新型ボンネビルT100 長期インプレ vol.06(最終回)【T100とT120の比較/純正アパレル編】
- 掲載日/2017年03月01日
- 車両協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文/西野 鉄兵(『アウトライダー』編集部) 写真/西野 鉄兵、柴田 雅人
「T100」と「T120」は見た目はそっくりだけど、乗り味は全然ちがう!
写真を並べてみるとそっくりなボンネビルT100とボンネビルT120。だけど実際に乗り比べてみたら、単なる排気量の違いではなく、まるで異なる車種だということが分かった。主要スペックとともに、フィーリングを解説していこう。
BONNEVILLE T100 | BONNEVILLE T120 | |
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メーカー希望小売価格 | ジェットブラック:115万500円 ツートンカラー:118万9,380円 | ジェットブラック:145万円 シンダーレッド:147万2,000円 ツートンカラー:148万8,880円 |
ハンドルを含む横幅 | 715 mm | 785 mm |
全高(ミラーを含まない) | 1,100mm | 1,125mm |
シート高 | 790 mm | 785 mm |
ホイールベース | 1,450mm | 1,445mm |
キャスターアングル | 25.5度 | |
トレール | 104 mm | 105.2 mm |
車両重量 | 213 kg | 224 kg |
燃料タンク容量 | 14.5 L | |
エンジンタイプ | 水冷SOHC並列2気筒 8バルブ270°クランク | |
ボア/ストローク | 84.6 mm / 80 mm | 97.6 mm / 80 mm |
圧縮 | 10.55:1 | 10.0:1 |
最高出力 | 40.5 kW (55 PS) @ 5,900rpm | 59 kW (80 PS) @ 6,550rpm |
最大トルク | 80 Nm @ 3,230 rpm | 105 Nm @ 3,100rpm |
トランスミッション | 5速 | 6速 |
フレーム | チューブラースチール製ツインクレードル | 鋼管製クレードル |
スイングアーム | チューブラースチール製両持ち式 | 鋼管製両持ちタイプ |
フロントホイール | 32本スポーク、 スチールリム18 x 2.75インチ | |
リアホイール | 32本スポーク、 スチールリム17 x 4.25インチ | |
フロントタイヤ | 100/90-18 | |
リアタイヤ | 150/70 R17 | |
フロントサスペンション | 41 mm径カートリッジフォーク、 トラベル量120 mm | |
リアサスペンション | ツインショック、プリロード調整機能、 リアホイールトラベル量120 mm | |
フロントブレーキ | 310 mm径シングルディスク 2ピストンフローティングキャリパー、ABS付 | 310mm径ツインディスク 2ピストンフローティングキャリパー、ABS付 |
リアブレーキ | 255 mm径シングルディスク、 2ピストンフローティングキャリパー、ABS付 |
しばらくT100に乗り続けていて、初めてT120に跨ったら、その瞬間大きな印象の違いを覚えた。T100に比べて、大柄だと思ったのだ。しかし全長とホイールベースはさほど変わらず、シート高はT120の方が若干ながら低い。大柄に思えた理由は全幅、つまりハンドルの形状だ。T120の方が7cm長いため、腕を開くようなポジションとなる。脇をしめてコンパクトに乗るT100と、どっしり構えて乗るT120という違いが分かる。
走り出すと、フィーリングはまるで異なるものだった。排気量はT120の方が300cc大きく、リッター越えの余裕がにじみ出る。スロットルの開閉を繰り返してキビキビ走るのが楽しいT100に対し、ジワーっと開けてもグイッと押し出す力が強いT120という印象だ。2台を比較して例えれば、T100はスポーツマシン寄りで、T120はクルーザー寄りともいえる。
ちなみに空冷時代のボンネビルT100のフィーリングと比較すると、どちらかといえばT120の方が近いものに感じた。ゆっくり走っていても心地いい鼓動感はT120が継承している。新型T100は、どこか「もっとアクセルを開けて攻めようぜ」とせっついてくるかのような鼓動感だ。
勘違いしてほしくないのは、このフィーリングの違いは人により好みが分かれるということ。小回りが利いて街中でキビキビと、峠でよりスポーティに攻めたい人はT100、海岸線や高速道路を流すような走りが好きな人にはT120の方が心地いい、と感じると思う。
ミッションは、T100が5速で、T120が6速となる。これには「T100は5速しかないから高速走行が心配」と思うかもしれないが、水冷化された新型は、3速で時速100kmを出すのも無理がなく、筆者は常時4速でも充分で、5速は多用しなかった。空冷時代は時速90kmくらいからトップの5速に頼らないと厳しかったのだが、モデルチェンジで見事に高速域の巡航走行が快適になったのだ。
T100とT120は、出力のセッティングも異なる。T100でさえ低めの回転数で最大トルクを発生するのだが、T120はより低い回転数から強大なトルクを発揮。後ろから強力な力で押されているかのような発進と加速を体感できる。
また、大きな違いはT120には出力設定を変えるライディングモードが備わっているということ。通常の「ロード」と、ウエットな路面で安心できる出力が抑え目の「レイン」。2パターンを状況に応じ、変更できる。トラクションコントロールは両車とも備わっている。
ホイールやタイヤサイズ、サスペンションは共通となる。フロントブレーキは異なり、T120はダブルディスクを採用している。そのため制動能力は高い。ただ、T100のブレーキに不満を覚えたことはなかった。車重や最高速を考慮したとき、念のためにと、ダブルディスクを採用したのではないかと筆者は思っている。
T100に比べ、T120はおよそ30万円の価格差がある。それは排気量の違いとブレーキの違い、ライディングモードの有無、そしてユーティリティが充実していることだ。T120にはグリップヒーターが標準搭載されている。これは頻繁にツーリングする人には嬉しい。メーカー純正のため、グリップが太くなることもなく、握りやすい。ちなみにT100にもオプションで同じものを装着することができる。
T120にはヘッドライトの中にLEDのポジションランプが採用されている。ウインカーやテールランプの形状も微妙にデザインが異なる。
シートはシンプルなT100に対し、T120はリア部分にタックロール風のステッチが入っている。ちなみに使うときだけ出せるシート裏の荷掛けループはT120にも備わっていた。
T120にはグラブレールとタンデムグリップが標準装備。これは、リアシートに荷物を積む際にも非常に役立つ。また、リア周りのデザインがよりクラシカルになるということで、空冷時代のボンネビルT100でも人気の純正カスタムパーツだった。
以上が筆者が特に気になったT100とT120の違いだった。悩んでいる人は全国の正規販売店で実車を見比べて、試乗を行なうのが一番だ。それぞれ車体カラーがいろいろあり、写真では伝えられない実車が醸す佇まいやオーラもある。そして乗ってみたときに、前述した異なるフィーリングを体感して、自分の好みが分かるからだ。
最後に付け加えておきたいのは、T100は決してT120の廉価版ではないということ。「T100」は、空冷時代のフラッグシップとしてトライアンフの象徴でもあった。新型も細部までこだわりが詰り、このブランドネームを大切にしている英国人たちの気持ちが伝わってくるのだ。
オプションパーツと純正ウエアで、世界観により浸れるブランド
ボンネビルT100は発売と同時に140種以上の純正カスタムパーツを揃えたことでも話題となった。トラディショナルでオーソドックスなスタイリングだから、オーナーの思うところへ向け自在にカスタマイズできる。それを安心できる純正パーツでも構成できるというのは嬉しい。
カスタムパーツはトライアンフの公式ウェブサイトで見ることができる。「コンフィギュレーター」を使い、実際に車両に装着した際のイメージビューが見られるというのが面白い。車両と車体色を選択し、付けてみたいアクセサリーを選んでいくとカスタムされた車両の画像が出来上がる。
このサイトが優れているのは、各パーツの価格と装着のための作業時間が表示されること。だからディーラーで取り付けてもらうときの費用までイメージすることができるのだ。
上の写真はコンフィギュレーターを使ってツーリング・カスタムを施してみた一例だ。クリア・ロングホールスクリーン(税込17,388円)、フライスクリーン取り付けキット(税込7,452円)、ナイロンパニアケース(税込50,112円)、ヒ-トグリップキット(税込43,200円)、V&Hサイレンサー クロームメッキカスタム(税込149,796円)、以上の5アイテムをウェブサイト上で装着した。
パーツ代の合計は税込306,828円で、車両も合わせると税込1,457,328円となった。これだけ付けてもボンネビルT120のツートンカラーよりは安いので、T100を購入してカスタムを差額分楽しむという手もありでしょう。
特にお買い得と思ったのが、ナイロンパニアケース。両側セットで取り付けに必要な金具も一式で税込50,112円。ナイロン生地には防水加工が施されている。片側の容量は15L。レインスーツや着替えを入れるのに役立つサイズだ。
遠くへ行きたい、と思えばスクリーンもあった方がいい。ボンネビルT100はエンジンなど性能が高まっても、スタイリングは変わらずトラディショナル。ノーマル状態では風をまともに受けながら走ることになるのだ。クリア・ロングホールスクリーンは、高さ249mmでさほど大きくはないが、これだけでも整風効果はかなり期待できる。
ちなみに、このカスタムをイメージするのに役立つ「コンフィギュレーター」は、ボンネビルT100以外にも現行ラインナップの車両で楽しむことができる。
■トライアンフ コンフィギュレーター http://www.triumphmotorcycles.jp/bikes/configure
ボンネビルT100に惚れた方は、新型の優れた性能もあれど、やっぱり伝統的なスタイリングに魅了される人が多いと思う。2005年式のボンネビルT100を以前購入した筆者もそのひとりだ。ずっと憧れ続け、やっと手が届き、購入した際に考えたことは、どんな格好で乗ったらいいのだろう、ということだった。
トライアンフは純正アパレルが充実しているのが嬉しい。しかもいわゆるバイク用ウエアとしてプロテクションを重視したものだけでなく、安全面を考慮したカジュアルテイストのウエアも目立つ。
たとえば上の写真で筆者が着用しているレザージャケットも純正アパレルのアイテムだ。
「レザー・バブアージャケット」(税込96,984円)は、スコットランドで生まれた「バブアー」とトライアンフのコラボ初となる革ジャン。バブアーといえば、150年以上の歴史を持ち、第一次・第二次大戦中には軍にミリタリーウエアを卸し、後に英国王室にも愛用される、カントリーブランドのひとつだ。
そんな老舗の確かな作りに、バイク用として欲しいプロテクションやベンチレーションなどの機能を詰め込んでいる。各所のプロテクションはCE認定のD3O製で高い安全性を誇る。
これから暖かくなってくることを見据えたら、こんなジャケットもおすすめ。「ROWLAND ジャケット」(税込38,340円)。メッシュ素材とコーデュラナイロンを組み合わせ、レザーのアクセントを加えた上質感のあるサマーシーズン向けの一着。やはりこちらにも肩・肘・背中にCE認定のD3O製プロテクターが内蔵されている。
こちらも今季注目の一着。「RAVEN ジャケット」(税込73,980円)。ビンテージ風に加工されたレザージャケットで襟の内側に「TRIUMPH」のロゴがさりげなく入っている。パッと見ではバイク用と思えないから、普段からジーンズやチノパンと合わせて着られるのも魅力だ。もちろん取り外しできるCE認定のD3O製は内蔵されている。
グローブなど小物類も充実。今季新たに登場する「FLAG グローブ」(税込14,904円)は、ユニオンジャックを大胆にあしらったフルレザー製。いまどきらしく、人差し指の腹には通電性素材を使っていて、スマホやナビを操作することもできる。
渋いモノクロ基調のカラーも同じ価格でリリース(MONO FLAG グローブ)。「神は細部に宿る」なんて言葉があるけれど、オシャレは靴や財布などの小物で分かるもの。ライダーにとってはグローブもそのひとつ。こんなイケてるグローブと、トライアンフの車両があれば、それだけでツーリングに出たくなるでしょ?
ちなみにより安全性を考慮したスポーティなアイテムも多数ラインナップしている。「ジャーニー グローブ」(税込19,980円)は、プロテクション性能が高く、レザーとファブリックを組み合わせ、防水透湿性能も持つ。純正カスタムパーツで車両をさまざまな方向に振れる、と書いたがそれは純正アパレルも同じだ。スポーティに乗りたい人も、カジュアルに乗りたい人にも、トライアンフは対応してくれる。
トライアンフには、スティーブ・マックイーンのイメージがあったり、近年ではデイビッド・ベッカムがアンバサダーを務めたりと、昔から現在まで、ファッションの聖地ロンドンがあるイギリスらしさを貫いてきた。ぜひトライアンフに乗る際は、バイクそのものを楽しむだけでなく、モーターサイクル・ライフとして、バイクを中心にファッションや生活を含めすべてを楽しんで欲しいと思うのだ。