VIRGIN TRIUMPH | トライアンフ タイガーエクスプローラー 試乗インプレッション

トラインフ タイガーエクスプローラーの画像
TRIUMPH TIGER EXPLORER

トライアンフ タイガーエクスプローラー

GSを超えるためにすべてが磨かれた
トライアンフのフラッグシップツアラー

ルーツをたどると19世紀に至る、イギリスの名門モーターサイクルブランド、トライアンフ。自転車から始まったトライアンフの歴史は、モーターサイクル、スポーツカーと発展し数多くの名車を生み出した輝きに満ちている。しかし、その発展の裏で経営はしばしば厳しい状況に陥り、何度も買収が繰り返され、その都度ブランドの存続が危ぶまれてきた。

しかし、1990年からの現体制になってトライアンフは不死鳥のように完全復活した。パワフルで、なおかつ独特のトルキーな特性をもつ新設計の水冷3気筒エンジンを搭載したユニークなモデルは世界からの熱い支持を集め、デイトナ、ボンネビルなどのヒットモデルを続々と生み出す。そしてあっと言う間に、世界中のモーターサイクル・エンスージアストから一目おかれる、ユニークな存在のメーカーとなった。

そのトライアンフが、6年の開発期間をかけて発表したマシンが、この『タイガー・エクスプローラー』だ。そのルックスは、2011年日本でも発売されたタイガー800/XC に一見よく似ているが、まったくの別物だ。エンジンはもとより、シャシー、駆動方式までまったく異なる完全なニューモデルである。

スポーツ性と快適性、万能性といった点ではタイガー800/XC の延長線上にあると言えるエクスプローラーではあるが、最大の違いはそれらよりもはるかに広い移動範囲を想定していること。“超” がつく長距離ツーリングを想定しているのだ。

タイガー・エクスプローラーは、時に悪路を走らねばならない状況もありえる長距離ツーリングにおいて、最高峰の快適さと速さ、楽しさ、スポーツ性、そして頑丈さを実現すべく設計された。ターゲットとなるライバルは、ずばり BMW R1200GS だ。スペイン南部のマラガで開催された発表会では「R1200GS よりも安い価格で、GS に勝るとも劣らない装備と性能をもたせた」と、開発主幹のサイモン・ウオーバートン氏が断言するほど、BMW へのライバル心をむき出しにしたチャレンジャーなのである。

トライアンフ タイガーエクスプローラー 特徴

トライアンフ タイガーエクスプローラー 写真
トライアンフ タイガーエクスプローラー 写真
トライアンフ タイガーエクスプローラー 写真

巨大! しかし乗ってみると
意外なほどコンパクト

トライアンフ タイガーエクスプローラー 写真

エンジンは新生トライアンフの象徴と言える水冷DOHC3気筒だが、このモデルのためだけに専用設計された完全なニューモデルだ。排気量は1,215cc。

このエンジンでは、長距離の旅を快適かつ確実なものとするために様々な工夫が盛り込まれている。そのひとつが、シリンダー背面に置かれたクラス最大容量となる 950W のジェネレーター。近年、ますます必要の高まっているグリップヒーター、シートヒーター、そして GPS などのアクセサリーに対応するための装備だ。2輪用ジェネレーターは普通、エンジン回転とジェネレーターの発生させる電力が比例するのだが、このジェネレーターではエンジン回転に関係なく必要な電力を随時発生させる設計としている。

トライアンフ タイガーエクスプローラー 写真

シリンダーとクランクケースは、トラブルの発生を未然に防ぐため、冷却やオイル潤滑のためのホース類を極力少なくするべく設計されている。また、ピストン裏へのオイル噴射システムや、オイル・ウオータークーラーをエンジン内部に設けること、ピストンやシリンダーの素材や構造を煮詰めることでメンテナンスサイクルの長期化も実現。通常のメンテナンスは1万6,000km まで行わなくてもよい耐久性をもたせている。

エンジンの特性もユニークだ。最高出力も 137PS と R1200GS の 110PS を凌駕するものだが、121Nm(12.33kg-m)の最大トルクを 2,000rpm 付近からほぼフラットなカーブで維持し続けるものとされている。

タイガー800/XC よりも一回り大きなエンジンを支えるシャシーも新設計だ。駆動方式を片持ち式のシャフトドライブとすることでメンテナンスをほぼフリーにしていることはもちろん、工具不要でイニシャル調整可能なリアサスペンションを採用。快適さとスポーティさ、そしてタンデムに備えた設計としている。

トライアンフ タイガーエクスプローラー 試乗インプレッション

まさに世界の果てまで行ける
ハイテクアドベンチャーマシン

トライアンフ タイガーエクスプローラー 写真

間近で見ての第一印象は「巨大」ということだ。大きく左右に張り出したタンクガードのせいもあって「大きすぎるんじゃないか」と思わせられるくらい威圧的なフォルムである。

しかし、実際にまたがってみるとそんな不安は消えてしまう。大きいことは大きいのだが、リラックスできるライディングポジションと思った以上によい足つきのせいで、またがったときの感覚はタイガー800 などと大差なく、拍子抜けするほどだ。さらに、このシートは高さを2段階に調整できるのでシート高をもっと下げることもできる。それでも不安、というライダーにはオプションでさらに低いローシートも用意されるので、身長 160cm くらいあれば問題はない。むしろ、自信のないライダーは「こんな大きなバイクに恐怖感なく乗っている」という誇りすら得られるんじゃないだろか。

タンク前部のくぼみのメインスイッチをひねると、エンジンは軽い振動の後にあっさりとスタートする。3気筒特有の、マルチともツインとも異なるややざらつきのある滑らかなフィール。スロットルはケーブルを使用しない電子制御式のフライバイワイヤのためかやや違和感が残る印象だ。数時間乗ったらなれてしまったが。

1,215cc という排気量、押し出しの強いルックスと裏腹に、クラッチをつないで走りだした瞬間の印象はじつにマイルドなものだった。トラクションコントロールと点火マッピングによるものだろうが、滑りやすい路面でアクセルを大きく開けてもリアが滑りだすようなことはなく、ジェントルに発進していく。

この印象は低速域から高速域まで一貫して同一で、後ろに置いて行かれるような乱暴な加速を求めるライダーは、やや物足りなさを感じるかもしれない。しかし、加速が悪いという意味ではなく、高速での追い越しなどここ一発の加速がほしいときにはシフトダウンなしでも必要なトルクを一瞬で取り出せる。

ジェントルかつ十分にパワフル、トルクフルな特性と、ライダーへの風圧を和らげてくれる大きめのスクリーン、張り出したタンクのおかげで高速走行はじつに快適。さらに、このエクスプローラーにはクルーズコントロールまで装備されている。右側のスイッチボックスに配置されたスイッチをオンにし、巡航したい速度で設定ボタンを押すとその速度をキープしてくれる。設定速度はスイッチで 1km/h 刻みで調節可能。前後のブレーキは ABS を採用しているので、ラフにドーンとかけてもきっちり減速してくれる。どこからどこまで痒いところにすべて手が届いている、といった印象のバイクで、今回は7時間ほどで約 400km を走るツーリングに出かけたのだが、疲れはほとんど感じなかった。

トライアンフ タイガーエクスプローラー 写真

マイルド、ジェントル、快適…なタイガー・エクスプローラーだが、決して鈍重というわけではない。今回の試乗会では、かなりハイスピードで走るリーダーに率いられてタイトなワインディングも走ったのだが、フルブレーキングして深くバンクさせ、全開で立ち上がるような走りもきっちりこなしてくれる。

最初は1人乗りだとちょっと固めかな? と思ったサスペンションが、こうしたシーンではいいフィールに変わる。しっとりとした接地感と、滑りだしても恐怖感のないコントローラブルなフィール。実際、ワインディングでは何回か前後とも滑りだすようなシーンもあったのだが、トラクションコントロールのおかげで恐怖感なく切り抜けられた。このバイクでそうした走りをするユーザーはあまりいないかもしれないが、しかし決して退屈なバイクじゃないのだ。

意外だったのは、混雑した市街地でのストレスが溜まりそうなシーンでも、それを感じないということだ。軽いスロットル、低重心の車体、足つきのよさ、すべてが影響しているのだろうが、ホテルを探しながらゆっくり市街地を走るようなシーンでも不快さはほとんどない。エンジンの熱もよく逃がされており、ひざと太ももが燃えそうだ、ということもない。

おまけに、ダート走行も十分にこなせる。キャストホイールにロード向けのタイヤだからマディやサンドなどは無理だが、砂利道程度であれば舗装路と同じように走ることができる。もちろん、こうした路面でも ABS とトラクションコントロールが生きてくるので、オフロード経験のないライダーでも通過するだけならそんなに不安は感じないだろう。

試乗する前、僕はこのエクスプローラーを、タイガー800/XC がスープアップされたモデルだろう…と予測していたのだが、実際には方向性がはっきり異なるモデルだった。このエクスプローラーは、つま先から頭のてっぺんまで、全てがきっちりと仕上がったツアラーだった。800/XC もその要素はあるのだが、エクスプローラーに比べるとライトウェイトスポーツ的である。エンジンの特性も、800/XC のほうが高回転型でエキサイティングな味付けだ。このエクスプローラーの登場で、逆にタイガー800/XC の位置づけが明確になったとも言えるだろう。

最後に付け加えておくと、驚いたのは発表会で流された、タイガー・エクスプローラーのテスト風景の映像だ。おそらく高さ1メートル以上あるだろうジャンプ台から、この巨体で飛び出して舗装路に着地している映像を見せられたのだ。重量 259kg でそんなジャンプ台を飛んでも壊れないだけでなく、すんなりと着地しているそのシーンに、エクスプローラーへの信頼感が一気に高まった。

午前中に 400km 走り、午後また 400km 走る。そんなロングツーリングをしたいライダーには最右翼と言える1台だ。BMW R1200GS とじっくり見比べられる、素晴らしい基本性能と喜び、そして魅力に満ちていることを断言しておこう。

トライアンフ タイガーエクスプローラー の詳細写真

トライアンフ タイガーエクスプローラーの画像
タイガー800に比べ、ホース類とボルト類が整理されてシンプルな外観になったエンジン。パワー、トルクも申し分ない。
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駆動方式はタイガー800/XCとは異なりシャフトドライブ。乗っていてシャフトだというクセは一切感じない。
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クルーズコントロール、外気温、ツイントリップ、燃料消費率など「トリップコンピューター」機能を備えたメーター。オプションでタイヤの空気圧をリアルタイムに計測する機能まで。
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クルーズコントロールのスイッチが配された右側スイッチボックス。最初からグリップヒーターの装着を想定してハンドルが設計されているので、グリップが細めなのも長所。
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左側にはライト切り替えスイッチ、ウインカースイッチのほか、メーターに表示される情報をセレクトする切り替えスイッチがつく。右側ふたつの大きなボタンはオプションで、上がサブライト、下がグリップヒーター。作動時にはそれぞれ点灯する。
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かなり強くかけてもABSの作動を感じさせない、非常に優れたタッチのダブルディスクブレーキ。
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標準装着されるアルミ製リアキャリアは、オプションのパニアケース、トップケースなどに対応するもの。
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写真のモデルは発売記念モデルとなる「Dパッケージ」。エンジンガード、タイヤ空気圧センサー、サブライト、ハイスクリーン、アンダーガード、ハンドガード、タンクパッドが標準でセットされる。
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リアホイールは片持ちだが、剛性不足を感じるようなことは当然ながら一切ない。軽快なルックス。
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迫力あるタンクまわり。フレームはトライアンフらしい、2本のチューブが配されたダイアモンドタイプ。

SPECIFICATIONS – TRIUMPH TIGER EXPLORER

トライアンフ タイガーエクスプローラー 写真

価格(消費税込み) = 199万9,200円

トライアンフが2012年に送り出す、冒険のための究極の選択肢。新開発1,215ccエンジンとシャフトドライブ、長旅を快適にするハイテク機能など、世界を駆けるアドベンチャーバイク。

  • ■エンジン型式 = 水冷4ストロークDOHC並列3気筒 12バルブ
  • ■総排気量 = 1,215 cc
  • ■ボア×ストローク = 85×71.4 mm
  • ■最高出力 = 137PS(101kW) / 9,000 rpm
  • ■最大トルク = 121Nm / 6,400 rpm
  • ■トランスミッション = 6速
  • ■オイル容量 = 4.0リットル
  • ■サイズ = 全長2,248 × 全幅885 × 全高1,410 mm
  • ■シート高 = 840~860 mm
  • ■車両重量 = 259 kg
  • ■ホイールベース = 1,530 mm
  • ■タンク容量 = 20リットル
  • ■Fタイヤサイズ = 110/80 R19
  • ■Rタイヤサイズ = 150/70 R17

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