スピードトリプルR 長期インプレ vol.01【スタイリング&ディテール・取り回しチェック編】
- 掲載日/2016年07月13日
- 車両・衣装協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文/佐川 健太郎 写真/山家 健一
最新の「電制」を入れてすべてをアップグレード
トライアンフを代表するスポーツネイキッドモデル、「スピードトリプル」がこの春フルモデルチェンジして登場した。
初期型は1994年に誕生。当時ヨーロッパを中心に流行し始めた“ストリートファイター”をイメージした新たなシリーズとして世界中で人気を博すなど、近代におけるトライアンフの繁栄を築いた基幹モデルと言える。
ストリートファイターとは元々、フルカウルのスポーツモデルをベースに、ストリートでの使い勝手を優先してカウルを剥ぎ取り、アップハンドルなどを装着したカスタムの一種である。SS譲りの優れたパフォーマンスと機敏な運動性能を生かして、エクストリーム競技などでも主流のスタイルとなっている。
スピードトリプルも当初は好みが分かれる武骨なデザインだったが、世代を重ねて洗練され、特徴的な2灯ヘッドライトを搭載したスタイルは独自のアイデンティティを確立。ハリウッド映画「ミッション・インポッシブル」シリーズでも、主演のトム・クルーズがド派手なバイクアクションを演じて見せるなど話題を呼んだ。
ともあれ、スピードトリプルはストリートでの最高にエキサイティングな走りを楽しむために開発されたモデルであり、狙い通りの進化を遂げた最新型でもそのコンセプトにブレはない。
熟成を重ねた 水冷並列3気筒1,050ccエンジンは、中速域での豊かなトルクとトップエンドの伸び切るパワーフィールが魅力で、104箇所もの改良が加えられ最高出力は先代から5psアップの140sp/9,500rpmを実現。最大トルクの向上はもちろん、全域でトルクカーブを引き上げることに成功している。また、最新の排ガス規制「ユーロ4」に適合しつつ、燃料効率も最大10%の向上を果たすなど環境性能の向上も抜かりない。
今回のフルモデルチェンジの要点として、エンジン・マネジメントにシリーズ初となるライド・バイ・ワイヤ方式を採用していることが挙げられる。「トラクションコントロール」と「ライディングモード」を搭載し、これにより安全かつ快適に最新のパフォーマンスを存分に引き出すことができるようになった。
ライディングモードは新型ECUとの連動により、「レイン」、「ロード」、「スポーツ」、「トラック(サーキット)」に加え、乗り手が任意に設定できる「ライダー」モードを加えた5つのモードで構成される。各モードで出力特性やスロットルレスポンス、トラクションコントロールやABSの介入度をフレキシブルに変化させることができるため、ライダーのスキルや路面状況、走行環境に応じて最適なライディングを楽しめることが魅力である。
特に上級バージョンの「R」では、ビレットフィニッシュが施された最高級グレードの 43 mm オーリンズ製NIX30 フルアジャスタブル倒立フォークと同じくTTX36ツインチューブ・フルアジャスタブル・リアモノショック、さらにレース仕様のブレンボ製モノブロックラジアルキャリパーなどの充実した足まわりを装備。
加えて、カーボン製のタンクインサートパネルやフロントフェンダーなどの軽量外装パーツ、そしてレッドカラーに彩られたサイドカウルやサブフレーム、スポーティなアンダーカウルなどを標準装備するなど、「R」に相応しい走りのスペックと見た目のクオリティをアドオンしていることもポイントだ。
先代イメージを踏襲しつつディテールは別モノに
フルチェンジしたスピードトリプルだが、一見すると従来モデルと大きく変わった感じはしない。コンパクトになった先代より車体はさらにスリムになり、全体的なシルエットがややシャープになった感じだ。正直なところ、「これが新型か!」といったインパクトはないのだ。
ただ、先代の写真を取り出して、しげしげと見比べてみると、不思議なことにディテールにはほとんど同じパーツがないことが分かる。バックミラーはハンドルバーエンドに移動しているのですぐに分かるが、タンクやシートの造形やエンジンカバーの形、ヘッドライトやホイールなどの大物パーツもことごとく異なっている。これだけ違っているのに、全体的なまとまりとしてのイメージは完全に先代モデルを踏襲している。
ここまできて、やっと理解した。これは意図的にそうデザインされたものだと。“変わらない良さ”というものもある。ことトライアンフは伝統へのこだわりが強く、売らんがための小細工はしない職人気質のメーカーなので、今回の意図も理解できる。「分かるに人は分かる」「中身で勝負だ」などと考えているに違いない。きっとそうだ。
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