【2024年型NEWトライアンフ タイガー900 GTプロ/ラリープロ 試乗記】アドベンチャーマシンのニューホープ
- 掲載日/2023年12月27日
- 取材協力・写真/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『KRS』)
タイガー900 GTプロ/ラリープロ 特徴
180度→270度→270度の不均等爆発エンジンによりダート走行でのグリップ力を強化
トライアンフといえば直立2気筒エンジンのクラシック系バイク「ボンネビル」のイメージが強いものの3気筒モデルの機種展開が実は興味深い。
モトGPクラスへの登竜門モト2クラス。フレーム選択は自由だが、どのチームも同一エンジンでレースを闘うシステム。トライアンフ社はその公式エンジンサプライヤーとしてストリート・トリプル765のエンジンを供給し、従来の日本製4気筒マシンよりも各コースでのラップタイムを大幅に更新し続けている。
そんなトライアンフの3気筒エンジンのクランク位相は120度だが、アドベンチャー系モデルのタイガー900と1200は180度→270度→270度の不均等爆発エンジン(トライアンフはTプレーンクランクと命名)を採用。理由はダート走行でのグリップ力:トラクション性能をより強くするため。
2024年型タイガー900はキャストホイール・前後輪19:17インチのタイガー900GTと豪華装備の900GTプロ。前後輪21:17インチでスポークホイールのタイガー900ラリープロの3機種。 いずれもエンジン出力を95→108psへ13馬力ものアップを果たしながら最大トルクも87→90Nmへ向上させながら燃費を9%改善したという。
パワーも大事だが実際に気になるのは低疲労と安全性から生まれる快適性の向上だが、はたしてその完成度は?
タイガー900 GTプロ/ラリープロ 試乗インプレッション
あらゆる状況で存分に走りが楽しめる最適ストライクゾーン
試乗会1日目はGTプロでフラットダートを少し含むワインディングロード。2日目はラリープロによるダート走行というメニューだったが、まずはGTプロによるワインディング。
出力アップした新型タイガー900のチャームポイントは市街地から、かなりのハイペースなワインディング走行まできっちりと路面を掴む気持ち良さが堪能できたこと。
ビッグオフは「カーブは楽しくないのでは?」というイメージを完全にくつがえす旋回力だ。車体剛性配分、前後サスの動き、強弱自在に使える前後ブレーキによって走行ラインの自由度が高く、アップライトなポジションと優れた防風性、そしてパワフルなエンジンによってワインディングが実に楽しい。
その楽しさを増長してくれるのが今回のエンジン系リファイン。5000回転以上でのパワーの伸びだけでなく、2000回転付近から上の粘りと押し出しがアップしている。1気筒や2気筒にはできない低速系の滑らかさ。高回転では4気筒に劣らぬシャープな伸びと十分すぎるパワー。しかも5000回転あたりまではTプレーンクランクらしいドルルーンとくるビート感が楽しめ、6000回転以上では、まさしくトラが吠えるような荒々しいサウンドに変化。ロングランでも退屈にならない最良の味付けだ。
GTプロのリアサスには電子制御式プリロード&伸側減衰機構がセットされてタンデムや荷物満載時の操縦性低下の心配も排除。前後180mm/170mmのストロークによってロードモデルで不安になるような路面の凹凸もスッと気軽に走破してくれる。
2日目はラリープロによるダート走行。エンジンモード、ライダーモードが選択できるGTプロと異なりロード、レイン、スポーツ、オフロードに加えて、ライダーモード、オフロードプロの選択が可能。トラクションコントロールとABS解除のオフロード・プロ設定で走ったが、着座、スタンディングのいずれもポジションのフィット感に優れ、豪快なパワーと自在性が堪能できた。
低速域でのバランスや鋭い立ち上がりなど、滑りやすい路面ではちょっとしたスロットルの開け加減でのレスポンスとパワーの出方が大事。新型タイガーはエンジンの扱いやすさで曲がり方がより軽快になった。重く大きな車体を持て余すのは結局、エンジンの特性なのだ!ということを気づかせてくれた。
直線でキッチリ加速してからのハードなブレーキング加減も自在。重いバイクによる急な下り坂でも前240mm、後230mmのストロークを持つ前後サスが踏ん張って狙った通りの減速とラインがトレースできるのだ。
ラリープロはハンドル位置が15mm手前に移動したことで、着座でもスタンディングでもハンドル操作がより快適になった。
GTプロとラリープロはラバーマウント型ハンドルバーとなったことで手に伝わる振動が大幅に減った。クラッチも軽い。短時間でもすぐに尻を痛がる私が2日間とも尻が痛くならなかったのは驚きでもあった。前後シートともヒーター装備。5段階50mmのウインドシールド高さ調整可能といった快適性アップのほか、被視認性向上となるウインカーポジションランプ、ABS作動時の自動ハザードランプ点滅、タイヤ空気圧モニタリングシステムなど装備の充実もGTプロとラリープロの大きな魅力。
1000cc以下のビッグオフこそ、車体サイズと重量、存分に楽しめるパワーと快適性、そしてプライス(費用対効果)のハイバランス。あらゆる状況で存分に走りが楽しめる最適ストライクゾーンではないか。ストレートにそう思わせてくれた新型タイガー900GTプロとラリープロだった。
タイガー900 GTプロ/ラリープロ 詳細写真
関連する記事
-
特集記事&最新情報
TOWARD WEST-ALL NEW TIGER1200
-
モデルカタログ
タイガー 900 ラリー / ラリープロ (2020-)
-
トライアンフ購入ガイド
トライアンフ タイガー900ラリー/ラリープロ (2020-)