【EICMAレポート】 トライアンフブースをピックアップ
- 掲載日/2016年11月28日
- 取材・写真・文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『KRS』)
強化されたクラシックシリーズ
いずれも走りの基本、きっちり
卓越のハンドリングと奥深いテイストを誇りとしている英国トライアンフはアドベンチャー、ロードスター、クルーザーの3気筒系とクラシックの2気筒系を基軸とするが、2016年ミラノショーではバーチカルツインの強力な2機種の投入が目玉になった。もうすぐ日本でもダイレクトに見て触れることができる「ボンネビル ボバー」と「ストリート スクランブラー」だ。クラシックテイストとスクランブラーテイストは世界的なトレンドであると同時に、この2機種はまさにそのルーツというべき英国の本家からの発信だけに強い関心が寄せられるというもの。
「荒々しい美」を表現するボバーの構成は、大きな握りこぶしでボディブローを繰り返すような270度位相のクランクによる強大なトルクを特徴とするT120系のバーチカルツインエンジンをベースに、バーエンドミラーをセットしたフラットなバーハンドルとシート位置が変更できるサドル型シート。さらにカンチレバー式モノショックのリアサスを組み合わせた。まさにボバーならではの、他のどれにも似ていないスタイルを創出した。
もともとは1940年代に流行したスタイルを原点とするが、外観だけではなく操縦性やサウンドまで多くの経験を積んだライダーを唸らせるテイストに仕上げたという。エンジンはボバー専用設定として低中速域のドライバビリティとライブなサウンドを奏でつつ、6速のトランスミッションをフルに使いながら、前輪19インチ、後輪16インチの構成であっても、スタンダードのボンネビルに勝るとも劣らないハンドリングを狙った。事実、かつてのボンネビルやクルーザーモデルでさえも、ひとつとしてハンドリングで裏切られたことがなく、ブレーキも欲しいときに欲しいだけのストッピングパワーを安心して引き出せる作りであった。まさにボバーも信頼に足る「走る・曲がる・止まる」の3つを高度にまとめ上げた、いかにもトライアンフらしい仕上げとなっているようだ。
ダートも楽しめるクラシック
さてもうひとつの目玉はストリート スクランブラー。トライアンフの公式のPVでは、本当にそんなことができるの? というぐらいにこれで激しくダートを走りまくっているシーンが楽しめるが、もともと旧スクランブラーでもダートでのポテンシャルは高かった。270度位相のクランクでトラクタブルな走りを証明していたが、今回のフルチェンジによる軽量コンパクト化した車体とストリートツインと同じ900ccエンジンの採用によって、走りの次元は旧型をはるかに凌駕しているようだ。
実際に跨がってみると車体がコンパクトになり、足着き性がグッと向上しただけではなく、旧型ではネックだったエキパイの取回しが改善されて、通常のニーグリップが可能となった。アップされた2本のマフラーが奏でる新しいサウンドに期待したい。
切替式ABSとトラクションコントロールによってオンロードもオフロードも自在に走りが楽しめるようだ。ちなみにホイールは前輪19、後輪17インチの構成。タイヤの選択肢もこれなら豊富で安心。クラシック系の雰囲気だが、ウエアはレトロ系でもオフ系でも大丈夫。ちょっとしたダートなら入っていけるからツーリング先のダートへちょっと、という冒険もできる。走りのフィールドをもっともワイドに広げるなら、まさにストリート スクランブラーかもしれない。