地球を相手に遊べる高いスタビリティを誇る新型タイガー900ラリープロを試乗インプレッション
- 掲載日/2020年03月30日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文・写真/小松 男
好敵手が連立するミドルアドベンチャークラスにキャラクターとハイパフォーマンスで挑む
2000年代初頭から2010年ごろにかけて、各メーカーこぞってアドベンチャーモデルをマーケット導入した時期があったが、その後はスーパーバイクやネオクラシックモデル時代に突入し、いわゆるアドベンチャーブームはいったん落ち着きを見せた。それからしばらく経ち、昨今は再び新型アドベンチャーモデルが矢継ぎ早に登場してきている。特にアンダー1000ccのミドルクラスのモデル攻勢は激しく、どのメーカーも注力している部分だ。そのような中、トライアンフは既存のタイガー800をフルモデルチェンジし、後継モデルとなるタイガー900ラリーとGTの2モデルを発表。今春国内でもデリバリーが開始される。今回はそのタイガー900ラリーの上級モデルにあたるタイガー900ラリープロを紹介する。
タイガー 900 ラリープロ 特徴
半世紀以上も続くタイガーの歴史は紆余曲折を経て現在へと続く
トライアンフが初めてタイガーというネーミングを採用したのは、ジーグフリード・ベックマンからジャック・サングスターへと経営者が交代した1936年からとなる。サングスターと共にアリエルから移籍したエドワード・ターナーが指揮を執り、タイガー70/80/90の3モデルがリリースされたのだ。
当時はまだ未舗装路の方が多かったこともあり、オフロードバイクというカテゴリーはまだ確立されていなかったが、1956年には6TサンダーバードのスポーツバージョンにあたるT110タイガーが、さらにそれから10年以上経った1968年にはT100タイガーへと時代のニーズに合わせて進化を続けてゆく。
ヒンクレー工場での生産が始まると1993年に3気筒エンジンを搭載したタイガー900が登場する。当時欧州を中心に人気の高かったデュアルパーパスモデルとなった新生タイガーは、幅広い層から支持されることとなった。2007年に登場したタイガーでは、前後17インチタイヤが採用され、オンロード色が強くなった。2010年にはミドルクラスモデルとしてタイガー800が登場、現在ではハイエンドモデルであるタイガー1200と、ここで紹介する新型タイガー900の2ラインが設定されている。
以上のように長い年月タイガーという名は使われてきたが、途中の目ぼしいモデルを列挙しただけでも随分とキャラクターが変更されてきたことが分かる。新型のタイガー900ではスポークホイールを採用しオフロード走破性を高めたラリーと、オンロード主体のロングツーリングを快適にこなす装備を纏ったGTが用意されている。実質的なタイガー800の後継モデルとなるタイガー900はどのような進化を遂げているのだろうか。
タイガー 900 ラリープロ 試乗インプレッション
6パターンのライディングモードを用意その乗り味は安楽な筋斗雲的なもの
タイガー900ラリーはオフロード志向の強いモデルであり、従来のタイガー800XCの後継モデルという位置づけだ。フロントサスペンションのトラベル量は240mm、リアサスペンションのトラベル量は230mmとかなり大きく、フロント21インチ、リア17インチのタイヤと相まって、オフロード走破性能はかなり高いものとされている。ただし、その分シートは850-870mmと、かなり高い設定となっている。これは同社スクランブラー1200と同じもので現行ラインアップで最も高い数値となっている。アドベンチャーカテゴリーとしているが、その中でもビッグエンデューロと言っても良いスパルタンなパッケージングだ。
デザインベース的にはタイガー800を踏襲したものとなっているが、まず目に入ってくるのは、最高と自負する7インチフルカラーTFTディスプレイだ。スマートフォンというよりもタブレットに近いサイズ感であり、そこには速度や回転数などの一般的な表示をはじめライディングモードやブルートゥース接続機器の詳細など様々なインフォメーションを映し出すことができる。この手のエクイップメントは様々なモデルで用いられるようになったが、面白いのはGoProとも接続ができ、手元でのスイッチボックスでコントロールすることができるようにされている点だ。世界中でモトブロガーの人気が高まってきていることもあるが、思い出を残すと言う意味でもアクションカメラとの接続はバイクライフの楽しみをより深めてくれるだろう。
888ccまで排気量を引き上げられた並列3気筒エンジンはセルボタン一つで容易に目を覚ます。8750回転で95.2馬力の最高出力を発揮し、6種のライディングモードを備えライディングシーンに合わせたスロットルレスポンスや出力特性を変更することができる。
トライアンフの3気筒エンジンは、シングルやツインエンジンが得意とする爆発的な鼓動感と、4気筒エンジンの高回転での伸びやかさの中間にあると言え、バーチカルツインエンジンと並びトライアンフならではのキャラクターが持たされている。タイガー800が240度等間隔爆発だったのに対し、タイガー900では1、3、2気筒という順番で点火、1→3を180度、3→2と2→1では270度という爆発間隔とされている。これによりスムーズな回転上昇を得ることを実現した。ただ今回テストした車両はまだ数百キロの積算走行で”アタリ”がついていないということもあってか、極低回転でのギクシャク感が見受けられ、これはライディングモードを変更しても変わらない部分だった。
とはいえひとたび走り出せば快適そのものだ。高いアイポイントからの眺めは優越感に浸れるものであるし、良く動きつつコシのある足まわりは、オンロードであっても素直なハンドリングをもたらしてくれる。未舗装路での走破性能は素晴らしく、スキルの有る無しに関わらず、バイク任せで走らせることができる。
タイガー900ラリープロの利点として挙げられるのは、まず車体の軽さだ。乾燥重量201kg(スタンダードモデルは196kg)というスペックは、ライバルとなる1000cc前後のアドベンチャーモデルの中でも特筆すべきものである。サスペンショントラベル量も他を圧倒するものであり、その結果オンロードでもオフロードでも高いスタビリティを発揮できることとなっている。21インチ、17インチという現在のオフロードモデルで主流となるタイヤサイズは、ワインディングなどでクセを感じるハンドリングなのが常なのだが、タイガー900ラリープロは非常にニュートラル。足つき性こそ良いとは言いにくいが、軽量な車体は扱いやすいものである。
さらにオンロードで4パターン、オフロードで2パターンをプリセットされたライディングモードは、ステージに応じて変更できるだけでなく、自分の好みやスキルに合わせて各セッティングを詳細に調整することができる。スイッチボックスには様々な機能が持たされていることもあり、触るまでは小難しいものと思っていたが、実際に使ってみると各セッティングはツリー形式でぶら下がっており、それを左手側のジョイスティックで操作することがメインとなるので簡単なものだった。オーナーになった暁は是非とも機能を使いこなしてほしい。
今回テストしたタイガー900ラリープロは、フォグライトやシートヒーターやタイヤ空気圧モニタリングシステム、シフトアシストなどを装備する上級モデルとなっている。車両価格186万円で、これはスタンダードモデルと比べ約20万円高いプライスではあるが、個々のオプション価格を考えるとお買い得と言えるものであり、少し無理をしてでもタイガー900ラリープロを選ぶことで、より素敵なトライアンフライフを楽しめることだろう。
タイガー 900 ラリープロ 詳細写真
関連する記事
-
特集記事&最新情報
TOWARD WEST-ALL NEW TIGER1200
-
モデルカタログ
タイガー 900 ラリー / ラリープロ (2020-)
-
トライアンフ購入ガイド
トライアンフ タイガー900ラリー/ラリープロ (2020-)