トライアンフ タイガースポーツ
- 掲載日/2013年08月29日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン 取材・文/田宮 徹 写真/宮崎 雄司
アドベンチャースタイルの
快速ストリートスポーツ
現代トライアンフを象徴するアイテムのひとつとなっている並列3気筒エンジンを搭載した 『タイガー1050』 は、アップライトなライディングポジションと豊富な前後サスペンションストロークを備えた、アドベンチャー系のオンロードスポーツツアラーとして活躍してきた。これをベースに開発されたのが、2013年型で新登場した 『タイガースポーツ』 だ。イギリス本国などでは、従来型タイガーと新型タイガースポーツが併売されているが、日本では排気量 1,050cc で「タイガー」を名乗るモデルは、2013年夏現在ではこの1機種のみとなる。ちなみにアドベンチャーシリーズとなる「タイガー」としては、このほかに 1200 と 800 がある。
トライアンフ タイガースポーツ 特徴
10馬力アップされたエンジンと
片持ちになったスイングアーム
このタイガースポーツは、従来型のタイガー 1050 をベースとしている。まずエンジンは、排気量 1,050cc の水冷並列3気筒で、これは従来型と変わりないが、最高出力は 10 馬力アップされて 125 馬力となった。さらに、最大トルクは従来型より約 2,000 回転も低い 4,300 回転で発生するようになり、ごくわずかながら最大トルク数値もアップした。
車体では、まず目を引くのが片持ち式リアスイングアームの採用だ。両持ち式だった従来型タイガー 1050 と比べると、スタイリング的にもスポーティになった。ロングスイングアーム化も図られ、ホイールは軽量化が施された新作の鋳造タイプを採用している。シートは前後席ともに快適性などが見直され、シート高は5mm低減された。
なおこのモデルは、メーターパネル部からの操作によってオフにもできる ABS を標準装備。パニアケース1個当たりの積載重量が10kgとなる、新しいトライアンフ・ダイナミック・ラゲージシステムにも対応している。
トライアンフ タイガースポーツ 試乗インプレッション
市街地での扱いやすさを生む
中速域重視のセッティングも魅力
従来型タイガー 1050 に比べればシート高は5mm低減されているが、さすがに欧州生まれのアドベンチャー系スポーツモデルとあって、シートポジションは高め。身長 167cm で体重 63kg の筆者がまたがった場合、両足の裏が4分の1ほど接地する。しかし車体バランスが良いためか、そのような状態であっても支えていることに不安は少ない。
また、押し引きによる取り回し時には、車両重量 235kg という重さを感じるが、こちらも実際にまたがって走り出してしまえば、車体の大きさは感じるが、重量が気になることはなかった。
さて、現在のトライアンフと言えば、伝統的なバーチカルツインエンジン以上に、並列3気筒エンジンのレイアウトを売りにしている。ごくありきたりに「並列4気筒と並列2気筒のいいとこ取り」などと表現されることも多いこのエンジン特性は、市街地でのスポーツ性ということを考えた場合、フラットトルクなどのメリットが多い。もちろんこのタイガースポーツにも、並列3気筒の良さが活かされているが、従来型タイガー 1050 からアップデートしたことで、さらにフィーリングはよくなっている。
とくに気持ち良かったのは、低中回転域での力強さ。わずか 4,300 回転で最大トルクを発揮するようになったエンジンは、市街地であれば 3,000 回転でも十分交通の流れに乗っていける。低中回転域で全閉状態からアクセルを開けると、ややドンツキが多く感じられるシーンもあったが、豊かなトルクで走る心地良さがある。
一方で、高回転域まで回す楽しさも、このモデルには詰まっている。低回転域からアクセルをワイドオープンすると「ドリュリュリュリュ…」という並列3気筒エンジンならではの音とともに、スムーズかつ力強い加速力が生み出される。ギア比はショート化され、レブリミットとなる1万200回転まで回したときに、1速で 100km/h 弱、2速で約 130km/hまでという設定。しかも低中回転域がトルクフルなので、クルージングでもスポーティなライディングでも、日本の道路事情によく合う。
基本的にはどの回転域でも楽しく走れる仕様だが、よりアグレッシブに走るなら、7,000 回転から上がおもしろい。もっとも、車両の特性を考えれば、ギンギンに回してスポーツするというよりも、適度な回転域をキープしてスマートにワインディングを駆け抜けるほうが、より向いているはず。回転数によって、ライダーが意図するパワーをイージーに取り出せるこのパワーユニットなら、そんな走りも余裕で可能だ。
また車体は、アドベンチャー系のスタイリングながら、かなりオンロードスポーツを意識した仕様となっている。リアスイングアームの刷新をはじめ、ディメンションが見直されたことから、コーナリング性能は従来型タイガー 1050 と比べて向上。低速域ではややハンドル舵角を多めに感じさせながら、高速域ではナチュラルに、このスタイリングからは想像できないほど鋭く曲がる。フロントタイヤには接地感があり、不安は少なめ。日本の狭いワインディングでは車体が大きいことによる圧迫感があるが、あまり身構えずにコーナーへとアプローチすれば、拍子抜けするほどスルリと曲がっていく。
前後サスペンションは、日本の道路事情からすると硬めに感じられる。ホイールトラベル量そのものは多めに設定されたモデルだが、荷物を積まずに1人で乗る場合、もっと多めに足が動く仕様としたほうが、個人的には心地よく安全にスポーツ出来そうだと思えた。幸いにもこのモデルは、フロントサスペンションがフルアジャスタブルで、リアサスペンションもプリロードと伸側減衰力の調整が出来る。是非、自分のベストセッティングを見つけてほしい。
なお、このモデルには ABS が標準装備されている。その制御は信頼度が高く、路面状況や天候が刻々と変化することもあるツーリングシーンでは、絶大な安心感を生んでくれる。メーターパネルを操作すれば簡単にオフにもできるが、基本的には常時オンでのライディングをお薦めしたい。
ここ最近、欧州ばかりでなく日本でも人気が高まっている、マルチパーパス系のオンロードスポーツにあたるタイガースポーツ。並列3気筒エンジンの特性とスポーツ方向に振られた車体を楽しめるこのアップデートモデルは、日本の道にもフィットする、懐の深いオールラウンダーだった。
トライアンフ タイガースポーツ の詳細写真
SPECIFICATIONS – TRIUMPH TIGER SPORT
価格(消費税込み) = 144万9,000円
タイガー1050の進化モデルとして、各部をリニューアルして2013年型で新登場した3気筒モデル。オンロードでのスポーツ性を主題とした、日本の道路にもマッチするオールラウンダー。
- ■エンジン型式 = 水冷4ストローク 並列3気筒 DOHC 4バルブ
- ■総排気量 = 1,050cc
- ■ボア×ストローク = 79.0×71.4mm
- ■最高出力 = 92kw(125PS)/9,400rpm
- ■最大トルク = 104N・m(10.6.kgf-m)/4,300rpm
- ■燃料供給 = フューエルインジェクション
- ■トランスミッション = 6段リターン式
- ■サイズ = 全長2,150×全幅835×全高1,310mm
- ■ホイールベース = 1,540mm
- ■シート高 = 830mm
- ■車両重量 = 235kg
- ■燃料タンク容量 = 20リットル
- ■Fタイヤサイズ = 120/70 ZR17
- ■Rタイヤサイズ = 180/55 ZR17
- ■ブレーキ形式(F/R) = 油圧式ディスク/油圧式ディスク
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