VIRGIN TRIUMPH | 伝説の三叉槍が満を持して復活を遂げた、トライアンフの新型トライデント 660を試乗インプレ 試乗インプレッション

伝説の三叉槍が満を持して復活を遂げた、トライアンフの新型トライデント 660を試乗インプレ

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TRIUMPH TRIDENT 660(2021)
スピードトリプル、ストリートトリプルに続き、ロードスターセグメントの一員として新たに加わったトライデント 660。トライアンフの魅力を、多くのライダーに伝えるための要素が凝縮されたモデルだ。

トライアンフのターニングポイントに登場する
海神ポセイドンが操る三叉槍

トライデントというモデル名を聞いて懐かしいと感じたならば、バイクのエンス―ジアストと呼べる方かもしれない。なぜなら、トライデントは以前にも幾たびかトライアンフのラインアップに存在したことがあるからだ。最初は1968年に登場したT150トライデントであり、これはトライアンフ初の三気筒エンジンを搭載したモデルだった。同年にホンダからCB750Fが登場し、世間の注目はそちらに向けられてしまうが、そもそもトライアンフが3気筒エンジンを開発しているとの情報を得てCB750Fの4気筒エンジンに着手したという逸話もある。

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そしてその次は1991年、ヒンクレー工場の稼働で復活の狼煙を上げたトライアンフのニューモデル陣の内の一台としてトライデント750/900が登場している。このようなことから私はトライアンフ社の重要な局面でトライデントというモデルが打ち出されてきたというイメージを持っているのだが、2021年に導入された新生トライデント 660とは、いったいどのようなモデルなのだろうか。

トライデント 660 特徴

ミドルトリプルエンジンを使い
どのようなキャラクターに仕立てたか

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現存する英国モーターサイクルブランドとして幅広く認知されているトライアンフ。70~80年代にかけて破竹の勢いで成長を遂げていった日本製モーターサイクルの台頭により、一度は窮地に立たされていたこともあったが、ヒンクレー工場の設立、そこで行われたモジュラーコンセプトによる車両開発によって90年代には見事に業績を建て直し、今では世界中のライダーに支持されるプレミアムモーターサイクルブランドとして確固たる地位を築いた。

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トライアンフ最大の魅力と言えば、伝統的なバーチカルツイン(二気筒)エンジンとオリジナリティのあるトリプル(三気筒)エンジンの存在に尽きるだろう。そんなトライアンフから最新モデル、トライデント 660が登場した。そもそもそのモデル名はギリシャ神話に伝えられる海神ポセイドンが持つ三叉槍の事を指す、トライデントという名称であり、それはトリプルエンジンにも通じるものだと私は解釈している。

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トライデント 660は排気量660ccの並列3気筒エンジンを搭載しており、これはストリートトリプルSに搭載されている物をベースとしながら、使われる60点以上のパーツを新規設計としたものだ。2019年度よりロードレース世界選手権のMoto2クラスのバイクで使われているワンメイクエンジンが、トライアンフのミドルサイズ3気筒エンジンであり、そのままではないにせよ、割と近しい親戚にあたると考えてもらってよい。ストリートトリプルはパンチの効いたキャラクターで、ライトウエイトスポーツバイクの指標的モデルであり、それとの違いを確かめること、さらにはトライデントがどのようなキャラクターであるのかということに照準を絞り吟味する。

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トライデント 660 試乗インプレッション

過剰な刺激は持たず
だからじっくり乗り倒せる

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トライデント 660に乗る前に、違いを探るべく、あえてストリートトリプルRローを借用していた。だから、乗り換えて走り出した瞬間に、両者のキャラクターの違いに大いに驚かされたことを、まず書き残しておく。ストリートトリプルRローはトライデントと比べて排気量が大きいことや(ストリートトリプルSは同排気量)、どちらかというと、かなりスポーツ志向の高いチューンがされているエンジンであることは理解していたのだが、それにしても入れ替えで走り始めたトライデントのエンジンはとてもマイルドに感じられた。右手の動きにピッタリ連動して「車体をスパッと前方へワープさせる」ような動きを見せるストリートトリプルに対して、スロットル操作に対し、若干緩さがありながらも「グッと太いトルクで前へと押し出す」のがトライデント 660だ。それにライディングポジションに関しても若干上体が立ち気味の姿勢となるため、トライデント 660の方が楽な印象を受ける。

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全体的に乗りやすいセッティングだということが第一印象だった。倒立フォークであるにも関わらずハンドルの切れ角も大きく設定されているし、ラフなスロットルワークでもギクシャクしない、つまり込み入った市街地などで低速での走行も気軽るだ。ワイディングでも一般的なスキルのライダーであれば十分にスポーツ走行を楽しめるポテンシャルを持っており、ファン度合いはかなり高い。一点だけ、走りの面で気になったことは高速走行時で、6速トップギアを使い時速100キロで走らせると、5000回転をキープしなければならなく、ややノイジーに感じたことであるが、慣らし中の車両であったので、もう少し距離を重ねれば角が取れるのかもしれない。

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ストリートトリプルRローとの入れ替えだったことで、乗り出した当初こそ、その性格の違いに戸惑ったものだが、日々を共にする間、トライアンフが新しい層への訴求を意図して作ってきたのかもしれないと考え始めた。必要にして十分な運動性能を持ちつつ総じて柔らかい味付けとされており、むしろ過度でないスポーツ性は万人に向けたものと思える。そして高い走行性能はもとより、2種類のライディングモードの設定やトラクションコントロールの装備、オプションのコネクティビティシステムを追加すれば、ディスプレイ上でターンバイターンナビゲーションや、電話、音楽、GoProなども連動できるなど、安全及び快適装備面にも抜かりが無い。

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デザインに関してもシャープというよりファニーな感じであり、メーター周りやスイッチ類などに目新しさは感じさせるもののオーソドックスな纏め方がされている。長いことバイクに携わる仕事をしてきたということもあって、個人的にはパイプフレームに丸いタンクが載っているのが、少々野暮ったく見えてしまうことも白状しておこう。しかし、現在バイクに乗っていない旧ライダーや業界関係者ではない人などの前に持っていったところ、ストリートトリプルRローよりもトライデント 660の方が食いつきが良く、魅力的なものに見えると口々に言われた。そのようなことからトライデント 660は今求められているスタイルなのだということが分かった。この裏側には時代の変化というものがあるのだろう。トライアンフにはボンネビルシリーズというクラシックラインが存在するが、それとも違う路線にトライデント 660はあり、それは新しいユーザーを獲得するための一手なのである。

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価格は97万9000円と100万円を切る設定とされた。ミドルクラスのスポーツバイクは乱立しておりライバルが多く存在する中で、これは戦略的なものだと思える。ただやはり最終的に選ばれるのは価格云々ではなく、「求められるもの」であり、キャラクターやオリジナリティ具合から考えても、トライデント 660にはその素質が多分に備わっているのである。

トライデント 660 詳細写真

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ストリートトリプルSに搭載される660cc並列三気筒エンジンをベースとし、ボアを縮小しストロークは拡大されている。クランク、クラッチ、ギヤなども新設計とされており、独自の路線を貫いている。
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ブラックアウトされたショーワ製φ41mm倒立式セパレートファンクションフォークを採用する。ストローク量は120mm。フロントブレーキはニッシン製2ピストンキャリパーをダブルで備えている。
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現在2眼ヘッドライトが主流となっているトライアンフのロードスターカテゴリーモデルにおいて、トライデントは1灯ヘッドライトとしている。リフレクタータイプでベゼルは黒く塗られた。ヘッドライト、ウインカーなどLEDを採用。
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エンジンから続くギアボックスが高い位置に備わっていることもあり、シフトロッドは長めに見える。ステップ位置は若干バックステップ気味の位置にセットされている。
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リアサスペンションはショーワ製のモノショックが、やや寝かし気味にセットされている。プリロード調整機構が備わっているので、シチュエーションに合わせて適宜調整を行いたい。ストローク量は133.5mm。
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ライセンスプレートホルダー及びリアウインカー類は、スイングアームから片持ちのアームが延長され備わっている。すっきりとしたテール周りを演出するとともに、リアフェンダー機能も兼ねている。
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湾曲を描いたデザインを持つスチール製両持ちスイングアームを採用。タイヤサイズはフロント120/70R70、リア180/55R17とされ、現在のスポーツバイクではベーシックな設定とされている。
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サイレンサーはほぼ車体の真下に備わっており、マスの集中に寄与する。ユーロ5に対応。トライアンフ特有のトリプルサウンドは健在で、心地よいエキゾーストノートを楽しむことができる。
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TFTカラーディスプレイのマルチファンクションメーター。オプションに設定されているコネクティビティシステムを導入すると、ターンバイターンナビゲーションをはじめとした各種機能の表示も可能となっている。
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左スイッチボックスの十字ボタンにて、各種メニューを呼び出し、操作することが可能だ。説明書を読まずに触っても特に問題なく使いこなすことができた。コネクティビティシステムを導入すればさらに利便性は高くなるだろう。
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チューブラースチールフレームにセットされたボリューミーで丸みを帯びた燃料タンク。トライアンフロゴをあしらった大胆なグランピングパターンが目を惹く。容量は14Lとされている。
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シート高は805mm。低めの設定とはいえないが、シート前方に向かって細くシェイプされているため、足つき性はスペック以上に良い。グラブバーがオプションで用意されているので、タンデムユーザーはチェック。
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すっきりとシンプルに纏められたテールセクション。テールランプはLEDで、その周囲を赤くしボディと塗り分けている。先端にさりげなくエンブレムマークがあしらわれているのもポイントだ。
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シート下にはバッテリーをはじめ電装系の部品が収められている。ユーティリティ的に使えるスペースの余裕は少なく、ETC車載器もギリギリ設置できるかどうかといったところだ。

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