スピードトリプルR 長期インプレ vol.03【ワインディング走行チェック編】
- 掲載日/2016年08月10日
- 車両・衣装協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文/佐川 健太郎 写真/山家 健一
ワインディングで真価を発揮する走りの「R」
さて、いよいよスピードトリプルRをワインディングに駆り出してみた。エンジンに大幅な改良を加え、オーリンズ製前後サスペンションを装備し、新たに電子デバイスを搭載した最新モデル。そう聞くだけで、また磨き抜かれた筋肉質のプロポーションを見ているだけで、走りの予感はヒシヒシと伝わってくる。
それには理由がある。先代モデルの存在だ。先代のスピードトリプルRがデビューしたときもいち早く試乗してみたが、当時先にフルモデルチェンジしていた「ストリートトリプル」の新しい設計思想を受け継ぎ、さらに熟成された車体構造とディメンションを持つ先代「R」は抜群の走りの良さを見せつけてくれた。分厚いミッドレンジのトルクを生かしたガッツのあるエンジンを軽量コンパクトな車体に収めた先代「R」の俊敏でマッシブな走りにすっかり魅了されたことを覚えている。目の前にあるのは、その新型モデルである。
前回の街乗りでもヒラヒラ感は十分に感じられたが、峠道に入ると車体の軽さはさらに引き立ってくる。燃費向上のおかげで燃料タンク容量が2リッター分減ったこと、「R」はカーボンパーツの採用でバネ下重量を低減していること、そして試乗車には純正オプションのARROW製サイレンサー(STDより1.5kg減)が装備されていたことも効いている。一瞬、675ccエンジンのストリートトリプル? と錯覚したぐらいだ。
加えて、エンジンも先代より進化し、5psパワーが上乗せされている。車体の切れ味を演出する要素として大きく影響するのは車重とトルクだ。特に常用域でのトルクが厚く、ピックアップがいいと車体が機敏に動いてくれるのでハンドリングも俊敏になる。新型では3気筒独特の豊かな中間トルクはそのままに、そのデリバリーが「ライド・バイ・ワイヤ」によって細やかに調整されているため、スロットルを開けていったときの車体の姿勢変化が安定している。先代のドーンと背中をど突かれるようなワイルドな加速感もそれはそれで好きだったが、新型はよりパワフルであるにも関わらずジェントルで扱いやすく、結果的に心穏やかにスポーティな走りが楽しめる。
オーリンズ製の前後サスペンションはしなやかな動きの中にもコシがあって、新型「R」の強力なトルクをしっかり受け止めてくれる。路面のギャップやウネリに対しても、無駄な動きがないので常に姿勢が安定していて、なおかつ車体重心を高い位置にキープしてくれるので倒し込みのキッカケを作りやすい。ひと口に言うと、走りがシャキッとしているのだ。ディアブロ・スーパーコルサSPの強力なグリップ性能とも相まって、その気になれば相当なレベルの走りができるはずだ。その辺りのフィーリングはネイキッドというよりも、むしろスーパースポーツに近い。
ブレーキも同じで、「R」に装備されたブレンボ製のレーシングタイプはかっちりした精度の高さが伝わってくるタッチ感で、レバーを握り込んでいったときのストローク量も豊富なため、コーナー進入での減速コントロールが抜群にしやすい。もちろん制動力も強力で、操作は指一本で十分なぐらいだ。