今回ついにフルモデルチェンジ。日本では2020年4月から発売が始まる。

そして車名は「タイガー 900」になった。その数字が示す通り、排気量が拡大され、これまで800㏄だった水冷3気筒エンジンが888㏄になっている。実はそれだけでなく、爆発間隔の変更という大きなトピックがあるのだが、これに関しては後述しよう。

モデルバリエーションは「ラリー」と「GT」という2本立てになり、それぞれに「ラリープロ」と「GTプロ」という上級グレードを用意。今回は、その2機種のプロにたっぷりと試乗することができた。

タイガー 900 ラリープロ / GTプロ 特徴

エンジンの爆発が等間隔から不等間隔に変化
排気音が「ドンドンドン」から「ドドン…ドン…ドドン…ドン」へ

モデルチェンジの際、排気量がアップすることは珍しくないが、タイガー 900の場合はクランクシャフトの設計に注目したい。これまでの800㏄エンジンは、ピストンとコンロッドをクランクシャフトに対して均等の間隔で配置。爆発も「ドンドンドン」という等間隔で繰り返されていた。

ところが新しい900㏄エンジンのそれはズラされ、その爆発音を擬音化すると「ドドン…ドン…ドドン…ドン」という不等間隔になったのである。

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TRIUMPH TIGER 900 RALL PRO(タイガー 900 ラリープロ)

これのなにがいいのか? もちろん等間隔にもメリットがあり、高回転まできれいに回ることが挙げられるのだが、モーターのようにスムーズで操っている感覚が乏しくなりがちだ。対する不等間隔は、爆発と爆発の間に谷間があり、その緩急がリズムを生むのである。例えるなら等間隔が「駆け足」、不等間隔が「スキップ」のようなイメージだ。

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TRIUMPH TIGER 900 GT PRO (タイガー 900 GTプロ)

刷新されたこの爆発タイミングの影響は様々な場面で絶大だ。扱いやすく感じられるおかげでライディングはイージーそのもの。そこに軽量になった車体、低重心になったエンジン搭載位置、各種電子デバイスが加わり、アドベンチャー能力が劇的に向上しているのだ。

タイガー 900 ラリープロ / GTプロ 試乗インプレッション

モロッコの荒地をモノともしない驚異の走破性
トラクションという言葉の意味を知りたかったらこれだ!!

今回の試乗会は北アフリカの国、モロッコで開催された。用意されたのは「タイガー 900 ラリープロ」と「タイガー 900 GTプロ」の2機種で、プロの名が付かないベースグレードに対して、グリップヒーター、シートヒーター、クイックシフターなどが追加されている。ライディングモードもよりきめ細やかなものになる。

ラリープロの場合、さらにエンジンガードやアンダーガードを装備。GTプロはリアサスペンションがマルゾッキの電子制御タイプになるなど、それぞれのキャラクターに適した専用パーツが装着されている。キャラクターは車名に表れていて、GTはグランドツアラーとして長距離ツーリング性能を、ラリーはオフロードを走るための走破性とプロテクション機能を強化した仕様である。

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まずはGTプロの印象からお届けしよう。シートは810mmと830mmの2段階に簡単に調整でき、平均的な日本人男性なら足つき性は良好な部類だ。クラッチの操作性は軽く、クイックシフターは抜群の精度で機能。ギヤのアップもダウンもほとんどショックなく切り換わっていく。

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フロントには19インチホイールを履き、ラリープロよりもオンロードを重視した足まわりを持つ。電子制御サスペンションのダンピングが自動的に変化するため、ワインディングをかなりのアベレージスピードで走っても路面追従性はまったく崩れない。そこにはツアラーとしての高いパフォーマンスが与えられていた。

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さて、モロッコというオフロード天国が試乗地に選ばれたということは、タイガー 900の真骨頂はラリープロにあると言ってもいい。フロントに21インチホイールを装着し、それをショーワのロングストロークサスペンションが支持。ライディングモードには、ABSとトラクションコントロールがカットできる「オフロードプロ」が加わる。

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車高が上がった分、見た目は一気にハードな印象になるが、驚くべきはダート上で見せる扱いやすさだった。その秘密が冒頭に記した不等間隔爆発エンジンで、サラサラの砂地だろうが、ゴロゴロと岩が転がるガレ場だろうが、路面にリアタイヤを突き刺すようなトラクションを発揮。もしも車体がグラリ、ズルリとしたら、スロットルを少し開け足す。そうするだけで安定性が戻り、グイグイと力強く進んでいくのだ。

装備重量は226kgあるため、決して軽量ではない。にもかかわらず、スロットルワークだけで荒れ地を進んでいける頼もしさは、このクラスのアドベンチャーモデルにないものだ。

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1,000㏄超のビッグアドベンチャーは人気のカテゴリーだが、その巨体ゆえ、実際には機能を持て余してしまうことが多い。その点、タイガー 900 ラリープロは走れる領域が格段に広く、サバイバル能力が極限まで高められたリアルアドベンチャーである。

タイガー 900 ラリープロ / GTプロ 詳細写真

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設計が一新された888㏄の水冷3気筒エンジンを搭載。中でもクランクシャフトは完全に別モノになり、従来の等間隔爆発から不等間隔爆発になっている。これによってトラクションが大幅に向上。トルクも10%アップしている。
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スクリーンは5段階50mmの幅で高さ調整が可能。電動ではなく手動だが、中央に見えるパイプによって片手で簡単に操作できる。写真は一番下にした時の状態。
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ライディングモードは、レイン/ロード/スポーツ/オフロード/オフロードプロ/ライダーセットアップの計6パターン。それぞれに対して、ABSとトラクションコントロールの介入度、スロットルレスポンスの強弱が変化。オフロードプロを選択するとABSとトラクションコントロールはカットされ、最も自由度の高いライディングが可能になる。
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ブレーキはブレンボのStylemaモノブロックキャリパーとφ320mmのダブルディスクを組み合わせる。GTプロが19インチホイールを装着するのに対し、ラリープロは21インチ。また、サスペンションのトラベル量は240mmとかなり余裕がある。
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リアサスペンションのトラベル量は230mm。油圧式のプリロードアジャスターを備え、必要に応じて簡単にセッティングを変更することが可能だ。
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美しい取り回しを見せるスチールトレリスフレームに、アルミサブフレームをボルトオンで装着。従来モデル比で5kg軽量化され、運動性の向上に貢献。エンジンの搭載位置も見直され、前方に40mm、下方に20mmオフセットされた。
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「MY TRIUMPHコネクティビティシステム」を搭載。これは専用のBluetoothコネクティビティモジュールによってアプリとリンクするもので、電話の通話やメールの確認、音楽の再生ができる他、ナビゲーションやGoProの操作が行えるというもの。走行中の楽しみや利便性が広がるシステムだ。
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グリップヒーターを標準装備。ライディングモードの切換やコネクティビティシステムの操作などは、ハンドル左側のスイッチボックスに備えられたジョイスティック状のボタンで行うことができる。
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ステップバー上部には頑強なヒールガードを装備。抜群のホールド性を発揮し、オフロード走行時やスタンディング時の安定性が向上する。奥に見えるのはクイックシフターで、ギヤのアップにもダウンにも対応。ショックのないスムーズなシフトチェンジが可能になっている。
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シートヒーターはフロント側とリア側の両方に装備。冬場でも快適な走行を実現する。
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ラリープロのホイールは前後ともワイヤースポークながらチューブレス仕様になっている。タイヤエア圧モニタリングシステムを備え、もしエア圧が下がった場合はメーターに警告が表示される。
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純正アクセサリーはすでに65種類以上が用意されている。ヘルメットが2個収納可能なトップケースやラジエターガードなど、目的に応じて幅広い選択が可能だ。
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こちらはGTプロのリアサスペンション。マルゾッキの電子制御式を採用し、ライディングモード(GTプロはレイン/ロード/スポーツ/オフロード/ライダーセットアップの5パターン)に応じて、減衰力が変化。プリロードも4段階の中から選ぶことができる。
試乗ライダー プロフィール
伊丹 孝裕
2輪専門誌の編集長を経て、モータージャーナリストとして独立。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTや鈴鹿8耐、パイクスピークといった国内外のレースに参戦してきた。

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