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ストリートツイン 長期インプレ vol.03【ライディング編】

まずは高速走行をチェック!

ストリートツインの画像

これまで通勤など街中で乗ってきたことで、従来の空冷ボンネビルや、筆者が愛車で日々乗っているボンネビルT100に比べると、格段にきびきびしていて、走りやすいことが分かった。

今回は、街を飛び出して大型バイクの本領であるツーリングでの性能をチェックしていく。まずは東京都心から東名に乗り小田原厚木道路で箱根に向かった。

高速道路で求められる性能は、長時間のハイスピード走行での快適性だ。ストリートツインは、以前のクラシックシリーズに比べて、排気量が865ccから900ccにアップされている。ただ、最高出力は55PS (40.5kW) 5900rpmで、最大トルクは80Nm 3230rpmと、いずれも思いきり低めに振られているのが特徴だ(空冷の前シリーズは、最高出力68PS(50kW)5900rpm、最大トルク68Nm 5800rpm)。

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出力特性の違いは、街乗りでは瞬発力の高さを発揮して如実に現れた。同様に今回、高速道路を走っていても以前のモデルとはまるで異なるマシンだと実感した。

発進から高速道路の巡航スピードまでの加速はものすごく速くなった。ただ時速100kmに近くなると伸びやかさが失われてくる。瞬間的にさらにスピードを上げることは可能だと思ったが、時速100kmでの巡航はボンネビルT100の方が楽だと感じた。

クランク角が360度から270度になったことも走り心地に大きな違いを生んでいる。360度のボンネビルT100は時速100km程度でトコトコと分かりやすいリズムを刻んで、流すのが最高に気持ちいいと筆者は思っている。

対してクランク角270度となったストリートツインでの時速100km巡航は、ずっと同じスピードで走っていることでの快感は少ない。

360度のバーチカルツイン然とした従来の鼓動に慣れてしまっていると、270度クランクは妙に急かされているようで、一定のスピードで走り続けるのを拒んでいるかのような印象を受けたのだ。

ただ、5速ミッションの4速でも時速100kmは余裕で出るし、もっと高いスピード域までの加速は充分行なえる印象だった。高速道路での遅いクルマの追い抜きには困らないだろう。

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前輪がボンネビルT100より1インチ小さい18インチになり、軸間距離も85mm短い1415mmになったことで直進安定性を落としたことも大きな要因だろう。

車体サイズは見るからに身長175cmの筆者にはコンパクトで、上半身は完全にむき出し状態。上体を起こした楽な姿勢だと、速度が高まるとともに風の壁を強く感じた。スピードを上げて速く走っているつもりが、メーターを見ると思ったほど速度が出ていないこともたびたびあった。

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風の壁を感じるが、すっきりしたメーター周りは景色を楽しむのには向いている。海岸線の国道を流したりするのはとても気持ちよさそうだ。

快適性を上げるためには風防を装着して、整風効果を高めるという手もあるが、相当背の高いスクリーンを装着しなくては効果が薄い気がする。ノーマル状態でのすっきりしたスタイリングのバランスが崩れてしまいそうだ。

ワインディングでは本領を発揮!

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自動車専用道路を降りて、箱根のワインディングを駆け上がると、ストリートツインが生き生きとしてきた。

18インチのタイヤとコンパクトな車体は、ボンネビルT100に比べると格段にコーナリング性能に優れる。そして、低回転での力強さ、スロットル・バイ・ワイヤによるアクセルレスポンスのよさが光る。くねくねと走ることが楽しく、大型バイクでは走りにくさを感じるタイトな峠道もなんのその。中型バイクのような車体サイズと、低めに振られたパワーバンドは日本の峠との相性がすこぶるいい。

また、スリップアシスト機能付きのクラッチ、も好感触だ。シフトチェンジが軽くてスムーズに行なえる。ワインディングでの走行ではとくに嬉しい。ボンネビルT100で走るよりも数段上手くなった気分になれた。

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立ち気味のキャスター角のフロントサスペンションはハンドリングが軽く、コーナリング性能に大きく貢献している。サスペンションは固めの印象で、ちょっとしたギャップでもスピードが乗っているとおっかなさを感じた。

フロントブレーキはシングルディスク。車両が軽いので充分と思えたが、2016年3月に発売されたボンネビルT120はダブルディスクなので、そちらも気になる。

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リアサスペンションはツインショック式。こちらも立ち気味で、やはり固さがあり、ギャップをまたぐと振動はお尻にも強めに伝わる。その分、加速の際の瞬発力を発揮し、機敏な走りに貢献する。

リアブレーキもディスクが採用されている。ABS標準装備で、ロックする心配もない。

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個人的に走っていて一番気になったのはニーグリップのしにくさ。筆者は脚が短いとよく言われるが、このマシンでの足付きは両足ベタつきだ(シート高は750mm)。しかし、自然にまたがった状態ではタンクの一番押さえ込みたいところに膝頭がやや届かない。

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そこでステップにつま先立ちするようなかたちで膝を上げた。こうすると膝でのグリップと同時に踵側面でのグリップ力も上がり、バイクとの一体感が高まった。ただ、この姿勢での長時間走行はけっこうしんどい。

また、よりホールド感を高めるため、燃料タンクにニーグリップパッドを取り付けたいと思った。ボンネビルT120には標準装備されている。

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シートはなるべく後ろ気味に座ると前傾姿勢になって、見た目もかっこよくなるが、筆者はニーグリップが不安定になると怖いので、膝の位置を優先でポジションを固めた。シート高は750mmとかなり低く、軽さも相まって女性ライダーでも扱いやすいモデルである。

ちなみにこの日、250kmほどの走行となったが後半はお尻を気づかいながら走った。スーパースポーツまでとは言わないが、シート厚はだいぶ薄いようだ。

トラクションコントロールが備わっている!

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トラクションコントロールが標準搭載されているのもストリートツインの大きな魅力。トラコンは晴天時のオンロードではほとんど体感できなかったが、万が一のとき空転しにくいという安心感はある。ひとまずどのくらいの空転で作動するのかを探るため砂利道に入った。

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ストリートツインのトラコン設定はオンかオフの2択で、基本的には常時オンになっていて、オフにしたい場合のみメーターを操作して解除する(一度イグニッションを落とすと次に走り出すときにはオンに戻される)。

写真はオン設定の表示。ttcはトライアンフ・トラクション・コントロールの略。

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フラットな砂利道で、急加速してみたり、発進時にガバッとアクセルを開けたりしてテストを行なった。体感として介入度はアドベンチャー系の車種などと比べると低かった。空転をライダーも体感してから、作動し押さえ込むといった感覚だ。

ちなみにオフロードの走破性は見た目どおり高くはない。硬めのサスペンションとキャストホイールはショックをあまり吸収してくれないのだ。

ただ、足つき性のよさや自然なポジション、トラコンの搭載により、スポーツモデルに比べればだいぶ走りやすい。短い距離なら充分走れるので、ふいに未舗装路に入っても慌てなくてすむ。

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今回は東京から箱根・伊豆を泊りがけで走ったため、着替えなどの荷物が積んでいて、より実践的な走行インプレとなった。ただ、このバイクで驚いたのは撮影中に何度か荷物を外して走ったときのことである。

たった5kgほどのバッグがなくなっただけで、リアの軽快感が増したことを体感できたのだ。排気量が900ccもありパワーは充分なはずだが、乾燥重量が198kgしかなく、とくにリア周りは軽いため、如実に体感として現れたらしい。

前回、街乗りでのタンデムのときは後ろに乗ってもらったほうが「レスポンスが穏やかになり、安心感を得られた」とお伝えしたけれど、峠での印象は真逆で、やはり空荷で走ったほうが本来の性能が活き、走りやすく、楽しかった。

レインスーツとマップ程度の荷物の日帰りツーリングならリアバッグではなく、タンクバッグを装着するか、リュックを背負った方が走りに集中できそうだ。

次回は、今回のツーリングで役立った機能や、積載性が低めなこのマシンでのパッキング・テクニックをご紹介しよう。

プロフィール
西野 鉄兵
ツーリングマガジン『アウトライダー』編集部のデスク。大学生だった2007年にアルバイトで飛び込んで以来、長きにわたって雑誌やWEBの編集に携わっている。バイクの使い方はもっぱらツーリングで、全都道府県と海外数カ国での走行経験あり。普段の愛車は、2005年式のトライアンフ ボンネビルT100。

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