新型ボンネビルT100 長期インプレ vol.01【普段使い編】
- 掲載日/2016年11月14日
- 車両協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文/西野 鉄兵(『アウトライダー』編集部)
伝統を崩さず、現代の装備で帰ってきたT100
トライアンフは2016年、キャッチコピー「REBORN」を掲げ、革新的なモデルを立て続けに発表している。その第1弾がクラシックシリーズの水冷化を含むリニューアルだった。
まず2016年1月にストリートツインやボンネビルT120などがニューモデルとして登場した。ところが、そこにボンネビルT100の名はなかった。2005年式同車のオーナーである筆者は「ああ、T100は空冷で終わっちゃうんだな」と少し寂しく思っていた。
しかし、2016年10月に満を持して新型ボンネビルT100が発表、そしてほとんど同時に発売が開始されたのだ。2002年から2015年まで続いていた同車の歴史の新たな幕開けとなった。
発表後はじめに驚いたのは、車両価格だった。115万500円~118万9,380円(税込)。なんと装備・性能をアップして、価格は先代より15万円ほど安くなったのだ。
おおまかな変更点は、水冷化を図り、排気量は865ccから900ccにアップ、ABSはもちろん、トラクションコントロール、電子制御スロットル(ライド・バイ・ワイヤ)、トルクアシスト・クラッチなどハイテク装備を搭載したことだ。
次に嬉しかったのは、中身は変わっても伝統のスタイリングは見事に継承されていたこと。水冷化によってラジエーターこそ備わったが、シンプルでクラシカル、オートバイらしいフォルムは変わっていない。トライアンフはスポーツモデルから、クルーザー、ツアラー、アドベンチャーまで多彩な車両をラインナップしているが、やはり多くの人がイメージするトライアンフは、こういったスタイリングではないだろうか。
進化したボンネビルT100、その乗り味は?
さて、この長期インプレは全6回を予定している。今回は普段使い編ということで、さっそく通勤や都内の移動に使ってみた。感想を一言でいうと、快適性と安全性が格段に向上している、ということ。走るのも、曲がるのも、止まるのも、不安がなく仕上がっている。
発進は素早く、都内の細かい道もクイックネスに走る。エンジンは「水冷SOHC並列2気筒 8バルブ270度クランク900cc」。先に発売しているストリートツインと同じエンジンで、同じフレームに載っている。
ストリートツインはまるでスポーツモデルのような俊敏さで、街中ではヒヤリとすることもあった。ボンネビルT100は15kgほど重くなったことと、サスペンション、ホイールなどが異なることで、だいぶ穏やかな印象だ。それでも先代の空冷モデルと比べれば断然素早い。それは出力設定の大きな変更が関係している。最高出力は55PS(40.5 kW)@5,900rpm、最高トルクは80Nm@3,230rpmで発揮する。発進後すぐに最大トルクに到達するような、低回転域から中回転域にピークパワーを持ってきたセッティングなのだ。
ABSは前後標準搭載されている。筆者が所有する2005年式の先代モデルで怖さを感じるのはブレーキだ。ABSは搭載されておらず、いまのバイクに比べると効きもだいぶ悪い。後輪をロックさせてしまうこともときどきある。それが新型では払拭されていて、よく止まる。必要以上に車間を開けなくても止まれるので、混んでいる街中の走行がラクになった。車両自体が軽くなったも影響していると思う。
ちなみにタイヤはフロント18インチ・リア17インチ。先代よりもフロントが1インチ小さくなった。
キビキビした走りには、クラッチの進化も大きく貢献している。トルクアシスト・クラッチが採用され、クラッチ操作に力がほとんど要らなくなった。そのため、指2本がけで瞬時にギアチェンジができる。通勤など街中の走行でもありがたいし、長距離をツーリングする際にも助かるはず。
それとともに電子制御システム「ライド・バイ・ワイヤ」も備わり右手の操作もリニアになった。抜群のレスポンスと、開度に応じたスムーズさ。この新しいアクセルとクラッチの楽しさを知ってしまうと古いモデルはもっさりと感じる。操ることの喜びを増幅させた機構だ。
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