トライアンフ タイガーエクスプローラーXC
- 掲載日/2013年08月08日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文/佐川 健太郎 写真/バイクブロス・マガジンズ編集部 動画/MOTOCOM 衣装協力/HYOD
オフロード性能を高めた
『XC』バージョンが登場”
大型ツアラーのジャンルで一際注目を集めている一群がある。 「アドベンチャーツアラー」と呼ばれるモデルだ。強力な大排気量エンジンと悪路を走破できるタフな足まわりを備え、長距離高速走行に対応したウインドプロテクションと充実した旅の装備をまとった最強のツアラーである。加えて最近では、ABS やトラクションコントロールなどの電子デバイスにより安全性も飛躍的に高められ、本当の意味での “マルチパーパス” となった。
2013年は BMW R1200GS の新型がデビューし、KTM もブランニューモデルの 1190 アドベンチャーを投入するなど、ますます活気を帯びてきているアドベンチャーツアラーだが、そこにトライアンフから新たな挑戦者として、『タイガーエクスプローラーXC』 が登場した(XC=クロスカントリーの略)。オフロード性能をさらに高めた “探険家” の実力を探ってみたい。
トライアンフ タイガーエクスプローラーXC 特徴
“探検家”の名にふさわしい
長距離多目的ツアラー
エンジンや車体は基本的に STD モデルであるタイガーエクスプローラーと共通で、137PS のパワーを発生する新開発の3気筒 1,215cc エンジンを強靭なスチールチューブフレームに搭載。フロントには 19 インチホイールと 190mm のストロークを持つφ46mm 倒立フォークを装備し、リアの片持ちスイングアームには 17 インチホイールとプリロード&減衰力調整機構付きのリンク式モノショックを装備、150 サイズのワイドラジアルタイヤが強力なパワーを受け止める。駆動系にシャフトドライブシステムを採用することで、メンテナンス性を高めている。
タイガーエクスプローラーにはフラッグシップに相応しい、最先端の電子デバイスが搭載されているのが特徴である。新開発のエンジンには、電子制御化が進んでいることも特徴だ。ライドバイワイヤ方式の電子スロットルシステムやクルーズコントロール、トラクションコントロール、オン/オフ切替式 ABS が標準装備され、高速走行からダートセクションに至るあらゆる環境下での安全性とスタビリティの確保に貢献。ライディングを積極的にサポートするオンボードコンピューターも搭載される。
快適性の追求にもぬかりはない。人間工学に基づいてデザインされたシートは、840/860mm の2段階に設定され、大型スクリーンとハンドルバーの高さも調整可能。タンデム性能を高めたリアシートには大型グラブバーを装備し、快適性と安全性を向上。大容量 20 リットルの燃料タンクにより、400km 無給油を実現する。さらに 60 リットル容量のツーリングパニアシステムと、35 リットル容量のトップボックスや、複数の電気アクセサリーを同時に使用することが可能な大容量 950W ジェネレーターや電源ソケットを標準装備。
そして、XC 独自の装備として注目したいのが、新設計のスポークホイール。タイヤサイズは STD と同径だが、ワイヤースポークとすることで未舗装路での走破性を高めている。チューブレスタイヤも装着できるためタイヤ選択肢も広がっている。他にも走行風や飛び石からライダーを守るハンドガードや、55W デュアルフォグランプ、φ22mm のエンジンガード、アルミ製ペリーパンなどを標準装備し、ヘビーデューティな使い方にも耐える仕様となっている。より安全で快適なバイク旅の中にも、ライダーの冒険心を満たしてくれるガジェットを満載したモデルだ。
トライアンフ タイガーエクスプローラーXC 試乗インプレッション
高速クルーズはメガスポーツ並み
オフロードの走破性も期待以上
とにかく大きい。エンジンも巨大で、そこに停めてあるだけで存在感に圧倒される。跨ってみると意外にもシートは低く、足着きは悪くない。タイガー 800 と比べても楽なぐらいだ。ただ 260kg という重量はさすがに手強く、特に燃料満タンにすると直立したエンジンのレイアウトにも影響されるためか、けっこうグラッとくる感じはある。低速でのバランスにはけっこう気を遣う。その一方で、コーナリングでは高い位置から車体を落とし込んでいくようなダイナミックさがあり、1,200cc オーバーのみなぎる3気筒パワーで巨体を振り回して走ることができる。重量車を操っているという手応え、満足感はこの上なく得られるはずだ。けして軽快とは言えないが、節度を持ってリズミカルに切り返せば、ワインディングでも豪快な走りを楽しむことができる。3気筒独特の、やや湿り気を帯びたハスキーヴォイスも魅力である。
オフロードも想像以上に走れてしまう。電子制御スロットルの滑らかな出力デリバリーとトラクションコントロールにより、巨大トルクを自分の支配下に置くことができる。ことさら滑りやすいダートにおいて、トラクションコントロールの恩恵は大きい。あり余るパワーと重量を扱うには、よほどの技量がない限りまずコントロール不可能だろう。それが進化著しい電子デバイスの恩恵により、滑りをコントロール範囲に抑えて安全なコーナリングを楽しませてくれる。ちなみに、オン/オフ切り換え式の電子制御 ABS は自然なフィールで、個人的にはオフロードでも作動させた状態のほうが安心と思った。
サスペンションはややソフトな印象で、コーナー手前で強くブレーキングすると、予想より大きめにピッチングが出る。それだけ重量の影響を受けているのかもしれないが、特にフロント側のサスペンションは少しプリロードを強めたほうが安定感は増すように感じた。とりわけ未舗装路を走る場合は、プリロードをやや強めにかけて、残ストロークを稼いだほうがギャップ越えなどでは安心できると思う。XC はスポークホイール仕様とするなど、オフロード性能がウリになっているので、その点でも欲を言えばサスペンションは前後フルアジャスタブルタイプにして欲しいところだ。
高速道路には乗る時間はなかったが、以前 STD モデルに試乗した印象を参考までに書いておく。タイガーエクスプローラ-というモデルは、実は高速道路が最も得意とするステージに思えた。大排気量直列3気筒が生み出す怒涛のトルクは頼もしい限り。もともとワイドレンジなトリプルエンジンの特性に 137PS の余裕のパワー。シフトは何速からでも、スロットルを開けた分だけ加速していく。ちょっとしたメガスポーツ並みの加速力である。高速コーナーのスタビリティも素晴らしく、低速域ではネガティブに映った重量が一転してメリットとなり、路面に貼りつくような安心感を与えてくれる。快適なライディングポジションと風圧を跳ね除けるウインドプロテクションとハンドガード、そして、ABS やトラクションコントロールなどの安全装備の数々に支えられ、快適に距離を伸ばすことができた。
タイガーエクスプローラーは圧倒的なパワーと車格を活かして、環境さえ許せば 200km/h オーバーの高速移動を楽に快適にこなすとともに、必要があれば荒れた未舗装路を安全確実に走破できる能力を持ちあわせたマシンである。単なるアドベンチャーツアラーの枠を超えた、いわば “オールラウンド・メガスポーツ” のような存在と言ってもいいだろう。XC はさらにその領域を広げたモデルである。大陸型のモーターサイクリングを楽しみたい方、または、その夢を追いかけたいライダーには、是非おすすめしたい。
トライアンフ タイガーエクスプローラーXC の詳細写真
SPECIFICATIONS –TRIUMPH TIGER EXPLORER XC
価格(消費税込み) = 211万8,480円
水冷3気筒1,215ccの強力なエンジンを搭載するアドベンチャーツアラー『タイガーエクスプローラー』にスポークホイールを採用したオフロードバージョン。ハンドガードやフォグランプを装備し、冒険スタイルを強化。
- ■エンジン型式 = 水冷4ストローク 並列3気筒 DOHC 4バルブ
- ■総排気量 = 1,215cc
- ■ボア×ストローク = 85×71.4mm
- ■最高出力 = 137PS(104kw)/9,300rpm
- ■最大トルク = 121Nm/6,400rpm
- ■トランスミッション = 6速
- ■サイズ = 全長2,248×全幅962×全高1,410mm
- ■車両重量 = 267kg
- ■シート高 = 837mm/857mm
- ■ホイールベース = 1,530mm
- ■タンク容量 = 20リットル
- ■Fタイヤサイズ = 110/80-19
- ■Rタイヤサイズ = 150/70-17
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